3年前英国旅行土産の傘(1万円もした)を電車に忘れて来てしまい、急いで係員に
申し出たら終点駅の忘れ物窓口へ行ってくださいと言われたので行ってみた。
窓口の人にその傘の特徴を明記するように言われ書いていると、清掃員の人が
この1時間以内に見つかった忘れ物の傘だと言って2本持って来てくれた。
両方とも英国製の上品な傘だったが自分の物ではなかった。落ち込んでいると、
窓口の男の人が、「どっちか1本持って行きなよ」と言った。僕は軽い冗談だと思い
半笑いしてたら、「何ヘラヘラしてんだよ、持ってけよ!」とタメ口された。
どちらも最低でも5万円は下らない傘だ。それを持って行けだと?『社会人として
そんな事しちゃダメでしょ』と僕は冷静に断った。すると、後ろの扉から2名の警官
が入って来て僕を指差し、“2本の傘を持ち去ったのが彼?”と窓口の男に訪ねたら
あろうことか!窓口の男は頷き、僕に傘2本を押しつけた。『ええ!何?これ何?』
と僕はパニックになり、突然の出来事に全く言葉が出て来なかった。警官はまあまあ
と言いながら僕の肩を掴み、後ろに素早く回り込んで僕のズボンの後ろを掴んで
僕の身動きを封じた。もう一人の警官は、僕を掴んでる警官に何か目配せして微笑
んだ。僕を掴んだ警官は別の部屋に強引に引っ張って行った。その部屋に入ると
警官はニヤニヤしながら僕にこう聞いてきた。“どっちか1本俺にくれるんだろ?”
何言ってるんだ?僕はこのシチュエーションは可笑し過ぎると思った。どっきりカメラ?
かと思った。しかし、僕の口から冷静な声が出て超ビビった。『どっちか1本持って行きなよ』
さっきの窓口の男のセリフそのままだった。警官は“ありがとう”と言いながら1本傘を
選んで持ち去って出て行った。しばらく僕の頭は真っ白だった。どういう事だろう?
僕も部屋から出て構内を歩いて駅のホームへ行き、電車に乗って座席に座って見上げると
なんと!僕の英国土産の傘が棚の上に置かれているのを見つけた。誰か親切な人が
棚に置いてくれたのだ。それから1年ほど上記の事件を全く思い出さなかった。