>>887
 さらには、「この強制徴募は合法である」という法律まであった。

 その結果、とりあえず、港町にいる元気そうなヤツで、なおかつ15歳から55歳の間だったら、
ほとんど連れて行かれてしまって、終いには港町をうろつく若者がいなくなってしまった。

 この法律は、散々「改正しろ!」と言われたんだけど、イギリスの裁判所は
「イギリスにとって必要な海軍力を維持する方法はこれしかない」という理由で、
絶対にこの法律を引っ込めなかったんだって。

これに怒った港町から、何度も裁判を起こされたんだけども、
裁判書の判断はいつも「強制徴募に関しては合法である」という判断だった。

 まあ、そんなことを続ける内に、段々、港街から男がいなくなっちゃった。
 そこで、強制徴募を下請けにしているギャングたちは、次に、飲み屋やホテルを買収した。
 どうするのかというと、ガタイのいい兄ちゃんが飲み屋に来て、うっかり「船に乗ったことあるよ」と口走ったら、
その酒場のオッサンが、100%「俺もだよ! いやあ、お前は友達だ!」と言って、酒をおごってくれるんだって(笑)。

 この酒を飲んだが最後、クラクラときて、ばったり倒れて、気がつくとグルグル巻きに縛られる。
で、同じようにグルグル巻きに縛られた連中と一緒に、酒場の2階から上にある安ホテルに放り込まれてる。

 次の日の朝になると、さっきのギャング団が馬車に乗ってやってきて、そいつらを荷物みたいに運んで、
そのまま海軍船にまで乗せて、その場で忠誠の宣誓をさせられる。

 そこからは、10年とも20年とも、いつ終わるかわからない海軍の暮らしが始まる。
その上、終わる時は、いきなり現地でリストラされる。……すごいよね、本当に。

 ヨーロッパの歴史の中で、「市民革命が〜」とか、「権利が〜」とか、「選挙権が〜」とかってあるじゃん。
それは当たり前なんだよ。昔からこんなことやってたんだから。まったく人間扱いしてないんだよね(笑)。