ラスト

15年間、ずっと郡上の山間部で生きてきて、山怖系の怖い体験も、怖い話も全く聞いたことがなかったのに、こんなにも急に自分が体験するなんて、正直当時からオカルト好きだった私は恐怖よりもワクワク感が勝っていました。

「反応したらどうなるの?」と祖父に聞くと、「反応したらどんどんどんどん山の奥深くまで連れていかれる。山の中で姿が見えんのに「おーい」とか「もし」とか聞こえても、絶対反応したらいかん。

あいつらは一声しか話せないから、山の中で誰かに話しかける時は、二声(もしもし等)で話しかけんといかんよ。

とりあえず今日は終いや、罠は明日見に行く」
と言われました。
正直まだまだ聞きたいことは沢山あったのですが、あまり多くを語りたくなさそうに見えたのと、走ったせいで膝が痛いと騒ぎ出したので、諦めました。

それから月日が経って大人になり、帰省した際に現在91歳の祖父に改めてあの時の事を聞こうとしても、「絶対反応したらいかん」「それだけや」「とにかく危ないから」「これ以上は特に話すことない」と言われてしまいます。本当に特にエピソードはないのか、隠しているのか、未だに私は自分が唯一経験したオカルト的なこの体験の詳細が、気になって仕方ありません。