真夜中、白いシーツに抱かれて耳を塞ぐ。彼女は窓の外の赤いサイレンに怯えていた。
「怖い・・・」
僕は闇のなかで彼女の細い掌を手繰り寄せる。
舌っ足らずの声は空を彷徨って天井に反響した。
そのうち柔らかな細い腕が僕の背中に廻る。
しばらくして背後から小さな寝息が聞こえて、僕はようやく眠りにつく。

僕は3年間だけ青森の高校に通っていた。
彼女とは時々日常会話をする程度でとくにそれ以外関わりはない。けど、彼女がどうしたって、気になって一昨年の夏に品川のホテルであった、ささやかな同窓会に参加した。それがまた会うきっかけだった。
坊主頭でバカだったあいつも、明るいだけが取り柄の騒がしい彼女もそれなりに東京の社会の1つとして溶け込んでいて、奇妙な感覚に襲われる。僕はまったく名前をおぼえていないそいつらと上っ面の思い出話を済ませたあと、彼女の姿を探した。
そのとき、不意に頬をつつかれた。
彼女だった。
「久しぶり」
「同窓会とかくるタイプの人だったんだね。」
意外。というような顔のまま僕の顔をじっ、と見た。
「まあね。」
僕はなにを話そうか迷って辺りを見回した。