郊外の農村に住んでいた双方の両親の元を離れ、市内に住んでした(多分町名も聞いてたけれど、地元じゃないから忘れた)祖父母。

その日、自宅の台所にいた祖母は、皮膚ににちりちりとした痛みを感じたらしい。
(なんだろう?)
と思った次の瞬間、大音響と共に、地震のような振動で家具は倒れ、陶器は跳ね回った。

理由も判らず、土間に叩き付けられた祖母は、地震で家が崩れると思って、外に飛び出した。
祖母の目に飛び込んできたのは、真っ赤な光。火災なのか、ピカの光なのかは覚えていないと言った。

祖父の勤めていた工場の方角が燃えている事に気が付いた祖母は、おひつに水を汲んで消火の手伝いをしようと走った。
そして、駆ける事30分ほど(草履だったし、足が遅いので駆け足程度の速度)炎で進めなくなり、結局周りと一緒に逃げ惑ったと言う。

そのころ祖父は、工場の瓦礫の中に転がっていた。コンクリ囲まれた場所にいたので、上から降ってきた屋根の下敷きになったそうだ。
周りの救助も合って、やっと這い出た時には、真っ赤な地獄のような光景が目の前に広がっていた。

迫り来る炎と、まだ埋まっている同僚達。動ける者達だけで、火が工場を焼き始めるまで、助けて回ったが、大量の同僚が焼けて死んでいった。

その日、祖父母は会うことが出来なかった。逢えたのは次の次の日であった。