歌は穴くぐった左側くらいから聞こえてくる
しかももうかなり近い
怖いと気になるが半々くらいだった

ここの状況って、金網のこちら側は言ったように大人の背くらいの草が茂っているんだけど、穴の向こう側も同じくらいの高さの草が茂ってるんだよね
つまりくぐって向こう側行ったら見通し悪いからいきなり急斜面で高速道路に落ちちゃうとかもありえそうなんだわ
子供もいるし、くぐった先は高速道路の敷地だろうから何かしらの犯罪にもなりそうだし

でもやっぱり気になるから上半身だけで覗いてみることにした
子供には絶対こっちに近づかないように伝えたあとに犬を地面におろす
膝をついて左手でしっかり金網を掴んで、上半身だけ穴の中に乗り出てみた
幸い金網のすぐ向こうが斜面という感じではなく、少し余裕がありそうだった

そのまま地面に手をついている右手で歌が聞こえる方の草かき分けてみた
かき分けた少し先は開けた場所になっているらしく、草の隙間から3メートル四方くらいのスペースが見えたんだけど、そこにはこちらに人が背中を向けたしゃがんでいる人が居た
しゃがんだ姿勢で歌を歌っているんだと思う
すっごく汚れた灰色のコートもような丈が長い服を地面に引きずり、しゃがんで歌いながら何かもぞもぞと作業をしている
白髪まじりの肩下くらいの髪の毛がみえるけど、顔はわからない

それと、開けた地面の地面には何か茶色いものが敷き詰めてあった
目を凝らしてみるとドングリだ
よく見かける砲丸型のやつじゃなくて、全て丸いドングリに見えた