知人と二人、夜のドライブをしていたその昔、突如知人の気が触れて、車を暴走し始めた。
ある坂を登った正面が階段で、曲がれば道路だったんだけど、車は曲がらず坂を跳び、階段上部に跳ね返り、車体はそのまま宙に躍った。
その時、時間がゆっくり流れ、じぶんはひとり窓枠を足場に、階段上の高架道路の、枠に片手でつかまって、何と車体を片手でブラ提げた。
しかし、いかんせん車体は重く、一瞬後にはリリースされた。
落ちて逝く車の、窓越しに、垣間見えた知人のとった、何故おまえだけが来ないとばかりの、恨めしい表情が忘れられない。
あれは一体、何だったんだろ。
半世紀が経った今でも、怖くてそこが通れない。