リチャード・マシスン「息子の質問」

私は町の電器屋、副業は電気椅子のボタン係。
祖父も父もボタン係で、一人前になった私にそれを引き継がせた。
妻と嫁いだ娘には教えていない。

誰かがやらなくてはいけない仕事なのだ、正義に奉仕する尊い使命だと私は自負している。
いつか息子にも引き継がせなくてはいけないがあいつは半ニート、気まぐれに店を手伝いたまに遊び歩くだけで、跡取りの自覚がない。

息子は生意気を言う。
「ギャラは出るんだろ?」
「正義とか奉仕とか、正直わかんないな」
「本当に高貴な使命だけなの?愉しみもあるんじゃないの?」

打ちひしがれた死刑囚。訓戒。頭に置かれる濡らしたスポンジ。拘束。目隠し。最後の祈り。正義の鉄槌。それを下すのはこの私。
…楽しいさ、楽しいに決まってるだろ!