その骨董商はセコいことで有名だった。
田舎でお宝を見つけると、その価値がわかっていない持ち主を口車に乗せて買い叩いては
江戸に持って帰ってきて、べらぼうな額でマニアに売りさばくということを生業にしていた。
ある日、その骨董商が田舎のある茶店でとんでもないお宝を発見する。
茶店で飼われていた猫の食事用の皿が、何と柿右衛門の逸品だったのだ。
これはマニアに高値で売れると考えた骨董商は
その皿が柿右衛門であることを知らないであろう店主をだまし
皿を巻き上げようと企んだ。
骨董商「おまえん所の猫が気に入ったから俺が引き取りたい。二両出すから譲ってくれないか」
店主「かわいがっている猫なんですがそこまでおっしゃるのならお譲りしましょう」
骨董商「それと、使い慣れた皿で猫に飯を食わせてやりたいからその皿も一緒に譲ってくれないか」
店主「申し訳ありませんがこれを二両ばかりの小銭で売るわけには参りません。
なにしろこれは初代柿右衛門の名品でございますから」
骨董商「なんだ知っていたのか。それならなぜそんな皿で猫に飯をやっていたんだ?」
店主「はい。こうしておりますと時々猫が二両で売れますので」