次、二十代の半ば頃と思う。
同じく夜勤の最中、先輩が職場に入り、私は事務室で勉強とかをしていた。
事務室は全館空調が強めに回っているため、そのノイズが集中するのにちょうど良く好きだったが、ふと、その送風のノイズに混じって、なにかごにょごにょと聞こえるような気がした。
耳を済ましてもやはりノイズしか聞こえなかったため、気のせいだろう思って勉強に戻ったが、しばらくするとまた聞こえ出した。
ごにょごにょと、やはり人の声のようなものが、どこからか聞こえる気がする。でも弱すぎてわからないため聞こえないフリをしていた。
やがてその音はゆっくりと大きくなりつつあり、やっぱり人の声だと思った。どこから聞こえるのか、耳を澄ませて部屋のなかを歩いてみたところ、どうやら階段の中程にある館内放送用のスピーカーから漏れていることを突き止めた。
あー、なんだ、コレかと思った。うちらの職場あるあるで、館内放送をかけた後にマイクを切り忘れていること時々こうなるのだ。
そこで職場の先輩に電話をかけ、マイクがオンになってますよーと言ったところ、マイクはオンになってないし、そもそも俺は一人だし何にも話してねー。怖いこというと殺すぞと言われました。
でも、まだその声は聞こえます。
もう一度スピーカーのそばに戻り、何を話しているのか聞いてみたところ、イメージ的には戦時中のラジオ放送のような、誰かの演説のようなそういう雰囲気だった。
ボリュームはそこそこあるのだが、ノイズが多く何を言っているのかは不明だった。
あまりに怖くなったので職場に戻り、先輩と過ごした。