富野由悠季全仕事(キネマ旬報社)1999年6月9日発行


富野:「僕自身、Vガンでガンダムを打ち止めにしないと
サンライズやバンダイとかの馬鹿を育てるばかりの業態に
なってしまうから、いくら何でもそれはいけないだろうと思って
ガンダムはここで潰すという事で、タイヤが付いた戦艦(アドラステア)
を出す事までOKした。そこまでやれば、いくら何でも皆呆れかえって
逃げてくれるだろうと思った。ガンダムは捨ててくれるだろうと思った。
だから、ああいう作り方をしたんです。それが僕のVガンダムです。」

キネマ旬報社:「マリア主義ですとかシュラク隊とか、女性が戦って
いるというのも潰そうという意図から?」

富野:「もちろんそうです。ですから全部、かなり無責任に局所的な
面白がり方でやった。だからシュラク隊のメンバーというのは
一見パーッと勢揃いして皆が喜んだけれども、、『ほら、皆次々に
殺されて、あっという間にいなくなったぞ』と。ここまで酷い作り方をしたら、
いくら何でも怒鳴る奴が出て来ると思ったんですよ。でも2クールの終わり頃に
来年もガンダムをやるという声が聞こえてきた。もう手に負えないと思いましたね。
だから『次のガンダムどうしようか?』という相談を受けたので、『本気なのか?』
と聞いたら、『本気だ。今の売り上げも悪くない』と、こう来たものね。
売上だけだという所にまで遂に来た。 【〜中略〜】 ビジネスフィールドの中で
クリエイターが作品を提供していくというのは、どういう事かというのを極度に
端的に表しているわけだから、これはこれで資料として皆さん承知しておいて
頂きたいと思います。」