■ライバルに不出馬を直談判
 さらにこの翌月、モスクワに飛び、チトフ氏に直談判。副会長選でトップ当選
できるよう協力することを条件に、会長選立候補を断念させた。
 「チトフ氏と戦うのは戦車に竹やりで挑むようなものだった。でも、これで
当選確率は90%以上になった」

 68歳のジョルジュ・グルゼク氏との一騎打ちになると、国際オリンピック
委員会(IOC)委員の70歳定年制を挙げ、高齢では体操界の発展に
つながらないと主張。さらに、選挙前夜も手を緩めなかった。東京ディズニー
シー内であったホテルでのFIGレセプションパーティーでは、一般的な
立食形式はとらず、約400人の席次を3日間かけて考え抜き、一人一人
指定した。グルゼク氏と支持者を固めて孤立させ、ロビー活動を阻止。
パーティー後はグルゼク氏のグループをバス1台に押し込み、先に帰らせた。

選挙戦では加盟国・地域の7割を超える102カ国・地域を訪問。ITを使った
採点補助システムの導入、発展途上国への指導者の派遣や器具の寄付
などを公約に掲げた。リオ五輪での体操ニッポンの躍進も追い風に。
ふたを開ければ渡辺氏100票、グルゼク氏19票で、ほぼ読み通りの圧勝だった。

リオ五輪実施の国際競技団体では、唯一の日本人会長となる。しかも、陸上、
水泳などと並ぶ、夏季五輪の花形競技だ。「日本人は礼儀正しく、まじめで
勤勉というイメージがあり、信頼されている。その日本人が戦略を持って戦え
ば、トップもとれる」。こともなげに言った。
http://www.asahi.com/articles/DA3S12616221.html