石じじいの話です。

歳をとると認知症になることがあります。
それを介護する家族の人々の苦労はたいへんなものです。
アルツハイマー病などは高齢者に特有のものではなく若年性のものもあります。
若い人でも、事故などで脳障害を起こし脳血管性の痴呆になったりします。
その場合は肢体の不自由を伴うことが多いので、さらに困ったことに。

ある老人男性がおかしくなりました。
彼によると、家族が全員偽物だというのです。
どうしてそう思うのか?
石が教えてくれるのだと。(出ましたねw)
石を手の上に載せて差し出すとわかるのだそうです。
その石は、神社の境内で感応して拾ったのだと。
以前お話した「真実を教えてくれる石」に似ています。
そうしている中、ある日、その男性が「石が無くなった。眠っている間に盗られた。偽家族の仕業だ。」と言い始めました。
その後、数日して死んだそうです。
死因は、子供のじじいには教えてもらわなかったそうですが、「狂死」ということでしょう。
生前の男性が言うには、
家族はだんだん偽物に置き換わっていった。
最初に孫の女の子が、
それから父親(自分の息子)、連れ合い(おばあさん)、と別人に置き換わって、最後まで嫁が残っていたが、それも最近偽物に置き換わった、と。
それなので、その男性は孫娘を含めて、むしろ彼女に対しては特に、家族に厳しくあたっていました。
周りの人達は、「とうとうボケが始まった。家族の人たちも苦労する。ああはなりたくないものだ。」と思いました。
その最初に偽物になったという孫、女の子は、普段じじいがよく遊んでいる子供で、まったく変わりがありませんでした。
偽物と指弾されていた家族の人たちも変わらず、偽物とは思えなかったと。
(つづく)