まとめ読んでたらふと思い出したので書く
ばあちゃんの話とオレの話

まずばあちゃんの話。というか正確にはばあちゃんの弟(大叔父)から聞いた話。
どうでもいいが、大叔父は戦後日本を代表するメーカーでエンジニアを勤め、マクスウェルの電磁方程式やらフーリエ変換やら、数式にまみれた人生を送ってきたバリバリの理系人間だ。
ばあちゃん(現在92)は京都の丹波地方の山奥の出身だ。ばあちゃんの実家に行くためには今でも最寄り駅から山1つ越えねばならず、
その山道は、村の有力者であったというばあちゃんの父(オレからみれば曾祖父)が村人と切り開いたという細い道が一本あるきりで、
車の離合も不可能で、この時期、墓参りの際にもかなり苦労する。
この道、鉄道駅に出るために切り開いた当初から、狐狸の類いが出ると村人のもっぱら噂だったという。
ばあちゃんは戦後すぐ、京都市内で歯医者を開業しかていたじいちゃんに嫁いだ。

婚礼に出席したひいばあちゃんと大叔父は引き出物を持って丹波に帰った。着いたのはすでに夕刻だったそうだ。
歯医者で金持ちだったじいちゃんとの婚礼は盛大で、引き出物は大量で、ひいばあちゃんと大叔父はリアカーを借り、村まで運ぶことにした。
引き出物の中でも大叔父は、戦後の食糧難でめったに食べられなかった、ちらし寿司を楽しみにしていたらしい。

大叔父がリアカーを引き、山道が峠にさしかかるころ、「ゴトっ」という音とともにリアカーが少し重くなった。
大叔父はそろそろ峠だし疲れてきたのだろうと思い、暗くなって来たこともあり、早く帰り帰りたく思った大叔父はそのまま家路へと急いだ。

家に着くと、ちらし寿司が入っていたはずの重箱にはぎっしりと小石がつまっていたらしい。

大叔父が言うには「狐狸のしわざ」ということらしい。
民話ではありがちな話だが、ずっと理系畑で研究やら論文やらエビデンスやらに明け暮れた人生を送ってきた大叔父が大真面目に語るのでウソであるとも思えず、ここに記した次第。