怖くないかも知れないけれど
俺が2〜3歳の頃、夜寝ているといつもすき間におばさんが現れてた。
壁に寄せ付けているベッドと壁の間に、真ん中分けした黒髪と鼻から上だけ覗かせて
ベッドの縁に両手をかける感じでまあまあの頻度で現れていた。
怖いという概念が無かったのか、怖くなかったのかわからなかったけど
俺は特段驚きもせず、自分の楽しかった話を聞かせたり、指の部分だけだけど、じゃんけんしたりして
一緒に遊ぶように過ごしては、いつの間にか眠りにつくみたいなことを繰り返していた。
でも、少しずつ物事の分別が付く年頃になってきて、この存在が異様なものなんでは…?みたいなことを漠然と感じるようになって
怖いと思うようになったんだ。
ある日、とうとうそのおばさんが現れたとき「もう来ないで!」ってお願いしてしまった。
暫時悲しそうに目線を落としたおばさんが、次の瞬間それまで隠れていた鼻からしたの大きな口をあらわにして俺の腕をつかんで引きずり込むようにひっぱってきた
俺は泣きわめきながらはなして!助けて!みたいなことを叫んで完全に発狂。
ようやく父さん母さんが突入してきて俺を抱きかかえて介抱したという。
案の定父も母もそんな存在を見ているはずもなく、俺もあれはこどもの感受性が見せた幻かと思うようになった。
このだいぶあと、俺が今の母親から生まれた子どもではないことと、実の母が死んでいることを知ることになるんだけど、
本当の母親の写真を見せてもらう機会があった。
予感はあったんだけどね。
そこに写っている女の人は、やっぱおれに似ていたよ。