これは昔、キャンプに参加したときに聞いた話。

話してくれた人の郷里は四方が山に囲まれていた。
日本海側にも太平洋側にも出るの2時間がかかるところで、電車や高速ができて随分便利になったそう。
昔、その人の祖父の父の代ぐらいまでは、非定住の出稼ぎの人が出入りしてたそうだ。
山の中に、そんな出稼ぎの人達や木地師、修行者等、病気持ちの旅人等が通る道があって、出稼ぎの人達はシーズンになるとやってきて山仕事を手伝い、
シーズンが終わると次の約束をして去って行く。彼等の郷里は誰も知らなかったそうだ。
妻子を連れている人もいて、村に滞在しているときは子供は村の学校に通っていた。彼等は遠くの珍しい物品を持っていて、村の人と物々交換したり金と変えたりしてたそうだ。
頼んでおけば、次回来るときには丈夫な器なども持って来てくれたらしい。
彼等は近隣で聴かない歌や踊りなども知っていて、宴会の時に披露していたという。
多分そうやって、いろんな地方を回っていた人達なんだろう。
戦争に前後して彼等の姿は見なくなったと言うから、どこかに定住したのかもしれない。

大人になってからふと、その人達は所謂、サンカだったんじゃ無いか思った。
話をしてくれた人は、ヨーロッパのジプシーみたいなものだ。と言っていた。
その人の家には、彼等に買ってきて貰った吸い物椀がまだあると言っていた。
厚めの木椀で、薄く漆がかけてあり、無骨だけど手になじむ良い器だと言っていた。
話をしてくれた人は、