高橋留美子『MAO』から、医者のエピソード。
明治時代、ある若き医者に美人の妻がいた。
しかし妻はその美貌ゆえに悪い男に襲われ、喉に致命傷を負わされてしまう。
医者が駆け付けた時には既に手遅れで、妻は絶命寸前だった。
するとそこへ謎の陰陽師が通りすがり、五行の「土の術」によって精製した「土薬」を喉の傷口に塗ることによって妻の命を救ってくれた。
さらに陰陽師は「定期的に塗りなさい」と言って土薬の入った壺を医者に渡すと、去って行った。
しかし、やがて土薬が尽きてしまう。
医者は試行錯誤を重ねながら土薬を自作し始めた。
ついでに周辺地域の怪我人たちにも無償で土薬を処方するという慈善活動を始め、貧しい人々から聖人扱いされて慕われるようになく。
しかし妻の容態は少しづつ悪化していき、さらに土薬を処方された患者たちが行方不明になり始める。
そしてある日、ついに公衆の面前で患者の全身が突如として「土くれ」と化して崩れ落ちる(死亡する)という事案が発生。
この話を耳にした正義の陰陽師である主人公は、事件の調査を開始する。
患者たちに処方されていた土薬は、本職の陰陽師である主人公からしてみれば劣悪な紛い物であり、それが原因で患者たちが土くれ化して命を落としていたのである。
続きます。