>>837
 ところが、この数年は迷走が続いていました。
 というのも、「新たなシリーズものを立ち上げたい」と思うんだけど、同時に
「映画の表現として革命を起すようなものを作りたい」という思いがあるからなんですね。

 もっとぶっちゃけて、具体的に言っちゃえば「ジェームズ・キャメロンに負け通しだから、勝ちたい!」という思いがあるんだと思います。
 やっぱり、キャメロンの方が、打数に比してホームラン数が多いですから。スピルバーグって、なんか、
やたらと自分から「はい! 代打、スピルバーグ出ます!」って出てくるんだけど、空振りも多いというような監督なんですよ。
・・・
 そういう目線で見るに、この『レディ・プレイヤー1』という作品は、実は、スピルバーグにとって、
ここから先の2020年代全てを食いつなぐシリーズモノとして作ったんだと思うんです。
 そのために、すごい準備をした上で臨んだ作品なんですね。

 『ジュラシック・パーク』というのは、「コンピュータグラフィックの力で、もういない生物とか、
地球ではもう見られない光景を見せる」ということが目的だったんですけども。
『レディ・プレイヤー1』では、スピルバーグに言わせれば「恐竜よりもすごい世界を見つけた!」と。
 かつて子供たちは学校の先生が言うことよりも恐竜図鑑に夢中になった。しかし、今や子供たちは、
俺の映画よりも、ゲームやアニメに夢中になっている。このままでは、
俺の映画というのは、本とかラジオと同じように、“廃れたメディア”になってしまう!
 きっと、スピルバーグにはそういった恐怖心があったんですよ。
・・・
 これはネタバレにはならないと思うんですけど、この映画のクライマックスとして、最後の大戦闘のシーンがあるんですけども。
 世界中のみんなが、悪役のゲーム会社“IOI”と戦うために、路上にいる人達が
みんなヴァーチャルグラスをつけて「オーッ!」て戦っているシーンがあるんですよ。
 あれって、まんま『ポケモンGO』なんですよ。
 わずか1年か2年くらい前に、僕らがすごいビックリして感動した風景。
世界中の人らが、みんな路上に出てゲームをやってる。それも、空中に向かってやってる。

「これ、なんかスゴい! 何かが起こるんじゃないか? 変わるんじゃないか!?」というふうに、
僕らは新しい世界が来たと思ってたんですけども。
 でも、言われてみれば、この光景は、スピルバーグにとっては恐怖そのものなんですよね。
だって、そんなことをされてしまったら、もう誰も自分の映画を見てくれなくなるんだから(笑)。
 スピルバーグにしてみれば、『ポケモンGO』というのは敵なんだけども、
同時に、「あれを味方につけないと、俺達には未来がない」って思っちゃうんですよ。
・・・
 じゃあ、なぜ岡田斗司夫にとって、『レディ・プレイヤー1』の点が低いのか?
 この辺の文句は、後半の有料放送で、ネタバレ帽子を被ってから言うことにします。
 ちょっと、そこら辺にはね、かなり言いたいことが溜まってるんで(笑)。
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この記事は『岡田斗司夫ニコ生ゼミ』4月29日(#228)から一部抜粋してお届けしました。