じゃあ怖い話っていうほどでもないけどほんのり怖らい話をしようか

霊感のあるAさんは山を登っていた。登山が趣味だったが、山は霊に遭遇する確率が高い。
自分への修行と言うか霊に慣れる事も目的だった。
友人と登山道を歩いていると、少し先に登山者が見えた。
反対に向かって少し上の方、折り返すように歩いていたが、
その登山者の背後に霊が見えた。そこでAさんは驚いた。
驚いたのは霊が見えた事ではなく、その霊がとてもハッキリとしていたからだった。

Aさんは登山者がもっと前から見えていたものの、ただの同行者だと思っていた。
しかしよく見ると動きが明らかにおかしい。
登山者の背中にくっついたり離れたり、少し傾いて浮いている様子で、
人間ではないと気付いた。子供の霊のようだった。
Aさんは今までにないほど不安になった。登山者に何かあるかも..。
友人もAさんが霊感があることは知っているので一応話をしてみた。

しばらくして山の中腹にある休憩所に辿り着いた。
少し留まって辺りを見回すと、先ほどの登山者が見えた。
いたずらに不安を煽っていいのか、迷ってはいたものの、
友人の後押しもあって登山者が近くに来たところで伝えてみることにした。

Aさんが登山者に事実を伝えると、少し困惑しているようだった。
Aさん自ら話をしただけに責任を感じ、
お祓いなどができる知り合いを紹介しようとするが、登山者は言った。
あなたを本当に信用できるのかどうか分からない、と。当然のことだろう。
友人がフォローをしてくれたが、不信感を与えてしまった事には間違いない。
変な人間だな。相手はそう思うだろうとAさんは後悔し始めた。

そして登山者は呆れてしまった様子でAさんに言った。
「霊が着いてきている事は知っている。これは良い霊だ。
しかしあなたにも複数の霊が着いてきてるよ。見えてなかったのかい?」と。