石じじいの話です。

死んだ母親の顔を模した面を作った男性がいました。
彼は早くに母親を亡くしたのですが思慕の念が強く、母親の顔を模した焼き物の面を作りました。
わざわざ、唐津の、名のある陶工に作らせたそうです。
その面は、目を半眼に開いていて穏やかな表情でした。
色が白く美しいものだったそうです。実際、母親は美人だったのです。
ただ、右の額に薄く青い色のシミがありました。
彼の母親の顔にも、同じところに痣があったのです。
「何も、そこまで同じにしなくても」と周りの人は思ったそうです。
しかし、本人が言うには:
最初はそのような痣まで似せて作るという注文はしなかった。
しかし、面を焼いて炉から出して見たら偶然そうなっていた、と陶工から聞いた、と。
それがあまりにも母の痣と似ていたので、作り直しを頼むことなく、ありがたくもらってきたとのこと。
その面は、木箱にだいじに収められて、お盆に彼が取り出して施餓鬼棚にまつり愛おしそうに眺め拝んでいたそうです。
彼は結婚して子供ができましたが、生まれた長女にも、同じところに痣があったそうです。
その男性は、それを嘆くことなく、母親と同じだと、むしろ喜んでいるようだったと。
その後、面は、その男性が死んだ時に寺で供養されたそうです。
面自体が、その後どうなったのか(お焚き上げなどされたのか?)は、私のメモにはありません。
ただ、その痣のあった長女の娘(その男性の孫娘)にも、同じところに、ほんのりと薄い痣があったそうです。
この家系は絶えることなく、現在でも続いています。