「何やってんだ?蚊か?」叔父さんが戻ってきた。いやこの人が……って前を見ると誰も居ない。
あれ?逃げた?っとなって、でも俺もはっきり我にかえれず、いや何も……と誤魔化した。
「何だ?酔っぱらってんのか?線香の火は大丈夫か?」
さっき炉に刺さした線香はまだ2-3割ほど残ってる。良かった、渦巻きに火をつけながら
「うん、大丈夫。線香の火は絶やしてないよ。だって爺ちゃん成仏出来なくなるんでしょ?」と言うと
「お前、そうじゃないよ。線香の火を絶やすと故人が誰かをお供に連れて行くんだよ」
とぼそり……。

葬式の後、爺さんの形見分けじゃないが爺さんちでみんなで集まって精進落とししながら酒飲んでた。
で父ちゃんが爺ちゃんの古いアルバム引っ張り出してきて皆で見だした。
その中に爺さんが太平洋戦争で中国本土に従事してる時の写真が数枚あって、爺さんの所属した分隊らしい写真があったんだよ。
若い姿の爺さんと仲間らしい兵士6-7名が並んで。わー若いな〜爺さん親父そっくりなんて見てると、その中にあのおっさんを見つけた。
険しい顔で腕を組み、軍帽を目深にかぶっていたけど、えらの張った輪郭とぎょろ目は明らかにあのおっさんだった。
下に故・〇〇兵長とあった。
びっくりして手が震えた。騒動の一部始終を言うかと思ったが俺も大分酒が入ってたし叔父さんもそんな人見てない、
またおっさんの謎の行動は爺さんとの確執を感じさせて結局言い出すことは出来なかった。

と言う出来事なんだけど、今でもあれは夢だったのか、現実だったのか、もし現実なら兵長さんは何で線香の火を絶やしたかったのか、と考える時がある。