>>978
 繰り返して言いますが、これ、1964年なんですよ?(笑)
 いや、64年は公開した年だから、正確には63年に作られたものなんですけども。あり得ないですよね。

 ゼネラル・エレクトリックは、後にこれと同じ仕組みで“ハーディマン“という、原子力発電所のような場所で、
力のいる作業をするためのロボットとして研究していたんですけども。メチャクチャゴツくて、ブサイクで、扱いにくいんですよね。
 ディズニーのやつの方が、スマートで、はるかに実用的なんです。

 意外なことに、ウォルト・ディズニー社というのは、1950年代から60年代の真ん中くらいにかけて、
単なる映画会社ではなくて、実は世界最先端の技術を持った会社だったんですね。

 例えば『海底20,000マイル』という映画用に、水中カメラと、撮影もできる潜水服というのを専用に開発してますし。
ディズニーランドで一番最初に走ったモノレールというのは、いわゆる鉄道メーカーに注文して作られたものではなく、
ディズニーの中にある“機械部”という映画のセットを作る部門が作ったものに、客を乗せて走らせてるんですよね(笑)。

 「欲しいものが現実にないから、モノレールまで作っちゃった」というのが、
ウォルト・ディズニーの恐ろしいところなんですけども。

そんなふうに、実は世界最先端の技術を持っていたんです。
・・・
 おそらく、ウォルトが考えていたのは、こういったオーディオ・アニマトロニクスといわれるロボット技術をもっと進化させて、
歌わせたり、場合によっては踊らせたり歩かせたりすることなんですよ。

 なので、カルーセル・オブ・プログレスの後に、カリブの海賊を作ったのもわかるんです。
そして、ここから、その先に何を考えていたのかも推測できると思います。

 ウォルト・ディズニーが一番最初にやったのは“絵を動かす”ことなんですよ。
 つまり、「止まっている絵を動かして、生きているように見せる」ということ。
これは、うさぎのオズワルドとかミッキーマウスでやったことですね。

 次に、“絵と音楽の融合”。「絵が動いている中に音が入り、音楽も入る」というものですね。
『蒸気船ウィリー』というアニメを作って、絵と音楽が融合すればもっと面白いということを証明しました。

 そして、“アニメと実写の融合”。TVシリーズの『アリス』というのを、初期のモノクロの作品の時点ですでにやっているんです。

 さらには“長編ストーリー映画をアニメでも作れる”ということを証明しました。
これは『眠れる森の美女』として、第2次大戦の前に成功しています。

 他にも、“カラーにしてセリフをなくす”ことを目指した『ファンタジア』とか、
“徹底的なリアリズムで動物アニメを作る”という『バンビ』とか、いろんな実験を繰り返してるんです。