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違う世界に国ごとトリップ
0050創る名無しに見る名無し垢版2018/06/12(火) 16:29:54.61ID:a5orQuBo
「女は拐われないので?」
「識者の話によると、雌が圧倒的に多いから間に合ってるそうだ。
ちなみに人間との言語的コミュニケーションは現在のところ不可能。
他の亜人のように王国との交流も無ければ、交渉出来るような文明的組織も見当たらない。
よって地球系同盟国並びに独立都市は、ハーピーを害獣として駆除することに決定した。」

識者ってなんだよ、という呟きは質問では無いので船長は無視する。

「奴等の巣は鳥島群島の加沙島と推定されている。
住民が800名ほどいて、危険に晒されていると考えられる。
念のために他の有人島も警備隊と自警団が現在も捜索を行っている。
諸君らは加沙島のハーピーの駆逐後、諸鳥島群島の無人島を一つ一つ捜索する為に召集された。
長丁場になるが、諸君等の健闘を期待する。」

鳥島群島が所属する珍島市の無人島は185に及ぶ。
それを海兵一個小隊で捜索しろというのだから、隊員達はうんざりとする顔を隠そうともしない。

「そう腐るな。
有人島の捜索が終わった警備隊もこれに加わるし、自衛隊の西部普通科連隊もこの作業に加わる。
そう長くはかからないさ。」

先程の長丁場発言と矛盾するが、船長としてはこう言うしかない。

「ハーピーどもが大陸から遠いこの地にどうやって渡ってきたのか、日本も興味を示してるからな。
それに現実問題として、国防警備隊はイカ共の攻撃から再建出来たとは言い難い。
背に腹は代えられないってな。」

ハーピーの巣の根絶自体は問題は無い。
加沙島の港から海兵隊が上陸すると、住民の避難活動が始まっていた。
海兵隊達は近隣まではバスで移動し、徒歩で巣になっていると思われる南部の金鉱跡に向かう。
夜目の効かず、眠りに入っているハーピー達にいちいち隠密行動は取らない。
最短距離で巣になっている南部の金鉱跡の洞窟に侵入する。

「臭いな・・・」
「アレの臭いか・・・
ガスマスクでも持って来るんだったな。」

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04/11 20:01
壁にはペリッドで貼り付けられた男達が気を失っている。
さらに地面には悪臭が漂うなか憔悴仕切った男達が複数倒れていた。
数人はすでに事切れている。
洞窟の中のハーピーは30匹近くいたが、色々と満足したのか多少の物音でも起きてこない。
藁で造られた鳥の巣のような物には卵が複数入っている。

「この数が繁殖されたら溜まらんな・・・」

遺体の回収は諦め生存者の救出を優先し、洞窟にC4プラスチック爆弾を仕込んで脱出する。
だが救出された男達の悪臭と物音にさすがに気がついたのか、森からも複数のハーピーが飛び上がってきた。
海兵達が小銃による射撃で急降下してくるハーピーを迎撃しながら海岸を目指す。
鳥目の為か狙いが甘く、ハーピー達は蜂の巣になっていく。
しかし、数が多く鉤爪に隊員や生存者が捉えられそうになるが、拳銃でハーピーを射殺して難を逃れる。
隊員達や要救助者がバスに乗り込むと、車体をハーピーの鉤爪が激しく叩いてくる。
バスを走らせ港まで来ると海上の『太平洋9号』による40mm連装機銃やブローニングM2重機関銃による援護射撃も始まり、上空のハーピーを餌食にしていく
乗員や島の警官達も小銃や拳銃で応戦する。

「待て、待て、ちょっと待て!?」
0051創る名無しに見る名無し垢版2018/06/12(火) 17:30:13.35ID:a5orQuBo
「現米軍も自衛隊と同じ装備に移管しつつあります。
安価で工場が完成したロシア系とは比べられません。」

大陸における日本の権益を守る主力であった第16師団の活躍の程が知れる話である。

「あと四年持ちこたえてくれれば自衛隊装備を回せるんだが・・・。」

そこに入室を知らせるインターホンが鳴り、白戸が受話器を手に話し出す。

「大臣、第17旅団長久田正志陸将補がおいでになりました。」
「通してくれ。」

久田陸将補は入室とともに敬礼をしつつ、着席を勧められて席に着く。

「久田陸将補、これは内示だが貴官が大陸に帰還後に三等陸将の辞令が総督府から発令される。
現在、訓練中の第17後方支援連隊とともに帰還して貰い、第17師団が正式に発足する。
今後の第17師団の展開予定を聞かせてくれ。」
「はい、現在王都を中心に展開している各普通科連隊を各分屯地の3領に移動、駐屯させます。
まずは南部アンフォニーに第17普通科連隊。
西部エジンバラに第34普通科連隊。
北部デルモントに第51普通科連隊。
各分屯地の分屯隊は各連隊に復帰させます。
また、王都ソフィアの駐屯地には、第17師団本隊並びに第17特科連隊、第17後方支援連隊が駐屯します。」

王国や貴族に対する布陣だが、同時に地球系同盟国や同盟都市に対抗する為のものだ。
特に建国宣言したばかりの華西民国や北サハリン共和国は警戒が必要だった。

「政府もようやく重い腰をあげて、海自の新造艦や空自のF−35の生産の予算が降りたばかりだ。
陸自がその恩恵に預かれるのはまだ数年先だが耐えてくれ。」

政府が重い腰を上げた理由はそれだけではない。
エルフ達からの情報により、今後も地球からの転移が有り得ることが否定できなくなったからだ。
しかもこの世界では一年でも地球では五年経過した対象の転移だ。
個人や小規模な転移ならいいが、国単位で未来技術を持ってくる対象が転移してきたらどうなるか?
答えは日本自身がこの世界に証明してみせてしまった。
多少はその差を補うべく、停滞させていた新兵器の開発に動き出したのだ。
久田陸将補が退出したあと、現在は第一師団の所属となっている第18普通科連隊の連隊長上田翔大一等陸佐が訪ねてきた。

「現在、我が連隊と各陸自部隊からの異動希望ならびに志願者のリストです。」

第18普通科連隊も現在の任地から二年後に大陸に進駐する。
トラブルを少なくする為に隊員の希望を聞いてやる為のリストだった。

「予想通りだな。
年内に大阪市の移民が開始されるから、それを見越した志願者が多いな。
まあ、こちらにも都合がよいから無理の無い範囲で配慮してくれたまえ。」

移民庁からの報告書によると、横浜市民による六浦市民の移民は6月後半に終了する見通しだった。
その後は、大阪市平野区、東淀川区の住民の移民をもって六浦市への移民が完了する。
そして、大阪市民が中心となる第4植民都市の移民が始まることになる。

「六浦の港も開港すれば、送り出せる移民の数も増える。
現地ではすでにインフラの工事も始まっている。
ゼネコンの連中は仕事が無くならないと左団扇だ。
羨ましい限りだ。」

都市建設や街道の整備、鉄道の敷設。
材木や鉱物による資源の採掘など、日本や地球系同盟国や都市の労働力だけでは人員を賄うことが出来ない。
住民にとって何より大事なことは食料の確保だ。
都市の外での活動にはあまり積極的ではないのが現実だ。
0053創る名無しに見る名無し垢版2018/06/12(火) 18:52:41.75ID:gG5qxPam
「或いは危険な物か。
再現も無理だな。
後は・・・なんだと思うこれは?」

何本も並べられた棒状のものは533ミリ魚雷六本である。

「さあ、日本が使っていたミサイルではないかと思われますが・・・」
「あの空を飛ぶ矢か、実物は始めてみるな。
どうやって飛ぶんだろうなこれは?」
「皆目検討も付きません。
尻から火を吹きながら飛んで来るという話でしたが?」
「風車が付いているようだが、これで飛ぶんじゃないか?」

主従が検証を続けていると、馬を駆る音とボルドーを呼ぶ声が聞こえる。

「父上か、また厄介な・・・」

陣幕に入ってきたフィリップはボルドーを怒鳴り付けようとしたが、並べられた銃器や魚雷を見て冷静になる。

「おい、こいつはさっさと埋めるか、日本に引き渡せ。
きっと災いを呼ぶ。」
「来て早々なんですか?
父上ならこれを利用しろと言うかと・・・この日本の船を研究すれば・・・」
「日本じゃない。
その棒に書かれた紋章をみろ。
今は使われてないが、新香港の一部の奴等が使っていた旗印だ。」

五星紅旗、自衛隊に陣借りしていた中国人という部族が使っていた旗だ。
ノディオンを引き渡す調印式の時にいた忌々しい連中だ。
すると、陣幕の外で叫び声や味方のものと思われる銃声が聞こえる。

「ほれ、災いが向こうからやってきたぞ。
ものども出合え、出合え、狼藉者を斬って捨てい!!」

フィリップは剣を鞘から抜き、陣幕から出ていった。
ボルドーとイーヴも慌ててその跡を追って陣幕を出ていった。


新香港武装警察部隊
目標からややズレた海岸に上陸した武警部隊は予想以上の悪路に悩まされていた。
先頭に三菱パジェロ2両。
何れもサンルーフと屋根に銃架が備え付けられている。
窓にはアーマーシールドを張りつけ打撃武器からの防御を考慮されている。
各車両には五名の隊員が乗車しており、即応性と機動力に申し分はない。
問題は同行するヒュンダイトラック、トラゴ2両各7名乗り。
トヨタ・コースターGX26名乗りの三両だった。
上陸して侯爵領内の各村まではある程度の道が出来ていたのだが、それはとても狭い道であった。
せいぜい中型の馬車が通れることを考慮したものだろう。
燃料や弾薬、食糧を積んだトラックを置いていくわけにもいかない。
トラックの屋根には機関銃を装備した銃座がそれぞれ2基もあり、火力支援の為にも必要なのだ。 慎重にゆっくりと。
時には岩を木を人力や車両からワイヤーで牽引して、排除しながら進むだけで新香港を出発して五日目となってしまった。
途中、幾つかの村があったが全て無視した。
各村から伝令が出るより武警側の方が早いからだ。
マイクロバスに乗った湯大尉は、隣に座らせた案内役の呉中尉に地図を見せて話し掛ける。

「中尉、そろそろ1キロ圏内だ。周辺に見覚えはあるか?」

こんな深夜も近い時間に自分でも無理を言ってると自覚はあるが、さっきから中尉がブツブツ言い出して不気味なので話を振ってみたのだ。
まだまだ森林地帯だが地図では、海岸の側のはずだった。
0054創る名無しに見る名無し垢版2018/06/12(火) 18:54:38.23ID:gG5qxPam
「はい、間違いないです。
この臭い、間違いなくここです。」
「臭い?」

もう一度問おうとすると前方から無数の矢が飛んでくる。
車両の装甲は射抜けるものではないが、窓に関してはちょっと心配だ。

「大尉、前方警戒の成龍2が、設置中なのか移動するバリケードと武装した一団を確認。
攻撃を受けたので後退中。」

最後尾座席にいる通信兵が伝えてくる。
成龍はパジェロに着けたユニット名だ。
トラゴの方には長城だ。

「成龍1は、成龍2の後退を援護。小隊は降車!!
連中を殲滅してやれ。
長城2は待機。
長城1は、腹を奴等に向けて制圧射撃開始!!」

新香港武装警察の装備は、基本的に長年日本警察が押収した銃火器を供与されたものである。
一応はちゃんと使えるように整備や修理を行ってはいるが、些か不揃いなのと夜間用の装備がない点が弱点とはいえる。
銃座からの制圧射撃が行われる中、自らもバスを降りた湯大尉は背中にRPG−26携帯式ロケットランチャーを背負った隊員に命令する。

「長引かせる訳にはいかない。
RPGでバリケードを粉砕して、成龍1、成龍2を突っ込ませる。
合図と共に撃てよ・・・」

湯大尉はもともとは軍人でも人民武装警察官でもない。
学生の頃に学生の義務である軍事教練を受けて、兵役の経験があっただけだ。
叔母か日本に爆買いに出掛けるから荷物持ちとして動員されたら転移に巻き込まれてしまった口だ。
その後は、帝国との戦争が始まり日本政府が募集した第一外国人師団に志願して今に至る。
転移に巻き込まれて路頭に迷った親戚一同で一番の出世頭であり、今でも彼等の生活を支える大黒柱なのだ。
こんなところで死ぬわけには行かない。
だから弾薬の損耗を気にする上官達の顔を立てて出し惜しみするつもりもまったく無い。
各車両や隊員の配置を確認すると声を張り上げる。

「今だ、撃て!!」

その弾頭はバリケードに吸い込まれるように飛んでいき大爆発を巻き起こす。
爆風で目の前に福岡県警のシールが、飛んできたのを目にして苦笑してしまう。
当然の事だが、このRPG−26も日本警察の押収品である。


陸上自衛隊
偵察小隊
陸路を行く自衛隊偵察部隊の車両は予想以上に走りやすい道を進んでいた。

「急拵えの用だが、道が整備されてて助かったな。」

赤井一尉の言葉に酒井二尉も感心したように頷く。

「侯爵領に入って途中から急にですね。岩とか倒木が道の外に片付けられています。」

まるで我々のような車両が通ったことがあるみたいだった。
赤井一尉は各車両への無線マイクを手に取る。

「各車、良く聞け。
この調子なら夜明けには着けそうだ。
最低限の人員を残し、睡眠を取って鋭気を養え。
朝から忙しくなるぞ。」
0055始末記垢版2018/06/12(火) 19:04:19.57ID:gG5qxPam
もちろんこの時点では、原子力潜水艦捜索するという意味以上のものはなかった。
なにしろ相手は原潜だ。
ガイガーカウンターが強く反応するところに行けば直ぐに発見できる筈である。

「あとは遠巻きに化学防護小隊に任せればいいさ。」
「ですよね〜」

酒井二尉もまったく同感と楽観視していた。

たが先頭の偵察用バイクで先行していた隊員から通信が入ると、雰囲気が変わる。

『爆発音並びに銃声が聞こえます。
現地は戦闘中、戦闘中です。』

赤井一尉は受信機のマイクを持ったまま各車両に通信を繋ぐ。
たが先頭の偵察用バイクで先行していた隊員から通信が入ると、雰囲気が変わる。

『爆発音並びに銃声が聞こえます。
現地は戦闘中、戦闘中です。』

赤井一尉は受信機のマイクを持ったまま各車両に通信を繋ぐ。

「各員、よく聞け。
どうやら我々の上前を跳ねようとしている輩が現地にいるらしい。
総員、戦闘準備!!
目標を奴等に渡すな!!
原潜は日本が確保する。」

一旦、通信を切ると酒井二尉が進言してくる。

「敵は明らかに重火器を使用しています。
友軍なのか確認する必要があるのでは?」
「どのみち四時間はわからん。
それまでに確かめさせろ。」

移動速度を早めて三時間で戦闘があった地点に到着した赤井一尉一行は、困惑する物体を発見する。
それは爆発のような現象に引きちぎられた何らかの生物の尻尾であった。
暗視装置で周辺を確認していたら見つけたのだ。

「直径がメートル単位、長さが15メートルか?
くそ、何がいたんだここに?」
「爬虫類系ですね。
鱗とかあるし・・・ドラゴンでしょうか?」

隊員達の脳裏に転移直後に起きた事件が脳裏によぎる。

『隅田川水竜襲撃事件』
転移直後の混乱に陥っていた日本は、食料や燃料を統制的に管理することに連日のようにデモが巻き起こっていた。
そんな時に東京湾に水竜の群れが十二頭侵入。
隅田川を遡上し、各橋につがいと思われる2頭ずつが縄張りとし、近隣住民を餌にせんと上陸をしてきたのだ。
深夜から明け方の間の移動であり、日中は水底で眠ってたので対処に遅れたのだ。
勝鬨橋、佃大橋、中央大橋、永代橋、隅田川大橋、清洲橋の6つの橋で、駆けつけた各警察署や第9機動隊の警官が有らん限りの銃弾を叩きつけて、8匹を仕留めるが残りの4匹が北上しながら集結。
新大橋で第二機動隊が迎え撃ち、2匹を始末するが、2匹には防衛線を突破された。
両国大橋でさらに一匹を本所警察署が仕留めるが、総武線隅田川橋梁を破壊。
総武線車両が三両も川底に落ちる被害をだし、乗客・乗員300名もの死者をだした。
最後の一匹も総武線車両に押し潰されて死んだ。
最終的な死者は450名に及び、日本が異世界に放り込まれたと誰にも自覚させた事件。
この事件のあと、デモなどは潮が引くようにいなくなり、日本は異世界へのサバイバルに邁進できるようになった。
青ざめる隊員達を尻目に赤井一大尉は、銃声が聞こえる地点に目を向ける。
0056始末記垢版2018/06/12(火) 19:06:38.67ID:gG5qxPam
「まだ、戦闘は続いてるな。
十分に注意して進むぞ、だが素早くだ。」

進行方向に手を振ると、レンジャ―の資格をもつ隊員三名を戦闘に隊員達が横に広がりつつ木々の間を縫うように前進を開始する。

「105mmを持ってくるんだったな。」

赤井一尉は隊員達を支援する為の105mm砲M68A1E4、「105mm低姿勢砲塔」を搭載しているストライカー装甲車MGSを持ってこなかったことを詫びているのだ。

「40mmでもいけますよ。」

ストライカーICV(兵員輸送車)の車長の牧田二尉がら通信が入る。
ストライカーICV(兵員輸送車)は、取り付けられたカメラの映像を車内のモニターで見ながら操作可能であり、射手が体を曝す事無く目標を攻撃できる。
また、熱線映像装置が組み込まれており夜間の戦闘も可能となっている。
今回は40mm擲弾発射器Mk 19が装備されている。
「よし、火力で圧倒してやれ。」


新香港武装警察
湯大尉は困惑していた。
最初にバリケードを破壊して、車両を先頭に掃射しながら前進した。
何十メートルもあった筈のバリケードが一部を除いてきれいさっぱり無くなっているのだ。
さらにあれだけ銃撃をかましたのに死体がきれいさっぱり存在しない。

「血とかはあるんだが、誰も死なないとかありえないだろう。」

困惑して地面を探っている湯大尉を呼びつける悲鳴が聞こえる。

「大尉!?
蛇がでっかい蛇が!!」

眉を潜める湯大尉が顔を上げる。
「なんだ蛇くらいで情けない声をだすな・・・」

さすがに歴戦の湯大尉は悲鳴はあげなかったが絶句して棒立ちになっていた。
長城1が巨大な蛇にとぐろを巻かれているのだ。
運転席がメキメキと音を立てて潰れていく。
三人は乗っていたはずだが、三人とも飛び出して逃げ出している。
銃座にいた二人もだ。

「グレネード!!」

思わず叫ぶと隊員が放った一発が燃料や弾薬を積んだトレーラー部に直撃して爆発して、海蛇も炎に巻かれて炎上して息絶える。

「ふん、しょせんはでかいだけの蛇じゃないか。」

燃料と弾薬を半分も失ったのは後で責任を追及されるかもと内心の震えを隠すように強気に言う。

「大尉・・・あっちにもっとでかいのが・・・」

成竜1と成竜2が銃架から銃撃しながら小まめに動いては、巨大な蛇の噛みつきをかわしている。
先程の蛇の数倍の長さだが、尾の部分が焼け焦げてなくなっている。

「奴等だ・・・みんな奴等に殺された・・・」
0057始末記垢版2018/06/12(火) 19:09:31.76ID:gG5qxPam
案内役の呉定発海軍中尉が皆の恐怖を煽り立てるようなことを言ってくれる。
さらにその周辺に無数の半魚人達が笛の音色とともに、巨大な貝殻で作った鎧や兜を装備して現れる。
数は数百単位だろうか?
AK-74の弾丸を各隊員が横に薙ぐように撃ちまくるが、半魚人達も魚の骨や貝殻を削って造った投げ槍や弓矢で応戦しながら前進してくる。
弾丸の効果が無いわけではなく、数十体の半魚人が倒れ伏すが死んでいるのは少ないようだ。
後退する武装警察達はそれでも目標の洞窟を見つけると、長城2とマイクロバスを洞窟の入り口の前に停車させて、壁がわりにして抵抗する。
成竜1と成竜2はこちらには合流させずに来た道を戻らせた。
いざという時には任務失敗の報告をしてもらわないといけない。

「これで暫くはもつだろう。」

隊員達の中には矢や投げ槍が手足に刺さったり、切りつけられたりと負傷した隊員が出ている。
不思議と死者は出ていない。
半魚人達が地上では動きが鈍いのが理由だろう。
応急措置が必要だったが、半魚人の攻撃は終わっていない。
車両の隙間から銃撃して、交戦している隊員もいるのだ。
だがなんとか、一息付けると思った湯大尉だが、海蛇が長城2に体当たりをすると、長城2が一メートルも真横に移動させられた。
海蛇は長城2の銃座からの攻撃で後方に這いながら退くが、ここが突破されるのは時間の問題だ。
銃撃もあの分厚そうな皮を傷つけるが致命傷は与えられていない。

「燃料は仕方がない、弾薬と食料を洞窟に運びこめ。」

隊員達が長城2の三番扉を開けて中の物資を洞窟に運び出していく。
だが洞窟の中には先客がいたようだ。


「なんだ新香港の連中も存外にだらしないな。
マーマンども片付けてくれると期待してたのじゃがな。」

洞窟の中で銃士隊を3隊に分けて、立ち撃ち、膝撃ち、伏せ撃ちの構えを取らせている。
この地形では効果的な陣形だ。
しかも、武警側は大半が両手に荷物を抱えたままだ。

「我々も少しは学ぶのだよ、理解したかな?」

苦汁を飲ませ続けられた新香港の武警に圧倒的に有利な立ち位置にたったので得意気な顔をしている。
ドヤ顔の元ノディオン公フィリップの後ろで困り顔をハイライン侯ボルドーが宥める。

「我々もここに逃げ込んできただけなのにこれ以上敵を増やすのやめて下さい父上・・・」


話は少し遡る。
フィリップが陣幕を出ると剣兵、槍兵達が異形の者達と、そこかしかで斬り結んでいた。
数が違いすぎるので、劣勢に立たせられている。

「ボルドー、銃士隊を洞窟に集結させて、皆が逃げ込むのを助成せよ。」
「父上は?」

言うが早いがフィリップは剣を抜き去り、マーマンを二体切り捨てている。

「殿軍は老人の花舞台よ。」

年寄りの冷や水かと思いきや3匹のマーマンを相手に一歩も引いていない。
マーマンの繰り出してくる銛を避けて、右手で柄を掴んで引き寄せて、剣で首を刎ねる。

「急げ!!
あんまり長くは保たんぞ。」

フィリップの意外な活躍に惚けている銃士隊長イーヴは、先込め式銃で、フィリップに群がっていたマーマンの額を撃ち抜く。
0058始末記垢版2018/06/12(火) 19:13:11.01ID:gG5qxPam
「イーヴ、父上を守れ。
銃士隊は、洞窟前の敵を掃射。
その後は剣兵、槍隊は洞窟を制圧せよ。」

自らも剣を抜いて、血路を切り開く。
洞窟の中には黒い船を調査する為の魔術師や職人、人夫達が奥に残っている。
一番近い村は馬で数時間の内陸にあるからまだ無事の筈だ。
ならばマーマン達はここで撃退する必要がある。
だが気がついたら横でフィリップがマーマン達と斬り結んでいた。

「父上?
なぜ、こちらで戦ってるのですか?」
「ふん、さすがに儂も剣一本であれと戦うのは辛いは・・・」

フィリップの剣が指し示す方向に巨大な手足の無い爬虫類がこちらを睨んでいる。

「シーサペント・・・」
「まさか陸地までひっぱりだしてくるとわな・・・海岸は確かにすぐそこだが・・・」

あっというまにフィリップが先頭に立って洞窟前を制圧に走っている。
銃士隊はシーサペントを牽制するので手一杯で、どうにか生き残りが洞窟に逃げ込んだ時には約一名を除いて、息も絶え絶えだった。

「なんじゃ若いモンが情けない。ほれ、陣形を整えろ。
すぐに奴等がくるぞ。」

だが予想に反して外から奇怪な音や連続して発砲される銃声が聞こえてくる。
さらに侯爵軍でも領民でも無い格好の連中が乗り込んでくる。

「なんだ新香港の連中も存外にだらしないな。
マーマンどもを片付けてくれると期待してたのじゃがな。」

フィリップだけが事情を察し、憎まれ口を叩いている。

「我々もここに逃げ込んできただけなのにこれ以上敵を増やすのやめて下さい父上・・・」

ボルドーの苦悩は頭痛にまで昇華しようとしていた。

「まあ、聞け。
新香港の連中が来たこと戦力は激増した。
ここは争ってる場合じゃ無いから否応あるまい。なあにまかせておけ、儂に良い考えがある。」

銃士隊や武警隊員達が洞窟内に侵入しようとするマーマン達を狙い撃ちしている中、少し奥でフィリップがボルドーや湯大尉に作戦を説明する。

「まずシーサペントだが、あやつはマーマンの蛇使いに笛の音で操られている。
蛇使いさえ葬れば暴れだしてマーマン共にも襲い掛かるだろう。」

笛で操られていると聞いて、湯大尉は思わず呟く。

「インド人もびっくりだぜ・・・それから?」
「儂らは黒い船からミサイルといったかな?
アレを6本抜き取った。」

湯大尉はSLBMが抜かれたのかと最初は戸惑ったが、話を聞いてるうちに魚雷のことだと気がついた。
その違いを指摘し、疑問をぶつけてみる。

「魚雷には固定の鍵が掛かってたと思うのだがどうやって解除したんだ?」
「え?
解除の魔法で一発だったぞ。まあ、厳重な鍵だったらしく、連れて来た魔術師が一人魔力切れを起こしていたがな。」
0059創る名無しに見る名無し垢版2018/06/12(火) 19:14:44.14ID:a5orQuBo
「本国は現地駐屯部隊で対処しろと通達してきた。
『長征7号』の確保、或いは無力化だ。
目標が原子力潜水艦である以上、無制限の破壊は禁じるとのことだ。
本国からの増援はすぐにはでない。
青木陸将、部隊の派遣を命じたい。」

第16師団師団長青木一也陸将は立ち上がって説明を始める。

「今回は即応を優先しますので、第16偵察中隊から先遣を出させます。
現在、出動待機しており命令次第出動出来ます。」

陸上自衛隊第16師団は、大陸駐屯の為に新設された部隊である。
本国の部隊は転移直後に大量に発生した失業者を背景に自衛隊経験者を大量に再雇用した。
失業者対策である。
偵察隊が中隊規模になるくらいの増員だ。
転移直後に起きた『隅田川水竜襲撃事件』や開戦の発端となった『横浜広域魔法爆撃』が、自衛隊の大幅増強を世間が後押しする結果となった。
海上からのモンスターの襲撃がある以上、終戦後各部隊は本国に張り付けになってしまったのだ。
第16師団は大陸の日本の権益を防衛するのが存在意義となった。
「まあ、宜しく頼むよ。
どれくらい掛かる?」
「現地までは6日といったところでしょうか。」

ハイライン侯爵領
海岸部
冒険者の一団から通報を受けたハイライン侯爵ボルドーは、馬に引かれた『ISUZU:エルフ』と書かれた車両の横扉を開いて、その地に降り立った。
日本との戦争の責任を取って隠居させられた父の後を継いだばかりの若者だ。
次の馬車からも数人の男達が降りてくる。
そして、馬に乗った武装した銃士達がまわりを固める。
先込め式の滑腔式歩兵銃を持てるのは、以前は騎士と呼ばれてた階級の人間だけで足る?
馬車から降りた人間だけで達には船大工や錬金術師と言った人間達だがドワーフといった妖精族が混じっている。
ボルドーは一団を率いて、洞窟に入っていく。

「これが・・・、異界の国の船か?
まさか上部まで鉄張りとは・・・だがこの船を手に入れれば奴らに対抗出来るかもしれない。」

軍事的にはたかが1隻程度では話にならないだろう。
だが船ならば生活の為の道具や武器が積まれていたはず。
圧倒的な技術格差が少しは埋まるかもしれない。
そうすればこの新興開拓地の民達を救える方法が見つかるかもしれない。
希望を見いだす。

「上部に手回し式の入り口があるそうです。
開けっ放しになっていたらしく、内部にはマーマンの死体が何体か。
乗員は停泊中に襲撃を受けたものと思われます。
洞窟の外に百個以上の簡素に造られた墓地も発見されています。」

銃士長が現時点でわかったことを報告してくる。

「うむ、職人達をかき集めてきた。
徹底的に調査を進めよ。」

客船『中華泰山号(チャイニーズタイシャン)』
下関寄港時に異世界転移に巻き込まれた同船は、新香港の公営企業の所属となっている。
かつては900人もの中国人客を乗せて、日本爆買ツアーを行っていたが現在乗せている乗客は新香港武装警察官50名と案内役の中国海軍中尉呉定発が乗り合わせている。
すでに出港から2日と半日。

「船長?
すでに到着予定時刻を2時間も過ぎてると思うのだが・・・」
0061創る名無しに見る名無し垢版2018/06/12(火) 19:49:40.99ID:a5orQuBo
もちろんこの時点では、原子力潜水艦捜索するという意味以上のものはなかった。
なにしろ相手は原潜だ。
ガイガーカウンターが強く反応するところに行けば直ぐに発見できる筈である。

「あとは遠巻きに化学防護小隊に任せればいいさ。」
「ですよね〜」

酒井二尉もまったく同感と楽観視していた。

たが先頭の偵察用バイクで先行していた隊員から通信が入ると、雰囲気が変わる。

『爆発音並びに銃声が聞こえます。
現地は戦闘中、戦闘中です。』

赤井一尉は受信機のマイクを持ったまま各車両に通信を繋ぐ。
たが先頭の偵察用バイクで先行していた隊員から通信が入ると、雰囲気が変わる。

『爆発音並びに銃声が聞こえます。
現地は戦闘中、戦闘中です。』

赤井一尉は受信機のマイクを持ったまま各車両に通信を繋ぐ。

「各員、よく聞け。
どうやら我々の上前を跳ねようとしている輩が現地にいるらしい。
総員、戦闘準備!!
目標を奴等に渡すな!!
原潜は日本が確保する。」

一旦、通信を切ると酒井二尉が進言してくる。

「敵は明らかに重火器を使用しています。
友軍なのか確認する必要があるのでは?」
「どのみち四時間はわからん。
それまでに確かめさせろ。」

移動速度を早めて三時間で戦闘があった地点に到着した赤井一尉一行は、困惑する物体を発見する。
それは爆発のような現象に引きちぎられた何らかの生物の尻尾であった。
暗視装置で周辺を確認していたら見つけたのだ。

「直径がメートル単位、長さが15メートルか?
くそ、何がいたんだここに?」
「爬虫類系ですね。
鱗とかあるし・・・ドラゴンでしょうか?」

隊員達の脳裏に転移直後に起きた事件が脳裏によぎる。

『隅田川水竜襲撃事件』
転移直後の混乱に陥っていた日本は、食料や燃料を統制的に管理することに連日のようにデモが巻き起こっていた。
そんな時に東京湾に水竜の群れが十二頭侵入。
隅田隅田を遡上し、各橋につがいと思われる2頭ずつが縄張りとし、近隣住民を餌にせんと上陸をしてきたのだ。
深夜から明け方の間の移動であり、日中は水底で眠っ清洲橋てたので対処に遅れたのだ。
勝鬨橋、佃大橋、中央大橋、永代橋、隅田川大橋、清洲橋、清洲橋の6つの橋で、駆けつけた各警察署や第9機動隊の警官が有らん限りの銃弾を叩きつけて、8匹を仕留めるが残りの4匹が北上しながら集結。
新大橋で第二機動隊が迎え撃ち、2匹を始末するが、2匹には防衛線を突破された。
両国大橋でさらに一匹を本所警察署が仕留めるが、総武線隅田川橋梁を破壊。
総武線車両が三両も川底に落ちる被害をだし、乗客・乗員300名もの死者をだした。
最後の一匹も総武線車両に押し潰されて死んだ。
最終的な死者は450名に及び、日本が異世界に放り込まれたと誰にも自覚させた事件。
この事件のあと、デモなどは潮が引くようにいなくなり、日本は異世界へのサバイバルに邁進できるようになった。
青ざめる隊員達を尻目に赤井一大尉は、銃声が聞こえる地点に目を向ける。
0063創る名無しに見る名無し垢版2018/06/12(火) 20:48:24.03ID:a5orQuBo
「そうした船の1隻か・・・
なるほど、『長征7号』の例もある。
我々が把握している以上に多いんだろな、そういった行方不明船は。」

乃村大臣の言葉に海保と警察の両幹部が席に座る。

「貨物船の詳細については、各捜査機関に任せるとしてだ。
最後に出てきたアンデット・ドラゴン、あれはまずい。
ハーピーもだが、船舶にモンスターを積載して日本や大陸領土に突入させてくるテロは絶対に防がないといけない。
それとな、気になる報告だが、こいつは海上に墜ちたハーピーの死骸を食ってたそうだ。」

会議室の面々は驚愕の声をあげる。

「今、子爵殿と王国大使館で検証してもらっているが、どうやら竜種には『海洋結界』が効果が薄いという結果が出そうだ。」
「そんな・・・、だから隅田川に水竜の群れが侵入出来たのか・・・」

警視庁が総力を結集して退治した『隅田川水竜襲撃事件』を思いだし、警察幹部は冷や汗を垂らす。

「『海洋結界』は年々、範囲が狭まっている。
いずれその効果が消滅することを前提に我々は防衛体制を整えなければならない。
今回の責任問題を我々に追及してくる声もあるが、我々の予算要求に尽く抵抗してくる財務省に今回の件を被ってもらう。
関係各機関はその方向で情報統制を進めてくれ。」

与党右派と野党日本国民戦線の主張通りに軍備増強の口実になるだろう。
会議の結論を述べて、解散となった。
それぞれの担当者には被災地域に対する支援や地元組織の再建など、仕事が山積みなのだ。
大臣秘書の白戸昭美が執務室で資料を渡してきた。
白戸は既に乃村の次男と入籍を済ませているが、夫婦別姓で名字は変えていない。

「高麗側の被害です。
民間人の死者48名、国防警備隊の殉職者19名。
御自慢の新鋭フリゲート『大邱』が中破してドック入りしました。
不審船の『大邱』にも小型のアンデットドラゴンが襲いかかったようです。
どうにか始末出来たようですが、甚大な損害が出ていたそうです。」

冗談抜きで帝国との戦争以来の損害だった。
実際のところ、日本本国ではともかく、高麗国国の鳥島諸島において、ハーピーの駆除作戦はいまだに続いている。
幾つかの無人島に巣を作られた形跡があり、住みつかれたようだ。
ハーピーが空を飛んで、無人島から無人島にと、逃げ回っているので、人員の足りない国防警備隊だけでは手に負えないのだ。

「こちらに来るほど数が増えなければいい。
連中にも少しは苦労してもらおう。」
「海棲亜人による襲撃事件も加えると、ろくな目にあってないから少し可哀想な気がしますが・・・」

息子の嫁の言葉に話題を変えることにした。

「府中の子爵様の報告も来てるな。
あのアンデット・ドラゴンの作成には、人間の魂千体以上必要だそうだ。。
いったいどんな奴の仕業だろうな。」
「会議の場では、誰もテロリストの正体に付いて口に出しませんでしたね。」

テロ集団が従来の帝国残党軍と違い、高い技術力を有していることから、地球人の集まりであることは明白だ。
その事の公表は地球系同盟国並びに独立都市の足並みを乱す可能性がある。
薄々は誰もが勘づいており、はみだし者達の行き着く先となっている。

「今はまだ泳がす。
連中も地盤固めの為に王国と度々衝突してるようだからな。
王国を消耗させ、手に負えなくなった時に、一気呵成に叩き潰す。
精々我々にとっての良い当て馬になってくれることを望むよ。」
「乗員が何百人もいた筈だが?」
0064始末記垢版2018/06/12(火) 20:58:15.80ID:gG5qxPam
>>60
しかし、そのやり方効率が悪いでしょう
こっちはここは六ヶ所目だから構わないけど
0066始末記垢版2018/06/12(火) 21:08:37.85ID:gG5qxPam
>>65
まあ、おかげで『形』になってきたよ
どれくらいの文字数で投稿できるかは課題だったからね
今も手繰り。
何が毎回NGワードになるかも理解できた

おかげで別スレは効率よく投稿できてるよ
0068始末記垢版2018/06/12(火) 21:12:19.92ID:gG5qxPam
>>67
まあ、ここが被害担当なのは知ってるんでしょ?
どうせこのペースだと700レスくらいまでしか投稿できないんだから
0069創る名無しに見る名無し垢版2018/06/12(火) 21:14:32.80ID:a5orQuBo
家屋を破壊するのも避けたい事態だった。
何より銃声で起きられて、空に逃げられるのは避けたいところだ。
どのみち今の隊員には実戦で発砲したことがある者は少ない。
それは精鋭足る西普連ともいえど同様だった。
梯子を使わずに登ろうとして、物音で起きられて逃げられる事態が幾つか発生した。
ようやく梯子がまわってきて、よじ登る隊員は屋根の上でまだ起きていたハーピーと目が合ってしまった。

「 キェェェェェェェェェ〜〜 」

猿叫のような叫び声を上げられて隊員は硬直する。
周辺家屋にいたハーピー達は一斉に目を覚まして、目についた西普連の隊員に襲いかかる。
梯子を昇る途中だった隊員は、梯子を倒されて地面に落ちていく。
屋根でハーピーを刺突していた隊員も他のハーピーが飛来して体当たりを食らい屋根から叩き落とされる。
窪塚一尉はもはやここまでと発砲を許可した。

「飛び上がったハーピーに発砲を許可する。
負傷者は小学校に運べ!!」

真っ先に発砲を始めたのはやはり大陸帰りの隊員達だった。
許可さえ下りれば彼等に躊躇いは無い。
彼等に触発されて、初めての実戦を経験する隊員も射ち始める。
窪塚一尉も89式小銃を撃ちながら負傷して後送される隊員を援護する。
西部普通科連隊は第4普通科連隊と違って、転移後の新装備はあまり配備されてない。
しかし、使いなれた銃器の方に隊員は信頼を置いていた。
ハーピーの数は決して多くはない。
銃弾が使用できれば、西普連の敵ではなかった。

唐津城
第4普通科連隊臨時司令部

「鳥島の駆除が完了との報告がありました。」
「第4中隊が神集島にて、少数のハーピーを確認、交戦中!!」
「湾岸防衛の第5中隊も三ヶ所でハーピーを確認。
追跡の上、駆除します。」
「79AW、発砲開始!!」

壊滅した第1・2中隊から無事だった者を集めて再編した司令部はどうにか機能を回復した。
湾岸の防衛には久留米から呼び寄せた教育隊まで動員してカバーしている。
連隊長の鶴見一佐は予備の第6中隊も動員するか考えていた。

「高島の西普連はどうか?」
「負傷者を出しつつも順調とのことです。」

島からは銃声も聞こえる。

「刃物だけではやはり片付かんかったか。」

その銃声も少なくなってくる。
唐津における殲滅はうまくいきそうだった。

「姫島の方に福岡県警SAT一個小隊が、警備艇三隻で突入。
あちらはしょっぱなから、銃器を使用している模様です。」
「長年、暴力団相手にしる連中は違うな。
他のSATでもあそこまで思いきりはよくあるまい。」

福岡市や北九州市に配備されていた分隊を集めた部隊だ。
姫島は福岡県に属するのでかき集められた。
他の戦闘となった3島に比べれば姫島は遠隔にあるが、そのぶんハーピーの数も少ない。
県警警備艇『げんかい』、『ほうまん』、『こうとう』の3隻に分乗した。
0071始末記垢版2018/06/12(火) 21:58:13.91ID:gG5qxPam
>>70
まあ、そんなことはどうでもいいか

どんな作品が好み?
0072創る名無しに見る名無し垢版2018/06/12(火) 22:04:58.57ID:a5orQuBo
「現米軍も自衛隊と同じ装備に移管しつつあります。
安価で工場が完成したロシア系とは比べられません。」

大陸における日本の権益を守る主力であった第16師団の活躍の程が知れる話である。

「あと四年持ちこたえてくれれば自衛隊装備を回せるんだが・・・。」

そこに入室を知らせるインターホンが鳴り、白戸が受話器を手に話し出す。

「大臣、第17旅団長久田正志陸将補がおいでになりました。」
「通してくれ。」

久田陸将補は入室とともに敬礼をしつつ、着席を勧められて席に着く。

「久田陸将補、これは内示だが貴官が大陸に帰還後に三等陸将の辞令が総督府から発令される。
現在、訓練中の第17後方支援連隊とともに帰還して貰い、第17師団が正式に発足する。
今後の第17師団の展開予定を聞かせてくれ。」
「はい、現在王都を中心に展開している各普通科連隊を各分屯地の3領に移動、駐屯させます。
まずは南部アンフォニーに第17普通科連隊。
西部エジンバラに第34普通科連隊。
北部デルモントに第51普通科連隊。
各分屯地の分屯隊は各連隊に復帰させます。
また、王都ソフィアの駐屯地には、第17師団本隊並びに第17特科連隊、第17後方支援連隊が駐屯します。」

王国や貴族に対する布陣だが、同時に地球系同盟国や同盟都市に対抗する為のものだ。
特に建国宣言したばかりの華西民国や北サハリン共和国は警戒が必要だった。

「政府もようやく重い腰をあげて、海自の新造艦や空自のF−35の生産の予算が降りたばかりだ。
陸自がその恩恵に預かれるのはまだ数年先だが耐えてくれ。」

政府が重い腰を上げた理由はそれだけではない。
エルフ達からの情報により、今後も地球からの転移が有り得ることが否定できなくなったからだ。
しかもこの世界では一年でも地球では五年経過した対象の転移だ。
個人や小規模な転移ならいいが、国単位で未来技術を持ってくる対象が転移してきたらどうなるか?
答えは日本自身がこの世界に証明してみせてしまった。
多少はその差を補うべく、停滞させていた新兵器の開発に動き出したのだ。
久田陸将補が退出したあと、現在は第一師団の所属となっている第18普通科連隊の連隊長上田翔大一等陸佐が訪ねてきた。

「現在、我が連隊と各陸自部隊からの異動希望ならびに志願者のリストです。」

第18普通科連隊も現在の任地から二年後に大陸に進駐する。
トラブルを少なくする為に隊員の希望を聞いてやる為のリストだった。

「予想通りだな。
年内に大阪市の移民が開始されるから、それを見越した志願者が多いな。
まあ、こちらにも都合がよいから無理の無い範囲で配慮してくれたまえ。」

移民庁からの報告書によると、横浜市民による六浦市民の移民は6月後半に終了する見通しだった。
その後は、大阪市平野区、東淀川区の住民の移民をもって六浦市への移民が完了する。
そして、大阪市民が中心となる第4植民都市の移民が始まることになる。

「六浦の港も開港すれば、送り出せる移民の数も増える。
現地ではすでにインフラの工事も始まっている。
ゼネコンの連中は仕事が無くならないと左団扇だ。
羨ましい限りだ。」

都市建設や街道の整備、鉄道の敷設。
材木や鉱物による資源の採掘など、日本や地球系同盟国や都市の労働力だけでは人員を賄うことが出来ない。
住民にとって何より大事なことは食料の確保だ。
都市の外での活動にはあまり積極的ではないのが現実だ。
0073創る名無しに見る名無し垢版2018/06/12(火) 22:12:56.42ID:a5orQuBo
隊長の湯正宇大尉が心配そうな顔で船長に尋ねる。

「はっはは、もうすぐですよ、あわてない、あわてない。
もともと航路も無いとこ進んでるんだから時間が無茶なのね。
まあ、近くまでは前にも行ったことがあるから水深はわかってるけど、慎重に進んでるだけだから安心するよろし。」

実質、軍事組織に所属する湯大尉は時間に正確になっているが、船長は未だに中国人的大陸時間の感覚でいるらしい。
異世界に来てむしろ悪化しているようだ。
だか船長にも思うところはあるのだ。
普段は新京から日本への食糧を運ぶのんびりした航海ばかりなのだ。
突然に新香港政府から武警を運ぶよう命令されて、これはヤバイ仕事だと感じてはいた。
厳重な機密扱いが適用された。
新香港政府が隠し事をする相手など、日本政府や自衛隊以外に無いだろう。
慎重に航海を進めるしかない。

「いや、どうせ目標は逃げやしないだろうけどさ。
報告が遅れるから急いでくれよ?」

湯大尉からの苦情も大変疎ましく感じていた。

陸上自衛隊
中国人達が海上からハイライン侯爵領に向かっている頃、日本人共は陸路を輸送蒸気機関車で現地に向かっていた。
赤井照長一等陸尉率いる偵察小隊は30名。
車両は在日米軍から購入したM1126ストライカーが2両。
偵察用バイクが4両、軽装甲機動車1両の30名の部隊を貨物として列車に積載している。
隊員の小銃はM16。
大半の装備は在日米軍に在庫を掃き出させて調達した代物である。
これは、第16師団全般に行き渡っている。
自衛隊用の列車なので、ブリーフィング用の車両も備え付けられており、副隊長の酒井二尉と路線図や街道が書かれた地図を壁に貼って眺めていた。

「新香港から王都、日本の直轄領新京を結ぶ大陸横断列車を施設部隊や土建屋が総力を挙げて3年掛かりで完成させたばかりだが、道路の方もなんとかして欲しいな。」
「年貢の迅速な輸送の為の効率重視。
まあ、当時の我が国の食糧事情は切実でしたからね。
この大陸でもすでに炭鉱は小規模ながら存在したから蒸気機関車なんて使うことが出来たわけですが。」

改めて地図を見渡す。
すでに新香港を出発して三日目。
王都を経由し、現在も敷設中の南部線でいけるのが1日分の距離。
残りの2日は街道沿いに車両で移動となる。

「ヘリを使えればすぐだったんですがね。」
「北部方面の年貢輸送に重点を置かれて、こちらの燃料の割り当ても少ないから仕方がない。
化学防護隊も出発したらしいから安全だけは確保しとかないとな。」

ハイライン侯爵領
ハイライン家館
ハイライン侯爵領は、新興の開拓領である。
かつては百万を越える民を抱え、帝国でも屈指の領土を保有していた。
しかし、戦争に負けると責任をとって公爵から侯爵に降格。
当主フィリップは、隠居を申し渡され家督相続を強制された。
ここまではいい。
皇族、貴族全てが一律に処されたからだ。
だがハイライン家は領土を転封されて今の家名に変えられてしまった。
その上こんな未開拓地に一族や朗党、公都を追放された領民の運命を託さぜるを得なくなっている。
元ノディオン公爵フィリップはこの様な状況が憤死しかねないほど不満だった。

「ボルドーは何をしている!!
もう四日も帰っておらんぞあの馬鹿息子は!!」
0076始末記垢版2018/06/12(火) 22:21:44.09ID:gG5qxPam
前々から聞いてみたかったが、虚しくならない?
0077創る名無しに見る名無し垢版2018/06/12(火) 22:28:35.52ID:a5orQuBo
「そうした船の1隻か・・・
なるほど、『長征7号』の例もある。
我々が把握している以上に多いんだろな、そういった行方不明船は。」

乃村大臣の言葉に海保と警察の両幹部が席に座る。

「貨物船の詳細については、各捜査機関に任せるとしてだ。
最後に出てきたアンデット・ドラゴン、あれはまずい。
ハーピーもだが、船舶にモンスターを積載して日本や大陸領土に突入させてくるテロは絶対に防がないといけない。
それとな、気になる報告だが、こいつは海上に墜ちたハーピーの死骸を食ってたそうだ。」

会議室の面々は驚愕の声をあげる。

「今、子爵殿と王国大使館で検証してもらっているが、どうやら竜種には『海洋結界』が効果が薄いという結果が出そうだ。」
「そんな・・・、だから隅田川に水竜の群れが侵入出来たのか・・・」

警視庁が総力を結集して退治した『隅田川水竜襲撃事件』を思いだし、警察幹部は冷や汗を垂らす。

「『海洋結界』は年々、範囲が狭まっている。
いずれその効果が消滅することを前提に我々は防衛体制を整えなければならない。
今回の責任問題を我々に追及してくる声もあるが、我々の予算要求に尽く抵抗してくる財務省に今回の件を被ってもらう。
関係各機関はその方向で情報統制を進めてくれ。」

与党右派と野党日本国民戦線の主張通りに軍備増強の口実になるだろう。
会議の結論を述べて、解散となった。
それぞれの担当者には被災地域に対する支援や地元組織の再建など、仕事が山積みなのだ。
大臣秘書の白戸昭美が執務室で資料を渡してきた。
白戸は既に乃村の次男と入籍を済ませているが、夫婦別姓で名字は変えていない。

「高麗側の被害です。
民間人の死者48名、国防警備隊の殉職者19名。
御自慢の新鋭フリゲート『大邱』が中破してドック入りしました。
不審船の『大邱』にも小型のアンデットドラゴンが襲いかかったようです。
どうにか始末出来たようですが、甚大な損害が出ていたそうです。」

冗談抜きで帝国との戦争以来の損害だった。
実際のところ、日本本国ではともかく、高麗国国の鳥島諸島において、ハーピーの駆除作戦はいまだに続いている。
幾つかの無人島に巣を作られた形跡があり、住みつかれたようだ。
ハーピーが空を飛んで、無人島から無人島にと、逃げ回っているので、人員の足りない国防警備隊だけでは手に負えないのだ。

「こちらに来るほど数が増えなければいい。
連中にも少しは苦労してもらおう。」
「海棲亜人による襲撃事件も加えると、ろくな目にあってないから少し可哀想な気がしますが・・・」

息子の嫁の言葉に話題を変えることにした。

「府中の子爵様の報告も来てるな。
あのアンデット・ドラゴンの作成には、人間の魂千体以上必要だそうだ。。
いったいどんな奴の仕業だろうな。」
「会議の場では、誰もテロリストの正体に付いて口に出しませんでしたね。」

テロ集団が従来の帝国残党軍と違い、高い技術力を有していることから、地球人の集まりであることは明白だ。
その事の公表は地球系同盟国並びに独立都市の足並みを乱す可能性がある。
薄々は誰もが勘づいており、はみだし者達の行き着く先となっている。

「今はまだ泳がす。
連中も地盤固めの為に王国と度々衝突してるようだからな。
王国を消耗させ、手に負えなくなった時に、一気呵成に叩き潰す。
精々我々にとっての良い当て馬になってくれることを望むよ。」
「乗員が何百人もいた筈だが?」
0079創る名無しに見る名無し垢版2018/06/12(火) 22:44:02.42ID:a5orQuBo
もちろんこの時点では、原子力潜水艦捜索するという意味以上のものはなかった。
なにしろ相手は原潜だ。
ガイガーカウンターが強く反応するところに行けば直ぐに発見できる筈である。

「あとは遠巻きに化学防護小隊に任せればいいさ。」
「ですよね〜」

酒井二尉もまったく同感と楽観視していた。

たが先頭の偵察用バイクで先行していた隊員から通信が入ると、雰囲気が変わる。

『爆発音並びに銃声が聞こえます。
現地は戦闘中、戦闘中です。』

赤井一尉は受信機のマイクを持ったまま各車両に通信を繋ぐ。
たが先頭の偵察用バイクで先行していた隊員から通信が入ると、雰囲気が変わる。

『爆発音並びに銃声が聞こえます。
現地は戦闘中、戦闘中です。』

赤井一尉は受信機のマイクを持ったまま各車両に通信を繋ぐ。

「各員、よく聞け。
どうやら我々の上前を跳ねようとしている輩が現地にいるらしい。
総員、戦闘準備!!
目標を奴等に渡すな!!
原潜は日本が確保する。」

一旦、通信を切ると酒井二尉が進言してくる。

「敵は明らかに重火器を使用しています。
友軍なのか確認する必要があるのでは?」
「どのみち四時間はわからん。
それまでに確かめさせろ。」

移動速度を早めて三時間で戦闘があった地点に到着した赤井一尉一行は、困惑する物体を発見する。
それは爆発のような現象に引きちぎられた何らかの生物の尻尾であった。
暗視装置で周辺を確認していたら見つけたのだ。

「直径がメートル単位、長さが15メートルか?
くそ、何がいたんだここに?」
「爬虫類系ですね。
鱗とかあるし・・・ドラゴンでしょうか?」

隊員達の脳裏に転移直後に起きた事件が脳裏によぎる。

『隅田川水竜襲撃事件』
転移直後の混乱に陥っていた日本は、食料や燃料を統制的に管理することに連日のようにデモが巻き起こっていた。
そんな時に東京湾に水竜の群れが十二頭侵入。
隅田隅田を遡上し、各橋につがいと思われる2頭ずつが縄張りとし、近隣住民を餌にせんと上陸をしてきたのだ。
深夜から明け方の間の移動であり、日中は水底で眠っ清洲橋てたので対処に遅れたのだ。
勝鬨橋、佃大橋、中央大橋、永代橋、隅田川大橋、清洲橋、清洲橋の6つの橋で、駆けつけた各警察署や第9機動隊の警官が有らん限りの銃弾を叩きつけて、8匹を仕留めるが残りの4匹が北上しながら集結。
新大橋で第二機動隊が迎え撃ち、2匹を始末するが、2匹には防衛線を突破された。
両国大橋でさらに一匹を本所警察署が仕留めるが、総武線隅田川橋梁総武線隅田川橋梁を破壊。
総武線車両が三両も川底に落ちる被害をだし、乗客・乗員300名もの死者をだした。
最後の一匹も総武線車両に押し潰されて死んだ。
最終的な死者は450名に及び、日本が異世界に放り込まれたと誰にも自覚させた事件。
この事件のあと、デモなどは潮が引くようにいなくなり、日本は異世界へのサバイバルに邁進できるようになった。
青ざめる隊員達を尻目に赤井一大尉は、銃声が聞こえる地点に目を向ける。
0083創る名無しに見る名無し垢版2018/06/12(火) 22:52:14.27ID:a5orQuBo
隊長の湯正宇大尉が心配そうな顔で船長に尋ねる。

「はっはは、もうすぐですよ、あわてない、あわてない。
もともと航路も無いとこ進んでるんだから時間が無茶なのね。
まあ、近くまでは前にも行ったことがあるから水深はわかってるけど、慎重に進んでるだけだから安心するよろし。」

実質、軍事組織に所属する湯大尉は時間に正確になっているが、船長は未だに中国人的大陸時間の感覚でいるらしい。
異世界に来てむしろ悪化しているようだ。
だか船長にも思うところはあるのだ。
普段は新京から日本への食糧を運ぶのんびりした航海ばかりなのだ。
突然に新香港政府から武警を運ぶよう命令されて、これはヤバイ仕事だと感じてはいた。
厳重な機密扱いが適用された。
新香港政府が隠し事をする相手など、日本政府や自衛隊以外に無いだろう。
慎重に航海を進めるしかない。

「いや、どうせ目標は逃げやしないだろうけどさ。
報告が遅れるから急いでくれよ?」

湯大尉からの苦情も大変疎ましく感じていた。

陸上自衛隊
中国人達が海上からハイライン侯爵領に向かっている頃、日本人共は陸路を輸送蒸気機関車で現地に向かっていた。
赤井照長一等陸尉率いる偵察小隊は30名。
車両は在日米軍から購入したM1126ストライカーが2両。
偵察用バイクが4両、軽装甲機動車1両の30名の部隊を貨物として列車に積載している。
隊員の小銃はM16。
大半の装備は在日米軍に在庫を掃き出させて赤井照長調達した代物である。
これは、第16師団全般に行き渡っている。
自衛隊用の列車なので、ブリーフィング用の車両も備え付けられており、副隊長の酒井二尉と路線図や街道が書かれた地図を壁に貼って眺めていた。

「新香港から王都、日本の直轄領新京を結ぶ大陸横断列車を施設部隊や土建屋が総力を挙げて3年掛かりで完成させたばかりだが、道路の方もなんとかして欲しいな。」
「年貢の迅速な輸送の為の効率重視。
まあ、当時の我が国の食糧事情は切実でしたからね。
この大陸でもすでに炭鉱は小規模ながら存在したから蒸気機関車なんて使うことが出来たわけですが。」

改めて地図を見渡す。
すでに新香港を出発して三日目。
王都を経由し、現在も敷設中の南部線でいけるのが1日分の距離。
残りの2日は街道沿いに車両で移動となる。

「赤井照長ヘリを使えればすぐだったんですがね。」
「北部方面の年貢輸送に重点を置かれて、こちらの燃料の割り当ても少ないから仕方がない。
化学防護隊も出発したらしいから安全だけは確保しとかないとな。」

ハイライン侯爵領
ハイライン家館
ハイライン侯爵領は、新興の開拓領である。
かつては百万を越える民を抱え、帝国でも屈指の領土を保有していた。
しかし、戦争に負けると責任をとって公爵から侯爵に降格。
当主フィリップは、隠居を申し渡され家督相続を強制された。
ここまではいい。
皇族、貴族全てが一律に処されたからだ。
だがハイライン家は領土を転封されて今の家名に変えられてしまった。
その上こんな未開拓地に一族や朗党、公都を追放された領民の運命を託さぜるを得なくなっている。
元ノディオン公爵フィリップはこの様な状況が憤死しかねないほど不満だった。

「ボルドーは何をしている!!
もう四日も帰っておらんぞあの馬鹿息子は!!」
0086創る名無しに見る名無し垢版2018/06/13(水) 00:26:48.56ID:NWj3tL1r
その後は別の魔術師が軽量化の魔法を掛けて、力自慢六人掛かりで外に持ち出したらしい。
この魔術師二人含む八名は疲労困憊で戦力にならないらしい。

「ミサイルだか魚雷だか知らんが、要するに火薬の詰まった筒だろ?
銃で狙い撃ちして爆発させれば、外の連中を一掃出来るんじゃないか?」

湯大尉はその光景をイメージしてみるが、否定的に首をふる。

「狙い撃つ為には洞窟入り口の半魚人共を掃討してからになる。それに陣幕の中の魚雷をどう撃ち抜けばいいんだ?
小銃で魚雷を撃ち抜いて爆発させられるのか?
博打的要素が強すぎて賛成できん。」
「御主等の肩掛け式大砲ならなんとかなるんじゃないか?」

フィリップに言われて武警隊員達の背中に目をやる。

「RPG−7が三本、RPG−22が一本・・・いけるか?」

他にアテもないので、その作戦を採用することにした。
洞窟がシーサペントの体当たりでも崩れない強固なことを確認して、後方に注意しながら洞窟内でRPG−7を発射する。
洞窟入口で爆発が起こり、ハイラインの兵士達と武警隊員達は、洞窟内部で倒れ付しているマーマン達に銃剣や槍でトドメを刺しながら前進する。
シーサペントが顔を洞窟に向けて、こちらを凝視している姿が目に入る。

「もう一発喰らわせてやるか」

RPG−7を背負った武警隊員の背中を叩くと隊員は発射の構えをとる。
だがシーサペントが少し顔を上げると、その口には魚雷が咥えられていた。
魚雷が一本洞窟に投げ込まれるが、狭い洞窟内では確実に衝突必至となってしまう。
RPG−7の発射された弾頭は止まらない。

「逃げろ!!」

弾頭が魚雷を直撃すると、一目散で逃げ出していた湯大尉、イーヴ達を爆風が吹き飛ばし岩肌に叩き付ける。
フィリップやボルドーが武警隊員や兵士達を助け出しながら爆発で一部が崩落を始めた洞窟のさらに奥に退く。
数名の武警隊員や兵士達が崩れて来る土砂に飲み込まれていく。

「まさか敵に先にやられるとはな。
わかっててやったのかな?」

湯大尉を肩に担ぎ上げているフィリップも困った顔で呟く。
イーヴを背負っているボルドーが応じる。

「放り込むのに手頃な鉄の棒としか思ってなかったのでしょう。
蛇使いも驚愕してると思いますよ?」

意識の戻った湯大尉は、武警隊員の無事を確認するが、四人が崩落に巻き込まれて戦死していた。
ハイラインの兵士達も7名が還らぬ人となっていた。
また、負傷して戦えない武警隊員14名。
負傷者を含む17名が小銃を失っていた。
搬送するさいに邪魔だと放棄させられたらしい。
フィリップの判断だ。

「RPGも全滅か。」

洞窟に入った武警隊員は40名が、負傷者14、戦死4。
小銃を保持している者は13名だけで洞窟内に敷いた防衛線で抵抗を続けている。
崩落が止まり更に狭くなった洞窟内だから少人数でも持ちこたえれるのだろう。
長城1、2の運転手や銃座にいた隊員は、車両から逃げ出すさいに拳銃以外持ち出せていない。
予備の弾薬が入った箱も崩落の時にそのほとんどを失っていた。
0087創る名無しに見る名無し垢版2018/06/13(水) 00:39:58.19ID:NWj3tL1r
「こちらも似たようなものじゃ。
銃士17、兵士31、人夫や職人にも武器を持たせて40・・・、かつては二万の軍勢を指揮していた儂が今ではたった百名あまりか・・・落ちたものだ。」

その指揮下の兵士に自分達も加えられてることに気がつき湯大尉は愕然としていたが、負傷者を救護していた葉曹長が小声で呟いてくる。

「・・・大尉、これを・・・」

手渡されの放射能の上昇を示すガイガーカウンターだった。
今までほとんど反応がなかったので忘れていたが、ここに来て微量だか放射能濃度が上がっているようだ。

「そういえばこの奥にあるんだったな。許容被爆線量ってどれくらいだっけ?」
「今までは洞窟が天然の防護壁になって、放射能被害を抑えていたのかもしれません。」
「或いは九年のノーメンテで遂にガタが来たのかだな。」

湯大尉は、ふとこんな都市伝説を思い出していた。
日本と一緒に転移してきた千島列島と樺太のロシア人達は、日本からの援助と引き換えに千島列島と南樺太を返還し、北サハリンに引き上げていった。
陸自第5旅団は大幅な増強を受け第5師団に再建され、管轄を千島列島に移して各島の調査に乗り出した。
中千島の新知島に駐屯の調査に来た第5施設大隊は、同島で旧ソ連時代に建設された潜水艦隊基地を発見したという。
同大隊がその後、何を発見したのかは知らないが基地周辺は民間人等の立ち入り禁止区域に指定された。
一説によると、放棄されていた旧ソ連の潜水艦を日本が手に入れたのではないかと言われている。
だが1994年以来放棄されていたその原子力潜水艦は小規模だが放射能漏れをおこしていたという。
洞窟をさらに奥に進み、洞窟内の海面に浮かぶ『長征7号』の姿を確認した湯大尉はこの艦を持ち帰っていいのか疑問を覚えてきた。
銃声が段々大きく聞こえてきた。
だいぶ押し込まれているのだろう。
マーマン達の鎧や盾は確かに頑丈だが、仕留めることは難しくない。
だが狭い洞窟内、積み重なった死体自体が魚肉の壁となって銃弾を防ぎ、その屍を乗り越えながらマーマン達が前進してくるのだ。
もはや全滅は時間の問題と覚悟せざるをえない。
そこに指揮官として、胸に装着していた秋葉原で購入したトランシーバーが通信を受信する。

「こちら成竜1の王少尉、聞こえるかどうぞ?」

「湯大尉だ。成竜1、作戦は失敗だ。
退却して新香港の指示を仰げ、どうぞ。」
「成竜1、その命令に対し、意見具申。
我々は自衛隊と合流した、どうぞ。」

その言葉に湯大尉は希望を取り戻す。

「成竜1、現在位置で指示を待て。」

締めの言葉を言わずに湯大尉は、フィリップやボルドーを呼び出した。


陸上自衛隊
偵察小隊
赤井一尉率いる陸自偵察小隊は行軍中に、銃架や窓から射撃しながら山道の坂道をバックしてくる三菱パジェロ2台を発見する。
所属は車体に書かれた『新香港武装警察』の漢字で確認。
追跡しているのが数百体のマーマンだと理解すると、戦闘開始の号令を掛ける。
ストライカーICV(兵員輸送車)2両の40mm擲弾発射器Mk 19が火を吹き、武警車両に迫っていたマーマンの一群を粉砕する。
こちらに気がついた別の一群が、陸自側に進軍してくるがマーマンは山登りが余り得意で無いらしく歩みは遅い。
既に森の中に布陣していた偵察隊隊員達は、山道に密集しているマーマン達にM16の弾丸を集中させる。
山道をバックし続けてきた武警隊員達も車から降りて、40mm擲弾発射器Mk 19で散り散りになったマーマンを狩っていく。
マーマン達は銃弾の攻撃に訳もわからずに右往左往し、身を伏せる術も知らない。
巨大な貝殻で造った鎧や盾も最初の銃弾は受け止めるが、2発目、3発目と削られていき粉砕され、屍となっていく。
そこかしこで、手榴弾が爆発する音が響き渡る。
あまりの派手な浪費ぶりに、赤井一尉は弾薬の残量が心配になってきた。
ちょうど、木陰で射撃をしていた酒井二尉に話し掛ける。

「ちょっと数が多いな。
なんだってこんなに海の種族が陸地に集まってるんだ?」
0088創る名無しに見る名無し垢版2018/06/13(水) 00:46:48.87ID:NWj3tL1r
「異常ですね。
何か連中にも譲れないものがあるんじゃないですか?」

ようやく逃走をはかるマーマンは無視して、前進してくるマーマンを掃討していった。
掃討後に合流した王少尉から事情を聞き出すことになる。

「洞窟と無線は繋がるのか?
その魚雷を爆破する作戦はこちらが引き継ぐ。
洞窟内の人間は原潜に乗り込み、立て籠って崩落に備えろ。」

準備の間にフィリップから得た情報もトランシーバーで伝えられ、作戦に組み込まれていく。
赤井一尉と酒井二尉は状況の確認を行う為に山裾まで徒歩で降りていく。
双眼鏡から確認すると、シーサーペントは陣幕から魚雷を一本くわえるところだった。

「40mmは陣幕を狙え。
AT4 (携行対戦車弾)は直接、シーサーペントの魚雷を狙え。
酒井、蛇使いとやらは確認出来たか?」
「ターバンを頭に巻いて、法螺貝吹いてる奴がいます。
たぶんあれでしょう。」

3名の隊員が、在日米軍から購入したAT4 (携行対戦車弾)を準備する。

「貝殻で造った王冠みたいのを被った奴もいるな。
あいつが指揮官か。
まとめて吹き飛ばしてやる。」

マーマン達もまだ洞窟入り口付近を中心に500は陣取っている。
山道から40mm擲弾が連続で発射される。
山裾からはAT4 (携行対戦車弾)が3発。
陣幕の中に吸い込まれる40mm擲弾が着弾すると土煙が巻き上がり、直後に魚雷四発を誘爆させる。
大爆発の炎が周囲のマーマンの大軍を飲み込み、生き残った者達も衝撃波で立っていられるものはいない。
照準器で狙いを定められたシーサーペントがくわえる魚雷は最初の一発目のAT4 (携行対戦車弾)が直撃して爆発し、頭を完全に吹っ飛ばす。
続いて2発目、3発目が着弾して、シーサーペントの巨体を爆発で切り裂いていく。
炎上したシーサーペントの無数の肉片がマーマン達に降り注ぐ。
近くにいた蛇使いも巻き込まれて潰されている。

「掃討戦に移行する。
弾薬が無くなるまで殺れ。
海に逃げる奴は無理にやらなくていい。」

森林を利用して隠れ潜んでいた偵察隊員達は、逃げ惑うマーマン達に向けて引き金を引き続ける。


『長征7号』艦内
戦略原子力潜水艦内部に逃げこんだ湯大尉、フィリップ、ボルドー一行は、巨大な爆音の後に岩や土砂が『長征7号』に降り注ぐ音を不安げに聞きながら座り込んでいる。

「天井崩れたりせんじゃろうな?」

フィリップの言葉はこの場の全員の気持ちを代弁している。
だが湯大尉はそれを認めるわけにはいかない。
誰かがパニックを起こして馬鹿をやらかさないように士気を鼓舞する必要は感じていた。
今は呉中尉が艦内を点検しているので、湯大尉が説明の為に立ち上がる。

「この艦は海中を何百メートル沈んでも大丈夫に出来ている。
安心してくれ。」

あまり海軍艦艇の知識に付いては自信がない。
拙い説明で伝わったか不安は残る。
0089創る名無しに見る名無し垢版2018/06/13(水) 00:54:07.97ID:NWj3tL1r
「なんと最初から沈むことを前提に造られた船なのか?
頼りないのう・・・」

フィリップの指摘にボルドーは神に祈り始め、イーヴは自決を試みみようとして、周囲に抑え付けられている。
その光景に湯大尉も天を仰ぎ見ていた。
武骨な天井とパイプしか見えなかったが・・・
呉中尉が艦内にあった防護服を着て現れると、全員が艦の角に身を寄せて固まる。
防護マスクを脱いだ呉中尉は、呆れた顔で聞いてくる。

「大陸の人間は潜水艦について知らないんですか?」
「大陸の海軍は潜水艦を探知することも出来ずに殲滅されたからな。情報としては知ってても、実物を見たことがあるのはここの連中が最初じゃないかな?
新香港海警局も保有してないからな。
今までは・・・ところで放射能漏れはどうなった?」

「原子炉に通じるパイプが軽く傷ついて小さな穴が開いてました。今は塞いでるから大丈夫ですよ。まあ、応急処置ですが。」

そう言って右手に持ったガムテープを見せてくる。
それを見た瞬間、湯大尉は呉中尉に向けて拳銃の銃口を向けた。

「いや、詰め物を固定するのに使っただけですよ?
隔壁もちゃんと閉めましたから・・・」


陸上自衛隊
偵察小隊
赤井一大尉は偵察隊員と武警隊員10名が洞窟の入り口に到達した。
マーマン達の掃討はほとんどは死亡している。
だか王冠を頂く大柄のマーマンが巨大な三ツ又の矛をこちらに向けている。

マーマン達の王であろう。
すでに傷だらけて体の至るところが流血している。

「オマエ達モアノ船ヲ求メテキタノカ・・・」
「人の言葉がわかるか・・・その通りだ。
お前達にはあの艦は何の価値もあるまい。
なぜ、こんな戦いになった?」
「アノ船ハ我ラノ王国ノ入リ口ニ鎮座シ塞イダ。
我ラハタダ王国ニ帰リタカッタダケダ。」

なんという無駄な戦いだったのかと赤井は愕然とする。

「我々はあの艦をどかして持って帰ろうとしただけだ。
無駄な戦いだったな。」

「ソウカ、多クノ同族ニ助ケヲ求メ、命ヲ失ワセテシマッタナ。
ケジメヲ・・・」

トライデントを構えて、王は自衛隊員達の前に突き進んでくる。

自衛隊隊員達は誰も撃てなかった。
たが王は一太刀の前に斬り伏せられた。

「遠からんもの音に聞け!!
我こそは、ノディオン前公爵フィリップ!!
先帝陛下より賜りし宝剣にて、敵王撃ち取ったり!!」

『長征7号』から出てきたフィリップ、ボルドー、湯大尉達だ。
0090創る名無しに見る名無し垢版2018/06/13(水) 00:59:41.45ID:NWj3tL1r
「日本軍諸君。
援軍大儀であった!!」
「父上、もう少し空気をお読みください。」


日本国直轄領
新京特別区
大陸を統括する総督府のある新京は完全に人口的に造り出した町だ。
現在では皇都が灰塵と化したことにより王都に次ぐ規模を誇る都市となっている。
南区には自衛隊の第16師団の司令部が置かれ、第32普通科連隊、第16特科連隊が駐屯して防衛を担当している。
そして貴族達に賦役を命じて建設した巨大な外壁が新京を守っている。
港湾部には日本本国に食料や鉱物資源を送り込むための大規模な港が建設された。
また、備蓄倉庫、工場、労働者の為の住宅地を形成するコンビナートとなっている。
空港までここに作られているので、自治体の名称は港区になっている。
文字通りの意味で日本の生命線である。


新京国際空港にチャーター機で訪れて新香港からやってきた林主席は、新香港武装警察長官常峰輝武警少将を随員に駐新京新香港領事館職員に用意された馬に牽引されるキャンピングトレーラに乗り込む。
通称、キャンピングキャレッジ、もしくは家馬車と呼ばれる最近イチオシの馬車兼住居の車両だ。
内部は応接仕様になっており、林主席と常少将はソファーに座りながら領事館職員から渡された新聞をテーブルに広げて目を通していく。

『日本人大陸移民210万人突破!!本国人口1億千九百万人時代の到来!!』

これは論評する気は無いので、次の記事に目を通す。

『百済市の市長選出。課題は45万人高麗国の大陸への窓口になれるか?』

高麗国は日本と一緒に転移してきた旧大韓民国の巨済島、南海島、珍島の3島が日本に観光や仕事でに来ていた南北朝鮮人15万人を取り込んで建国した国だ。
その高麗国も大陸に進出してきた記事だ。
百済市も南部貴族の港町を接収して出来た町だが、現在の住民は近代的な生活をおくれないと批判が政権に殺到しているらしい。

『北サハリン、日本企業との提携で豊原市から稚内までのパイプライン開通。
近日中にサハリン3の開発に着手。』

北サハリンの基幹事業の油田開発は、日本に輸入が増加することになる。
日本本国は既に一般乗用車はほとんど走っていない。
だがようやく人口九百万の北海道だけは、転移直後レベルまで回復する見通しとなった。
高い食料生産が日本で最も裕福な地としてな地位に押し上げたのだ。

「次は我々の東シナ海油田だな。
沖縄経済と結び付き、日本から見放されないようにしないといけない。」


『新香港政府、ハイライン侯爵領への貿易港建設の契約』

最後のは『長征07号』を崩落した洞窟から運び出す為に結ばされた契約だ。
港の建設には侯爵領の住民が雇われる。
ノディオンを追放された住民への謝罪と公共事業の意味も込められている。

「なかなか痛い契約だったが、将来に期待させてもらおう。
地球的な港では無く、この大陸のレベルに合わせたものとは日本からも言われてるからな。」
「しかし、『長征07号』は惜しかったですな。
損傷が酷くて、潜水が不可能とは、皮肉が聞いています。」

まったく、常峰輝武警少将の言う通りで、修理の目処さえ立たない有り様だ。
核兵器は日本に引き渡すのは取り決め通りだったが、『長征07号』を新香港の戦力として期待していたのだ。

「まあ、他にも使い道は色々あるだろう。
電力事情の多少の足しにするとか、ミサイルのプラットホームとかな。」
0091創る名無しに見る名無し垢版2018/06/13(水) 01:02:37.23ID:NWj3tL1r
そこはこれから官公庁が集中する中央区にある大陸総督府の城での会議で決められることになる。
大陸総督府の城には連日のように大陸各所から貴族や街の代表者が陳情に訪れている。
開発の誘致や日本人とのトラブルの裁定、本領安堵の免許更新、再発行、モンスター退治の自衛隊の出動の要請など多岐に渡る。
総督府の執務室には多数のファンタジー小説やオカルト雑誌が本棚を埋め尽くす。
少しでも現状を理解してもらう為と頭を柔らかくしてもらう為だ。
他には江戸幕府に関する資料が本棚の一角を占めている。

「まさか、首獲りの恩賞を求められるとは思ってなかったな・・・」

大陸に存在する統一国家である王国を傀儡にする男、秋月春種総督府は机の上で頭を抱えている。
新香港の主席との会談などより気が重くなる。
何しろハイラインの代表がこの部屋にこれから生首を持って来るというのだ。
日本の古い文献を漁り、このような文化があったことを知られてしまったのだ。

「今後もこのような事態が続いたらどうしましょうか・・・部屋が生首で溢れるような事態は、ちょっと避けたいのですが・・・ああ、ここがよろしいかと。」

秘書官秋山も困り顔で書類を渡してくる。

「元帝国皇族天領アンフォニーか。
男爵領になるのかな?
ハイライン侯爵領からも比較的近くて、将来的な南北線の駅建設の候補地の一つか。
まあ、申し分ないんじゃないかな?
地下資源に関してはどうだ?」
「亜鉛、石炭、鉛の二号鉱山。銅に関しては三号鉱山の採掘が開始されています。現在は第6鉱山開発地域に指定されてました。
これは総督府直轄ですが、鉱山町に関する利権はアンフォニー領統治機関に委ねられるでしょう。」

数字の割り振りはこの九年で見つり、日本の管理下になった鉱山の順番である。
ちなみにアンフォニーが現在の調査対象としては最新のものだ。
南北線は南部地域に植民都市百済との間に引く列車の一つだ。
首一つの恩賞として、ノディオン元公爵に与える隠居地としては惜しくも無い。
ハイライン侯爵の申請によれは、将来的にこの新京に留学中の妹に分家として相続させる予定となっている。
公安からの報告では、その妹君は親日で進歩的らしい。

「進歩的という言葉に多少違和感を覚えるが承認しよう。
安堵状の手配は?」
「完成しております。」
「よろしい。
現地の総督府支所と駐屯の第六分遣隊への連絡はよろしくな。
しかし、・・・やっぱり生首は勘弁してくれないかな・・・」


大陸総督府の城門に到着した林主席と常武警少将は家馬車から降りたところで度肝を抜かれる。

「新香港主席林修光閣下とお見受けいたします。
私はハイライン侯爵家の長女ヒルデガルドと申します。
この度は、父が新香港武装警察への援軍並びにマーマン王を討ち取った功績を認められてハイラインの代表として、大陸開発院に参上仕りました。
主席閣下とも御同席して頂ければ幸いなのですが、如何でしょうか?」

林主席としても金髪の美少女と同行することに依存はない。
ハイライン侯爵家と新香港の親密ぶりを日本側にアピールする良い機会でもある。
問題は人力車から車夫に手を引かれて降りてくる美少女ヒルデガルドの従者が、銀の皿に乗せられたマーマン王の生首を持っていることだろう。
ある程度の経緯を聞いているが、実際に見せられるとドン引きしてしまう。

「ご挨拶痛み入ります。
麗しき御令嬢と同行出来ることに依存はありません・・・ところで、その首は例の?」
「はい、マーマン王の御首に御座います。
ハイラインより、塩漬けにされて日本の宅急便で送られてきました。
総督閣下に献上する為に持参した次第であります。」
0092創る名無しに見る名無し垢版2018/06/13(水) 01:11:09.34ID:NWj3tL1r
「そうなのですか?
では、失礼して先に謁見させて頂きますわ。
主席閣下もまたのちほど・・・」

ヒルデガルドが職員や警備員を騒然とさせながら城門に入っていくのを見送り林主席は決断する。

「総督との会見は明日にしてもらおう。」
「閣下、お気付きでしたか?
あの従者と車夫、日本人でしたぞ。」

気力の抜けて脱力していた林主席に常少将が注意を促す。

「ふむ、何者か調べておけ。」

ハイライン侯爵領
海上自衛隊
多目的支援艦『ひうち』
「牽引ワイヤーロープ固定!!」「曳航装置、正常作動。」
「『長征07号』、岸から離れました。」

曳航装置は、航行不能となった船舶をワイヤーロープで接続し港や修理地などへ牽引し航行するための装置である。
多用途支援艦『ひうち』の曳航装置は、補給艦『ましゅう』や護衛艦『みねゆき』などの大型艦を曳航した実績を持っている。
乗員からの報告に艦長の明智三佐は満足そうに頷く。
海上にはこの作業の為に第16施設大隊を運んできた輸送艦『おおすみ』と、近海を警戒している護衛艦『しらね』が姿を見せている。
護衛艦『しらね』は転移前に除籍後舞鶴東港に係留保管され、標的艦となる予定であったが、転移後の戦力不足から現役に復帰。
再び偽装を施されて、新京地方隊の一翼を担っている。
『長征07号』、新香港海警局に入局して昇進した呉定発大尉が臨時の艦長代理として乗り込んでいる。
なにしろ新香港で潜水艦乗務経験者を集ってみたが二人しかいなかった。
彼等を加え、呉大尉は貴重な新香港サブマリナーとして、後進の教育にあたることになっている。

「もっとも本物の潜水艦なんて、手に入るのかね?」

呉大尉自体はあまり期待していない。
だが再就職出来たことには素直に喜んでいる。
『長征07号』は沖合いに停泊するフリゲート『常州』と合流して新香港に向かうことなる。


『長征07号』が着底していた場所をどけると全長100メートルを越える岩穴が海底に存在した。
『長征07号』はちょうどこの海底の岩穴にすっぽり嵌まっていたらしい。
海上自衛隊新京地方隊からかき集めた潜水士達が王国の入り口に侵入する。
途中で海底洞窟の方向が代わり、水の無い地底洞窟に到達する。
そこで彼等が目にしたものは、三千人規模が住んでいたと思われる岩を削って造られたと思われる海底都市と白骨化したマーマンの遺体だけだった。


「共食いの形跡が見られたそうです。
他にも座礁船から運びこまれたと思われる生活物資、財宝が確認されました。
何年も閉じ込められ、食料が尽き、死の王国と化したようです。」

撮影された映像をみせながら、ハイライン家の屋敷で赤井一尉が鎮痛な面持ちで探索の結果をボルドーとフィリップに報告する。

「いずれは縦穴を掘って、兵や冒険者を送って探索しよう。
財宝の権利はこちらで良いのかな?」

だが即物的なボルドーの言葉に赤井は頷く。

「財宝に関してはこちらは権利を放棄します。
あと、縦穴を掘るのは慰霊碑の建設の資材調達のついでまでですよ。」
「どうせなら祠や神社とやらも造っていかんか?」

フィリップの提案に赤井は考えてみる。
0094始末記垢版2018/06/15(金) 16:14:52.66ID:GoWIy/vZ
とりあえず5話まで終わり
0095創る名無しに見る名無し垢版2018/07/03(火) 18:16:48.63ID:f1dClnnX
H22
0097創る名無しに見る名無し垢版2018/10/17(水) 14:29:22.58ID:ZU7x6aHX
中学生でもできるネットで稼げる情報とか
暇な人は見てみるといいかもしれません
いいことありますよーに『金持ちになる方法 羽山のサユレイザ』とはなんですかね

L34
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