上場企業が増益をめざすこと自体は当然だ。ただ、強烈なアクセルに見合うブレーキがなかった。
審査書類の改ざんを黙認・主導したり、融資の見返りに不動産業者から金銭を受けたり、いま指摘される不正行為に走りやすい素地があった。
岡野会長の実弟で番頭役の副社長だった喜之助氏が2年前に急逝し、抑えが利かなくなっていったと複数の関係者はいう。

 13年に始まった日銀の異次元緩和や、マイナス金利政策。法人融資の利ざやが縮んだ有力地銀や大手銀行は、スルガ銀行の個人客に激しい借り換え攻勢をかけた。

 メインバンクと安定した関係を重視する法人と違い、個人は借り換えをためらわない。
スルガ銀行のアパートローン金利は3〜4%台と高く、低い金利での他行の借り換え攻勢に脆弱だった。

 新規の融資実行額が総貸出金残高(個人向け、年度末)に占める比率は、04年度から10%程度で推移。
12年度から上がり始め、16年度は14%になった。融資残高を維持するため新規案件へと駆り立てられる自転車操業を強めていく。

 問題になったシェアハウスへの融資は13年に始め、15年と16年に増やした。
横浜東口、渋谷、二子玉川の3支店と周辺を含めた首都圏が中心。3月末時点で2035億円の融資残高を抱え、顧客は1258人に上った。
 土地・建物は実勢を大幅に上回る価格で売却された。審査資料の改ざんもあってか、大半の借り手に4%前後の高い金利で全額を融資。
数百万円の手数料をさらに高金利で貸した例も多い。スルガ銀行は供給過剰による低い入居率や高い価格の実態を知り得たのに、融資を重ねた。
経営陣は17年になるまで異常に気付かなかったという。
 独自のビジネスモデルは攻めに強くても守りには弱かった。周回遅れでスルガ銀行をまね始めた他の地銀にもリスクが広がっている。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO3144409006062018EE9000/