「七つの怖い扉」という短編集に収録されていた小説。

男は母と二人暮らしをしていた。
男は人を殺してしまい、死体を自宅の床下の古井戸の中に棄てた。
一晩たってから古井戸の中を覗いてみると、なんと死体が消えているではないか。
どうやら古井戸は海と繋がっているらしく、潮の満ち引きによって死体が押し流されて運ばれて行ったのだろう。
男はこれに味をしめ、その後も次々と殺人を繰り返し、死体を古井戸に棄て続けた。

男の母が病で倒れてろくに身動きがとれなくなってしまう。
母は「私を病死に見せかけて毒殺しろ」と言って、毒薬を買うお金を男に託した。
しかし男は金を遊びに使ってしまい、毒薬を買えなくなってしまう。
母は病状が悪化していき、やがて喋ることも出来なくなると、「何をしている? 早く私を毒殺しろ」とでも言うかのような鬼気迫る恐ろしい眼で男を睨むようになった。
耐えられなくなった男は、母を絞殺し、死体を古井戸に棄てた。
翌日に古井戸を覗いてみると、母の死体はまだそこに有った。
また次の日に見てみても、死体は有った。
何日経っても、死体は存在し続けた。
やがて腐敗臭が家中に漂い始め……