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記事内容

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日中戦争から太平洋戦争にかけ、本来徴兵を免除される知的障害者が多数、陸軍に入隊させられていたことが、清水寛・埼玉大名誉教授(障害児教育学)の調査で分かった。
戦地から本土の病院に送還された兵士のうち、少なくとも484人をカルテの分析で確認した。兵力不足が深刻になった戦争末期に近づくにつれ、徴兵されるケースが急増。
ほかに戦死者も多数いたとみられ、清水名誉教授はさらに多くの知的障害者が徴兵されたとみている。戦地で精神疾患を発症した例も多かったが、恩給や補償の対象外にされたことも判明した。【鵜塚健】

◇ 末期ほど増加、恩給も対象外…埼玉大名誉教授が調査「国は補償検討を」
 極限状態のなか、戦地では精神疾患を発症する兵士が多数発生。こうした兵士のほとんどは、国府台陸軍病院(現・国立精神・神経センター国府台病院、千葉県市川市)に収容され、1937〜45年度に1万人以上が入院した。
 清水名誉教授は、同病院が保存する8002人分のカルテ(病床日誌)を5年がかりで分析。このうち徴兵検査時に知的障害があったとみられる兵士が484人(6%)いたことが判明した。

 入院した時期で分けると、37年度は4人だったが、戦争末期の44年度には157人、45年度は81人となっていた。ほとんどが入隊後数カ月以内で病院に収容されており、終戦間際になるほど、より重度の障害者が増えていた。

 当時の兵役法では「疾病其ノ他身体又ハ精神ノ異常」がある人は「兵役ヲ免除ス」と規定している。清水名誉教授によると、当時の解釈だと知的障害者もこの規定による免除の対象となるが、戦争末期には兵士が不足し、徴兵が急増したとみられる。

 一方、戦地で身体的、精神的傷病を負った兵士には、恩給や療養費が支給される。しかし、知的障害の兵士の場合、大半が戦地で新たな精神疾患を発症するなどしていたにもかかわらず、もともと障害を抱えて入隊したとみなされ、恩給や補償の対象外とされた。

 清水名誉教授は「戦死した例も多数あるとみられ、把握できた知的障害者は一部だろう。法を無視して徴兵されたうえ、戦地で加わった疾患で、戦後も苦難を味わったはず。今からでも国が調査し、補償を検討すべきだ」と話している。【鵜塚健】

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