石じじいの話です。

じじいは、ある人を想うための場所を持っている、と話したことがあります。
そこは、そのためだけのためにあるのだと
長い時は一日中、そこにいて、その人のことを想うのだ。
そうすると、生きていく希望が湧いてくる、と。
遠くはなれたところにある場所だが、決して夜をそこでは過ごさない。
一泊する場合でも、かならずそこから離れた場所に野営するのだそうです。
それがどこか、
どんな場所か、
想う相手は、どんな人なのか、
なぜ、想うのか、
じじいは説明してくれませんでした。
「おかあちゃんやったん?」
と尋ねましたが、「うんにゃ、違うんよ」とじじい。