令和4年。カウントダウンライブ直前の控え室。
テレビに映る紅白歌合戦には、親友2人が映し出されている。
大河の主演女優に、レコ大歌手。

声優のレッスンに2年を費やした私は、2人よりもずっとスタートが遅れてしまった。
でも、新しい挑戦は、新しい仲間もくれた。来年こそは絶対にこの9人で紅白に出たい。伝説の先輩達の様に。


「どうも〜。こんばんわ、お邪魔します〜」
「長谷川!差し入れ持ってきたで!」

テレビと変わらないテンションの2人の顔を見て、少しだけ緊張が解けた。
声優番組のMCを務める2人は、私がデビューすると真っ先に番組に呼んでくれた。


どうして?まほもりこも皆んなNHKホールにいるからそっち行けば良かったのに。


「ちゃうねんて、俺らも唯一のレギュラーやから声優大切にしたいねん」
「確かに、小熊ちゃんがな、、心配やけどな」
「信じられる?あの小熊ちゃんがAKBの総監督って。絶対無理やと思うわ」
「ってか、長谷川。その衣装めちゃくちゃ似合ってるやん。バスガイドみたいやった頃より、全然アイドルらしいわ」

涙を堪える私に、2人はどんどんトークを浴びせてくる。

「まもなく時間ですので、準備お願いします」

「じゃあな、頑張れよ!センター」
「ちゃんと見てるからな」

2人を見送り、仲間達が待つ円陣に加わる。

「このライブも!全力投球するぞー!!」

あの悲しい事件の後、いろんな人に支えられて、今がある。恩返しのため、これからも本気で頑張ろうと思う。