大叔父さんは、本当に徳のある方だった。

幼少期の頃から、自分の近くにあるテレビ(受像機)がバグってしまって、電波ジャックされて地獄や異次元世界の放送を受像してしまうことがよくあって、
そういうとき、両親もいちおう、やめなさい消しなさいみたいなことや、もう寝なさいみたいなことを言ってくれなくはないのだが、
基本的に、無神経、風見鶏、馬耳東風、みたいな感じであんまり俺を守ってくれなくて役に立たなかった。

大叔父さん(この際だから言うけれど、大叔父さんの苗字は服部さんという)の家、服部さんの家に行ったときにも、
テレビの放送が不穏な不自然な不気味なものになったことがあったのだが、
夜、暗いトンネルを歩いていると影が足音がついてくる、何故か、みたいなクイズが放送されていて、
それは自分自身の影と反響した足音であった、みたいな禅問答のような奇妙な答案で締めくくられて、
最初は、やめなさい消しなさいと言っていた服部の叔父さんも、納得して、
なんだそういうことか、などと言って、
その一件以来、テレビが、不気味な不穏な放送を受像することがなくなった気がするんだよ。