脳は音をどのように聞き分けているのか?

 私たちのまわりには音があふれている。そのため、ときには異なる音、例えば会話と音楽などが同時に耳に入ってくることもある。
私たちは、視覚が重なり合う物体を見分けるように、重なり合う音をたくみに聞き分ける能力をもっている。
 耳から入ってきた音の情報は電気信号に変換され、まずはじめに延髄にある「蝸牛神経核」という領域に送られる。
 次に「境」を経由して「中脳」へと送られる。
 境には2種類の神経核があり、ここでは両耳に届いた音の「時間の差」と「強さの差」が、音源の位置を特定するために利用される。
中脳の神経核は、境からの情報と蝸牛神経からの周波数の情報を集め、音源の位置と音の性質の処理が行われる。
 そして次に信号は、視床の内側膝状体を経て、大脳皮質の「一次聴覚野」へと伝えられる。
一次聴覚野には同じ周波数に反応するニューロンが順序よく配置されていて、皮質に対して縦方向に、同じ周波数に反応するニューロンが集まってコラム構造をつくっている。この領域を「周波数局在地図」と呼ばれている。 
音声送信が、お経のようではなく声色があるということは、周波数分けされる一次聴覚野前で信号を受信していると思われる、つまり大脳ではなくやはり、蝸牛か中脳か視床で受信していると思われる。
 このように、聴覚も視覚と同じように音を周波数などの特徴ごとに分けて、脳で情報処理を行っているのだ。
しかし、音のどのような成分(特徴)が脳のどこで処理されているのかについての詳しいことは視覚ほどは明らかにされていない。
カリフォルニア大学のマイケル・マツェニックとクリストファー・デジャームらの研究によると、周波数以外の音の重要な特徴には、「音のはじまりと終わりの存在」「特別な周波数の組み合わせ」「周波数の変化」があるという。
 私たちは、これらの音の持つ特徴を脳で分析してまとめ上げることで、音を識別し、その音が会話なのか音楽なのかを聞き分けているようだ。