2018年09月05日07:00
『トトロ』は24時間テレビ用のアニメだった・2 「アニメ業界には底がない」
http://blog.livedoor.jp/okada_toshio/archives/51550293.html

 この翌年に製作された『海底超特急マリンエクスプレス』は、『バンダーブック』よりも、
さらにスケジュールが悪かったと言われています。

 というか、“歴代最悪”というふうに噂されているんですけど。これについてはハッキリしたことはわかりません。
 なぜかというと、毎回毎回、あまりにツラいので、スタッフがほとんど辞めちゃうからなんです。
「誰一人として、このアニメスペシャルに最後まで付き合った人がいないから、歴代最悪がどの作品なのかはわからない」
と言われてるんですよ(笑)。

 どれくらい歴代最悪のスケジュールだったかというと、噂では……と言いながら、
僕は、この時に制作をやっていた人から直に聞いたことがあるんですけど。
「手塚先生は、『マリンエクスプレス』のオンエア中に、そのラストシーンのコンテを描いていた」って言われているんですよね。

 そんなもん、間に合うはずがないんですよ、絶対に。それくらいスケジュールが遅れに遅れたんです。

 そして、『バンダーブック』の時のような“失踪”はなかったんですけど、
デスクや制作担当やアニメーターがバタバタと過労で倒れて行ったそうです。

 しかし、そんな中でも、手塚先生だけは倒れないんですよ! 一番ハードに働いているくせに!(笑)
 変な言い方ですけど、手塚先生が倒れてくれれば何とかなったんですけども、
みんながバタバタ倒れて行く中、誰よりも働いて、おまけに連載漫画も描いていたというのに、手塚治虫だけは倒れなかったんですね。
・・・
 手塚先生は、もう意地になってしまって、自分でコンテを描くのを絶対にやめようとしないんです。
 もう、手塚先生が諦めて、コンテをもっと手の早い人、例えば、その時はガンダムをやっていたから無理だったでしょうけど、
富野由悠季とか、そういう“職人”といわれるようなコンテマンに回せば、なんとか予定通りに間に合ったかもしれなかったんですよ。
 だけど、手塚先生が意地になって抱えちゃってるから、どうしようもない。

 その結果、どうしたのかというと。
 手塚先生が1時間半くらいの仮眠を取っている間に制作進行達が集まって、「これ、どうしよう?」と。
 コンテはまだ上がってないけども、脚本はある。その脚本を読んだら、次がどんなシーンになるのかが、だいたいわかる。
そこで、「もう、こうなったら、コンテが上る前に、我々の方で撮影を済ませてしまおう!」というふうな話になったそうなんです。