男50歳以上が最も反応!? 〜西島秀俊×内野聖陽「きのう何食べた?」

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金曜の深夜に密かな人気を保ってきた「きのう何食べた?」。
実は最も楽しみにしてきたのは、女性でも若い男性でもなく、50〜64歳の男性だったようだ。
長年歩んできたのとは異なる人生、センスと手際のよい調理など、
自らの生き方をちょっと見直すきっかけとなるのか、多くの中高年男性が熱い視線をドラマに送っていたようだ。

■高視聴率となった第9話
前の週のお休みで"シロさんロス"となり、二週間ぶりの放送を待ちわびた視聴者は少なくなかっただろう。
第9話は世帯視聴率も、男女年層別の個人事視聴率も、全体の中で最高となったケースが目立った。
西島秀俊×内野聖陽のW主演で、ゲイのカップルの日常をホッコリと描く同ドラマ。
ストーリー展開は、人間ドラマながら、ドラマの中で主人公のシロさん(西島秀俊)が、
さりげなく紹介する料理レシピと作り方のシーンも楽しみの一つだ。
第5話でケンジが初めて料理するシーンが登場した。
そこで披露した味噌(みそ)ラーメンは大反響を呼び、再現してみた視聴者も多かったはずだ。
筆者ももちろん、試してみたが抜群のうまさで、すでに3回はリピートしている逸品。
優しさに包まれたストーリーがベース。
そして優れものが、シロさんとケンジ(内野聖陽)が暮らすマンションのインテリア、
ケンジが働く美容室の内装、家具や色調、さらに小物に至るまで細部にこだわった演出など。
見ているだけで楽しく、見心地バツグンの作品なのである。
週に一度、たったの40分で終わってしまうのが惜しいくらいだ。
■"人と異なる"ということ
日本でもLGBTがじわじわと認定され始め、ゲイやレズであること、
またはバイであることなどを隠さなくても生きられる社会になりつつある。
それでもヨーロッパやタイなどに比べて、まだまだ理解度は低いのが現実だ。
自分がLGBTでない立場の中には、仕事場や友人関係、
家族や親戚にトランスジェンダーの人がいても、理解を得られるケースもある。
ただし世代や育った環境などそれぞれの価値観があるように、彼らの受け入れ方もさまざまな差があるだろう。
宗教・考え方・生き方に人それぞれの個性としての違いがあるように、
たくさんの人が共存していくには、個々の差異を怖がらずに認め合って
生きていかなければ、誰かが心の犠牲を払うことになってしまう。
ドラマの中で西島秀俊が演じる筧史朗"シロさん"は、自分がゲイであることを職場や社会的な立場では、公表しないスタイルを保っている。
スマートな容姿とは裏腹に、地味で堅実でありながら、料理が上手で、
パートナーの存在を大切にしているが、自分のジェンダーを隠すことに罪悪感を抱き、葛藤しながら生きている。
いっぽう内野聖陽が演じる矢吹賢二は、明るく人懐っこく、気が利いて、
感情表現もリアクションもストレートで明け透け。シロさんとはまったく正反対のタイプだ。
自分がゲイであることを包み隠すこともしない。
この凸凹な二人が、全く違うスタイルでお互いを思いやり、時々波風が立つ日常を見せてくれる同ドラマ。
実は多少の違いはあれ、たくさんのことを考える機会を与えてくれている。
例えば、男女で夫婦でいることの意味。結婚や離婚、子供を持つこと、持たないこと。
家族やパートナーがいても、結局は人間は一人であること、孤独であること等々だ。
投げかけられるメッセージは、決して不快なものでも苦痛でもない。
当たり前に思っていたかけがえのない日常に「ありがとう」と言いたくなるような、優しい道しるべなのだ。
簡単に壊してしまえる関係だからこそ、続けていく努力と気遣いが必要で、
なれ合いにならない新鮮さと日々、美しく暮らすことの一つのライフスタイルを教えてくれる。
今シーズン、まもなく幕を閉じることになっても、
シリーズ化していつでも戻ってきてくれることを今から願わずにいられない。