>>586
つづき
砂や泥の岩に化石を探しながら、山を登りきると小さなトンネルが口を開けていました。当時の軽自動車一台がぎりぎり通れるくらい。
短いので、向こう側の口が見えていました。
迷信など信じないじじいでしたが、麓のばあさんの冗談とは思えない真面目な顔を思い出してトンネルをくぐるのを躊躇したそうです。
「遠回りになるけんど脇に昔の道があるけん、そこを回りんさい」という言葉を思い出しましたが、脇の斜面をまっすぐ上がってトンネルをやりすごすことにしました。
斜面を登りきると尾根で樹木はなく草っ原で風が強かったそうです。
ちょうどトンネルの上でした。そこで、石積みのようなものが目にはいりました。それは、すごく古い墓だったそうです。
砂岩の墓石は風化して刻んである文字はほとんど消えてて、かすかに、「〜子」と読めたことから子供の墓だろうと。
水を供えるためのものか綺麗な花模様の唐津の椀が土に埋もれて残っていたそうです。
相変わらず強い風は吹いていました。
じじいは飴玉を一つおいて立ち去りました。
峠を下りてからの化石探しは豊作だったそうです。