令和20年。

晩御飯の準備をしていると、娘から電話が来た。
テレビの収録をしていて、ドッグスクールにクララを連れてきてとの事だった。

もうテレビは嫌なのに、、、


「姿形、一緒やん!」
「この光景、見たことあるぞ、20年前に」

ずっと子供だと思ってた娘がちょっと頼もしくなった気がする。
20年前のママは、私をこんな風に見てたのだろうか

「実はクララを呼んだと見せかけて、りこと話がしたかったんです」
「りこ、真ん中座りぃ」

もー、20年前と同じ手口じゃないですかー。


ソロコンサートの夢を叶えた後、
私は最愛の人と結婚し、芸能界を引退した。
そして地元に戻り、すぐに子供を授かった。
まさかその娘が、アイドルになるなんて思ってもみなかった。

「アイドルになりたいって言われた時、反対したん?」

んー、色々お話しをいっぱいしました。私が辛かったこととか、楽しかった事とかー。
それでやりたい?って聞いたらうんっていうから。

「りほはどうなん?親が元アイドルで困った事ないん?」
「それが、握手会にママのファンだった人が来てくれて、みんなー
『ママとそっくりー』って言いながら泣いてるんですよー。でも、すっごい笑顔でー」
「りこ、ファン泣かしてもうてるやん!」
「もっかいアイドルやったらええんや!まだイケるやろ!」

それがもう、ほんとに体力なくなっちゃって。

「いや、イケるって!俺ら60超えてんのに街ブラロケやってんねんで!」
「唯一のレギュラーやから、老体に鞭打ってやってるわ」

あの時と何も変わらない光景。
少し変わったのは、ゴールドさんがホワイトさんになってるくらい。

「りこ、最後に娘になんか言うことある?」

うーん。ちゃんと支配人さんの言う事聞いて、頑張ってね

「そうか、あいつももう20年支配人やってんのか」
「聞いたら、今でもめちゃくちゃ食うらしいぞ」
「あいつはほんま変わらんなぁ」

彼女だから、大切な娘を預けることが出来た。
頑固で強くて、誰よりもグループを愛してる。


「よし、最後、写真撮ろ。りこ、前行きぃ」
「揃ったな?はいじゃーせーの!にーがったフレーンド」

『ドッグスクールさん?また、20年後にお邪魔しますね?』