井上治副校長が語る。「寮生活を経験した卒業生は、社会人になってから、
ラ・サールでは学力よりも寮生活で得たものが大きいとみんな言います。全国にも二つ
とない大部屋寮生活です。一般的にいまの子どもは親子関係が希薄で、人間関係も苦手
ですが、大部屋ではそんなことを言っていられません。大部屋になればなるほど、
不自由とストレスの塊です。だからいいのです。大部屋の寮生活は、時には生徒同士の
ぶつかりあいもあり、現場の教師も大変です。しかし、生徒の将来を考えると、集団生活の
経験を通して、将来最も必要な人間力、人間関係力が身につくわけです。ラ・サールの卒業生は
人間関係でへこたれることはないと思います」
寮生活で“同じ釜の飯を食った”同期生同士の結びつきは、卒業後も非常に強い。
「寮の違いは学校の違い以上に大きいのです。例えば、個室の寮と、80人部屋の寮では全然違います。
大部屋の寮生は仲間同士でもまれあいながら、共に喜びや苦しみを分かちあいます。だから、濃密な
人間関係が生まれ、親友ができます。同期の結束力もすごいのです。本校が一番誇れるのが寮生です。
卒業生は特別な寮生活を過ごした母校だからいまの自分があると思っているのではないでしょうか。
客観的に寮の違いを見る尺度のひとつとして寮生比率がありますが、本校では中学生の7割、高校生の
6割が寮生です。寮生の出身地の多様性も尺度のひとつですが、本校では、中学では半数以上が
関東、関西の出身者です。そしてこれら以上に重要なのは先にあげた生活形態です。一人部屋であれば、
学校側も楽ですが、人間関係も限定されてきます。大部屋では多くの人間と付き合わなければ
なりませんが、この経験が将来に生きてくるのです。また大部屋では、生徒も教師も寮で何が起きて
いるか良く見えるし、トラブルが起きた時も情報がよく入ってきます。寮生の大半は、嫌なことも多いが、
楽しいことの方が多いと感じているようです」
進学校として一流大学の合格実績も大切だが、もし卒業生の母校への愛着心を評価するランキングが
あれば、同校は間違いなく全国上位に食い込む。これは偏差値に反映されない大きな特色である。