523 :名無しか・・・何もかも皆懐かしい:03/12/26 00:57 ID:???
病室に入ると、驚いたことにファブリは意識を取り戻していた。
頭に包帯を巻いたままの痛々しい姿ではあったが、
タルエルとテオドールに囲まれてベッドの上に上半身を起こして彼らと話をしていた。
「ファブリさん!気がついたんですか!?」
驚きと喜びの入り混じった声をかけながら、ペリーヌはベッドの側へ駆け寄った。
「やあ、ペリーヌ。この通りさ。なんだか心配をかけたようだね」
ファブリは思いのほか元気そうにそう答えると、今度は逆に少し表情を曇らせて彼女の様子を伺うように尋ねた。
「それより君の方こそどうなんだい?僕の事故現場で倒れたって聞いたけど」
「あ、いえ、私は・・・」
思わぬ質問の答えに戸惑って、ペリーヌは言葉を続けることができなかった。
事故の現場に駆けつけておきながら何もできなかった自分の不甲斐なさが恥ずかしくて、彼女は自分の顔が赤くなるのを感じた。
「いやぁ、私も最初は驚きましたよ」
ペリーヌの困った様子を見ていたタルエルが二人の会話に割って入った。
「ポールに事故のことを知らされて現場に駆け付けてみたら、ファブリ君だけでなくお嬢様までが倒れていらっしゃったんですからね。
わたしゃもう心臓が止まるかと思いましたよ。
しかしまあ、今まで災害現場ではケガ人の手当てを誰よりも手早くなさってきたしっかり者のお嬢様が
気を失うなんて、よほどのショックをお受けになったんでしょうなぁ」
タルエルはそう言うと、意味ありげな視線をペリーヌに向けた。
彼女は小さくなってただ黙ってうつむいているしかなかった。

タルエルとテオドールの二人が病室を去った後、ペリーヌはファブリにケガの具合を詳しく聞いた。
医師の診断では、頭のケガの他に両足に骨折があるため、およそ1ヶ月は入院しなければならないとのことだった。
「入院中はできるだけ私がここへ来てお世話しますから、心配しないでくださいね、ファブリさん」
ファブリを励ますつもりでペリーヌが言ったちょうどその時、病室のドアが開いて両手に紙袋を抱えた人影が入って来た。
「ねえ、着替え持ってきたわよ」
ロザリーはペリーヌの存在に気付くと、ファブリと彼女を無言のまま交互に見つめた。