>>239
 例えば“チンパンジー“っていますよね。
 チンパンジーって、人類と祖先を同じくしている種族なんですけど。
あいつら、動物園で見ていると、一日中ダラダラしてるじゃないですか。
あれを見て、僕らはついつい「動物園という環境に閉じ込められているから、ダラダラするしかないんだ」
って思っちゃうんですけど、違うんですよね。あいつらは、マジで、森の中にいても一日中ダラダラしてるんですよ。

 なぜかというと、チンパンジーというのは“生の食材”を食べるからなんですよ。
 例えば生のドングリとか。あとは、チンパンジーはどうだったか忘れちゃったんですけども、
サルの中でも種属によっては、肉を食べるヤツもいるんです。だけど、そいつらも生の肉とかを食べるんですよ。

 そして、生の食材を消化するためには、1日5時間、ずっと噛んでなきゃいけないんです。
さらに、飲み込んだものを消化するために、腸がすごく長くなるんですね。

 ところが、食材に火を通せば、食事の時間というのは極端に短くなります。
 小麦とか、米とか、ジャガイモ、あとはトウモロコシ、そういうサピエンスの主食となる穀類も、
生のままではメチャクチャ消化しにくいんですけど、火で調理すれば、簡単に消化できるようになるんですね。

 おまけに、火で調理すると、食材に入っている寄生虫とか病原菌も退治できるわけですね。
 火というのは、すごく便利なものなんですね。
・・・
 調理した食材を食べるとどうなるかというと、消化が早いんですよ。なので、腸が短くなってきます。
 さっきも言ったように、火を使っている人類種というのは、ホモ・サピエンスに限らず、
どんどん大腸の長さが短くなっていくんですね。

 すると、どんなことが起きるか?
 実は、火を使うようになる以前のホモ・サピエンスを含めた全ての人類は、
エネルギーの基礎消費がメチャクチャ大きかったんですよ。
 まず巨大な大脳。この脳を維持するために、エネルギーをものすごく消費します。
そして、その次に、食物を消化するための腸が、ものすごくエネルギーを食ってたんです。

 つまり、脳と大腸という2つの臓器が、ものすごくカロリーを消費しちゃってたところから、
腸が短くなったことによって、人類の行動範囲というのは、すごく広がっちゃったんですよね。

 これを極端に説明すると。
 まず、火を使う前の人類というのは、毎日だいたい5時間くらい獲物を探していた。
次に、それを咀嚼するために5時間掛けていた。さっき話したチンパンジーと同じですね。
そして、それを消化するために、さらに5時間、ダラダラしてなきゃいけなかったんですよ。