荒廃した未来の地球。
 軍人の主人公Aは同僚の男Bと女Cと共に反政府勢力の立てこもる廃鉱山を
襲撃した際に、見たこともない生き物を発見する。
 それは絶滅したはずの犬。
 その時代、犬に限らず野生の動物はほぼ絶滅し動物園にクローン再生された
動物がいるだけだった。
 科学技術関係の役所から是非持ち帰るように言われたので基地に連れ帰る。
 しかし政府の技師はその犬から血と細胞を採取しただけ、もうDNAは採取
したから犬そのものには用がない、元の場所に返すなり食べてしまうなり好き
にすればいいという。 
 Cは食べてしまおうといったが、Bは物語にある昔の人間みたいにペットを
飼うのは面白いかもと言い出しAも賛成、Bは技師に頼んで動物園で使われて
いる生きた動物用の餌と水を配達してもらう事にする。
 Aを始め現在生きている人間は、有機物が希少な世界で生きるため消化器内
に無機物を分解し有機物にする虫を飼って砂や土を食い、重金属が溶け込んだ
鉱水を飲む。
 しかし 犬には特注の有機物の餌と濾過された水が必要だった。
 Bはすぐに犬に興味をなくし、犬に餌と水を与えるのはAの役割に。
 次第に犬はAに心を許し、その手や顔を舐めるようになる。
 そんな彼らが休暇をもらい、犬も一緒に連れて行くが、少し目を放した隙に
犬は放置されていた対人用のトラップで重傷を負う。
 Bはもう面倒見切れないから犬を食べてしまおうと言い出しCも賛成。
 反対するAだが、Bに前に買った餌や水がもう残り少ない、飼い続けるなら
お前が新しく買い直せといわれる。
 Aには欲しいものがたくさんあった。

 そして犬は三人に食われた。
 Aは今食べている犬に舐められた時の妙に心温まる感触を思い出し、わずかな
金を惜しんで何か大切なものを失った気がした。