ドイツでは、ヒトラーとナチスがいかにしてドイツ国民の心を掴んだかという説明をあちこちの博物館で目にしたが、改めて強い印象を受けたのは、
当時の写真に写る「ナチス従属者たち」の晴れ晴れとした笑顔と充実した表情。権威への服従という道を選び、権威と一体化して自分の価値も高まったと感じる。  

権威への服従という道を選び、権威と一体化して自分の価値も高まったと感じる人々にとって、従属する権威が絶対化すればするほど、自分の価値も高まると感じる。
それゆえ、権威に傷をつけるような言動をする人間は許せない。自発的に懲罰し、社会から排除する。特定の敵への攻撃が権威として成立する。

権威への服従を思考と行動の土台に埋め込んだ人々は、集団の中で権威化された価値判断基準に疑問を抱かない。ただ権威に従う形で、その価値観に沿う行動をとる。
なぜあれほどの非人道的行為を為し得たかは、当時の人々が共有した「権威の力」を無視しては説明できない。人は簡単に、権威の奴隷になる。