もともとこのアパートに住んでいたのは両親と中学生の息子の3人家族で、息子さんが学校へ行く途中で交通事故で亡くなり、ほどなくご両親も引っ越されたそうだ。
「出る」とわかっていても挨拶してしまうくらい、肩をたたいたら体温を感じそうなくらい自然な姿で「息子さんが帰って来てるよ」と教えてあげたいが、ご両親の行方は全くわからないという。
私が親友のところにご厄介になっている間、いつでも彼はいた。
親友は一度留年し、5年間あのアパートで暮らしたが無事に大学を卒業した。
たまに会ってお酒を飲むと「あの子どうしてるだろうね」という話題になる。
ちなみにそのアパートは素敵なマンションに建て替えられ、格安の部屋はもうない。