「必ずやるから、他の仕事を入れるな」

ザハ案での迷走もあって、入札過程は秘匿が貫かれ、公式には、どのグループが公募締め切りに応じ、どんな過程を経ているかはオープンにされなかった。

プランが明らかになったのは、12月14日からであり、メディアが「どちらの案がいいと思うか」と、アンケートを実施するなど国民的関心事となった。

その選考を委ねられたのは、村上周三・東京大学名誉教授を委員長とする審査委員会。7人の委員が9項目を評価。一人当たりの持ち点は140点で980点満点だった。

A案とB案が8点差だったのは前述の通りだが、気になるのは19日の審査が、一発で行われたわけではないこと。

22日の記者会見の席上、村上委員長は、「これ、言ってもいいのかわからないけど」と、前振りして次のように述べた。

「仮採点をして、なんとなく審査員みんなの相場観を確かめてから本採点をした」

相場観というのは、審査員の意識の統一を図るという意味だろうが、それを行う必要があったのか。

「採点に偏りが出ないための策」という説明を加えているメディアもあったが、
その「意思統一」は、「前向きに取り組み、事前準備が整っている」という大成グループに優位に働いただろう。

そう考えれば、「工期の短縮」で大成グループ案が27点差をつけ、これが竹中グループ案に勝利した理由であるのもわかる。

「大成が工事を取るのは間違いないと思ってました。大成の担当者から『必ずやるから他の仕事を入れないでくれ』と、言われてましたしね。
それは他の下請けも同じで、竹中JVより準備は万端というのが、業界の常識でした」(下請け企業の社長)

そうした目に見えない準備と意欲も、「大成優位」に働いたのかもしれない。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47075?page=2