2018年03月19日07:00
『カリオストロの城』前史<1> TV版『ルパン三世』の徹底改造
http://blog.livedoor.jp/okada_toshio/archives/51546045.html

  そこで、藤岡さんが目をつけたのが宮崎駿と高畑勲だったんです。
 ちょうどその頃、『長くつ下のピッピ』の原作者からNOが出ていたこともあって、
東京ムービーというのはまさに倒産寸前の状態にあったんです。

 「準備に3年間も掛けた『ルパン三世』が視聴率6%になってしまった上に、
長編としてやるはずだった『長くつ下のピッピ』は原作者のNOが出た。
どうすればいいかわからないが、とりあえず、今ある駒でなんとかするしかない!」
ということで、手の空いてしまった高畑・宮崎を、無理矢理『ルパン三世』第1シリーズのテコ入れとして投入します。

 たぶん、視聴率を稼ぐためのテコ入れとしては、歴史上、最も向いていない2人だと思うんですけども(笑)。
その結果、まあ、2人とも真面目だから、仕事をするわけですね。
・・・
 宮崎駿は、そこで『ルパン三世』というのを徹底的に改造しようとします。
 どうするのかというと、ルパン三世の設定を
「金持ちで退屈しているから遊びとして盗みをやっている退廃したフランス貴族の末裔」
から、
「常にスカンピンで、何か自分の渇きを満たしてくれるような面白いことはないかと目をギョロつかせている、イタリア系の貧乏人」
に入れ替えちゃったんです。

 この時の設定変更としてわかりやすいのが、ルパンの愛車なんですよ。
(パネルを見せる)
 これは第1シリーズでルパンが乗っていた“ベンツSSK”という自動車なんですけども。

この車はメチャクチャ高価なんですよ。なぜかというと、確か、世界で30台くらいしか作られていないからなんですね。
おまけに、ルパン三世が乗っているSSKは、フェラーリの12気筒エンジンを積んでいるので、
エンジンの価格を含めたら15億円くらいする自動車なんです。

 「ルパンがこんな車に乗ってるはずがない! ルパン三世が貴族であるならば、
こういう贅沢を今まで散々やってきたはずで、もう飽きているんです!
そんなルパンが乗っている車は“動けばいい”というような車なんですよ! 例えば、あのポンコツみたいに!」
と言って、宮崎駿が窓の外に駐車してあった車を指差したところ、それを聞いていた大塚康生さんが
「宮崎さん、あれは俺の車だよ……」と。それが、大塚さんの愛車のフィアット500だったそうです(笑)。

 そんなやり取りがあって、結局、ルパンの愛車はフィアットになったんです。
 ちなみに、このフィアットは、『ルパン三世』の第1シリーズの16話「宝石横取り作戦」の最後で、
不二子が乗ってきたこの車をルパンがそのまま乗って逃げるということがあって以降、ルパンの愛車ということになるんですよ。

 つまり、フィアットというのは、『カリオストロの城』から使われたわけではなく、
1971年に宮崎駿がテコ入れした時から、ルパンの愛車はこれだと言うことになっていたんですね。