>>979
 その後、1950年代のTVの時代になったら、“アメリカの建国神話を作る”ということで、
TVシリーズとして西部の時代の『デイビー・クロケット』というお話を作ったり、
『メリー・ポピンズ』で“人間ドラマとアニメの融合”というのをやってきたんですけども。

 「絵が動いて演技をする」中で、“ミッキーマウス”というキャラクターが生まれて、
映画俳優以上に有名なキャラクターになれたわけですね。

 さらに、「アニメでも長編ストーリーができる」とわかった。

 こういった流れから考えたら、このオーディオ・アニマトロニクスを使ってウォルト・ディズニーは
何をやりたかったのかというと、これは僕の考えなんですけども、1回乗るのに1時間以上かかる、
“長編のオーディオ・アニマトロニクス・アトラクション”をやりたかったんだと思うんですよ。

 カリブの海賊とかホーンテッドマンションという、今、僕らが見ているものは、
名場面のみを集めた5分間のダイジェストなんですよ。
いわば、短編の『蒸気船ウィリー』みたいなものなんですよね。

 おそらく、ウォルトが次世代のディズニーランドのアトラクションとして考えていたのは、
アトラクション1つでディズニーランド1つ分くらいのサイズが必要になる、
1周回るのに60分以上かかるアトラクションじゃないかな、と。

 アニマトロニクスには難しいアクションシーンとかはさすがに無理だろうから、
そこは実写で撮影してアトラクション内のスクリーンに上映して見せるとしても、
基本のドラマとか演技は全てアニマトロニクスでやって、臨場感というのを見せたかったんではないのかな、と。

 絵を生きているように見せるディズニーだからこそ、人形とかロボットを生きているように
見せたかったんじゃないのかなというのが、この流れで大体考えたら、僕が思うことです。
・・・
 「アニメというのは“セルアニメ”だけじゃなくて、こんなやり方もできるんだ」
ということを証明し続けてきたディズニーだからこそ、
「今のロボットは、ぎこちない反復運動をしているだけに見えるんだけど、実はやり方によっては生きてるように見えるんだよ」
ということを、何よりも感じていて、表現したかったんだというふうに思います。

 そう考えると、ウォルト・ディズニーの実質的な遺作と言える、
死んでからやっと完成した『メリー・ポピンズ』っていう映画があるんですけども。
この映画、改めて見てみると、実にオーディオ・アニマトロニクスを使ったアトラクション向けに作られてるんですね。

 基本のドラマは全て、家のセットの中で行われているし、メリー・ポピンズが飛び立つところも
「上から釣り上げて、斜め上に滑るように飛ぶ」というふうになっている。
あとは、メリー・ポピンズが使う魔法も、全て現実の舞台上で再現可能なものばかりやってるんですよ。
DVDを持っている人はちょっと確認してみてください。