相互主観性コミュニケーションを獲得することで、自閉症状でこだわり過ぎることによる対人関係の問題を上手く改善することが可能になる。
こだわり傾向が強い人は、社会生活を送る上で、
「言葉、その場の規則、行動習慣、作業所要時間、手順、配置パターン」を厳守する。
悪く言えば融通が利かない性格をしていることが多い。

こういった、こだわり傾向を改善するのに最適なのが、相互主観性コミュニケーションの実践です。
相手のI(主観)を自分のこととして体験しつつ相手と会話するのが相互主観性コミュニケーションです。

例えば家で朝、母親に挨拶をしたら、母が返事をしなかったとする。
自分のルールでは「おはよう」と声をかけられたら、必ず「おはよう」と返事をしなければいけない。
規則にこだわって生活している人は、母が返事をしなかったことをルール違反と見て、腹を立てて大きな声を出して怒鳴り散らすかもしれない。
ここで相互主観性コミュニケーションを実践してみましょう。
母が返事をしなかった際に、もう少し注意深くなり、母親の表情と姿勢をみてみよう。
母の目に力が無く、背中が丸まっていることから、母は今日は疲れていることが見て取れる。
それがわかったら、母のI(主観)を自分のこととして体験しようとしてみよう。
すると母はとても疲れているから返事をする気分じゃなかったという母の心の状態が実感できる。
そこで、いつもは挨拶をされたら必ず返事をしなければいけないという自分のルールを厳守するよりも、
その時の母のI(主観)の方を優先すべきだと判断して、
「今日だけは特別にルール変更だ。疲れている時は挨拶されても無理に返事をしなくてもよいというルールに変更しよう」と、
いつもは頑なにルールにこだわるところを、相手のその時の心の状態に応じてルールを臨機応変にでき、こだわりに融通が利かせられるようになる。
さらには、いつもは母親が絶対にしなければいけない決まりだった家事を、
今日は母が疲れていてできないから、今日だけは母が家事をやらなくてもいいと、
相手のその時の体調に応じてルールを柔軟に変更できるようになる。

これが相互主観性コミュニケーションの実践効果です。