これは俺が21の頃、都内の某繁華街でホストをやっていた頃の話。

誰もが一度は聞いたことのあるような街だけど、見た目も、そして中身も汚ねえ街だった。
店の人間も、俺も、そして客も、見え透いた嘘の中にある欲望はただひとつ。
そう、金だ。

オーナーから店長に圧がかかり、店長から俺らに圧がかかる。
そして、最終的にしわ寄せがくるのはいつも女の子。

ホストに来る客っていうのは2種類いて、営業と分かっていて疑似恋愛を楽しむ客と、そうとは気付かず本気にしてしまう客だ。

ほとんどが後者だろう。
好みの顔から口説かれたら無理もないのかもしれない。
そして、遊びと割り切れない後者の子達は身体を売っていることが多い。
客が金にしか見えていないホストと、いつか一緒になれると思い、身体を売って尽くす女の子。
結果は火を見るよりも明らかで、悲しい結末を迎えることも少なくない。

事実、俺が勤めていた頃にも、耐えきれず自殺した客の話はそう珍しくなかった。

そんな色んな念が渦巻いている街の、暑い夏の日に起きた話。