【ナンデホタル】火垂るの墓 4墓目【スグシンデシマウン?】
引き続き語りましょう。
このスレッドに於けるルールは、
・フィクション作品というものを理解し、 フィクションとは現実の物事とは
全く異なる関係のないものと考えること
・フィクション作品を事実の事柄だと思い込まないこと
・言い争いや罵り合いに関しては、仲裁をする場合には、
中立、平等な立場で行い、必ず争っている双方共に同時に批判をして説得をすること。
一方だけを論って批判して片手落ちな批判は、仲裁を隠れ蓑にした
争っているどちらか一方に加担する荒らし行為なので
荒らし行為と認定して禁止
このルールに同意しない方は、 入スレ禁止と致します。 竹熊:宮崎さんと仕事をしたのは、『ナウシカ』の時だけなんですか?
庵野:ええ、一緒に仕事をしたのは、『ナウシカ』です。それ以降、プライヴェートでは会ってますけど、
仕事として誘われたのは、『となりのトトロ』ぐらいです。
『トトロ』の時、僕は失業してたんで、なんか仕事ないかって言って。
それで『トトロ』のオープニングと、高畑さんの『火垂るの墓』のメカシーンと、
どちらをやるかってことになって。僕は『火垂る』を選んだんです。
竹熊:ああ『火垂る』と『トトロ』は同時上映の二本立て進行でしたものね。
庵野:高畑さんと仕事をするのはこれが最初で最後かもしれないと。
やっぱり一生に一度は高畑さんと仕事をしようと思って。
それで高畑さんに紹介してもらったら、ちょうど観艦式のシーンがあいてたんですよ。
「船はどうですか」「船は大好きです」「じゃあお願いします」と。
竹熊:あの闇の中に満艦全飾の軍艦がバーッと登場するシーンですね。
庵野:ええ。あそこと花火のシーン。あとは飛行機のカットをちょっとぐらい。
でも一〇年早かったです。高畑アニメは全然難しかったですね。
一ヵ月くらいプレッシャーだけで、とても描けなかった。
宮さんはもっと気楽にできたんですけど、高畑さんは厳しかったですね。
正座してやんなきゃいかんなと。まず船の資料を集めるところからです。
昔の資料を集めて、どこまで描けるか。そういう意味では、ラッタルの数まで合わせたんですけれども、
できあがったフィルムを見たら、なんと真っ黒(笑)。 竹熊:船のディティールまでちゃんと描いた訳ですね。
庵野:ラッタルとか。手すりの数まで合わせたんです。可能な限り時代考証に合わせようと。
苦労したのにな、チクショウ。その艦のハーモニィ処理はシンちゃんの嫁さんがやったんですけど。
竹熊:あの樋口真嗣さんの奥さんが塗りつぶした(笑)。
庵野:本人は美術監督の山本さんの指示で仕方なくやったと言ってますけど、
満艦飾にライトがついて真っ黒はないですよね(笑)。
竹熊:せっかくの苦労がってやつですよね。
竹熊:高畑さんとは、会話とかは。
庵野:若干。そんなに立ち入ったことは。
大泉:宮崎さんのほうがフレンドリーなんですね。そういう意味では。
庵野:ああもう全然。いや高畑さんも、いつもニコニコしてて、世間話とかするんですけどね。
でもあの笑いの奥にあるものは、本当に怖い。高畑さん、極悪人ですね。僕が知る限り、一番だと思いますよ。
竹熊:ケツの毛まで抜くような感じですか。アニメーターの。
庵野:いや、もっと戦略的なとこですね。人を人と思わない。冷たいというか、計算の人ですよね。
竹熊:高畑さんの作品って完璧でしょう。いつもすごいなって思って見るんだけどさ、でも、冷たさが出てるよね。
庵野:冷たいですよ。突き放したところで作ってますね。作品というのを。あれがいいですね。 竹熊:すごいけど、面白くないよね。高畑さんのは(笑)。
大泉:面白くない。見てショックは受けるんだけど、よくここまでと思うんだけど、
次を見る気がおきないっていう、そういう感じですよね。
竹熊:ただ、『火垂るの墓』は、今でも気になりますね。異様な映画でしょう。
庵野:あれは高畑さんの冷たさが、面白さになってる。
皆が忘れたがってる部分をわざわざフタを開けて見せてるようなところもいいですね。
竹熊:何が悲しくて、こんな悲惨な映画をって(笑)。実は俺、『トトロ』を二〇回見てるんですよ。劇場に通って。
大泉:なぜ、そんなに(笑)。
竹熊:というのは、子供の反応が面白くて。途中からもう映画は見てなくて、会場の子供の方を見てたの。
でも同時に『火垂る』も見なきゃなんないと思うと(笑)。
大泉:見ないで逃げてくりゃあいいじゃないですか。
竹熊:『火垂る』の時はしようがないから、始まったらロビーで本読んでた(笑)。
映画終わるとさ、ものすごい顔して親子連れが出てくんの。
子供は恐怖で顔が引きつってるし、ロビーで泣き崩れて動けなくなった母親も見た。
あれは臨死体験映画ですよ。今から考えるととんでもないですよ。あの『火垂る』と『トトロ』の二本立ては。
庵野:辛いですよね。アニメを見て辛いと感じるところはすごいですよね。
だって絵なんですよ。絵を見て、なんでこんなに辛い思いをしなきゃなんないんだろうと思わせる。
それが高畑さんのすごいとこですが。いわゆる善人と呼ばれる人は、演出には向かないと思うんですよ。
人を騙してなんぼの商売ですからね、監督とか演出って。
僕の知る限り、面白いフィルムを作ってる人はすべからく悪人ですね、こりゃもう例外なく(笑)。