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「大丈夫ですか?」
その声に二人が見上げると、そこには心配そうに覗き込む若いスーツ姿の男が立っていた。
我に返った鳴滝は立ち上がって周囲を見渡したが、既に飛鳥と名乗った女の姿は消えていた。
「あすか……何者だ……」
その鳴滝の呟きを、道路を埋め尽くす車のエンジン音とクラクションが掻き消した。
「なぁ……若月。どう思う?」
「どう思うって、何が?」
親切に声を掛けてくれた若い男へと笑顔で会釈した後、黒いキャップの女は鳴滝の問いに問いで返した。
「あの子だよ」
「危ない奴に決まってるじゃない」
あっけらかんと答えを返したこの女の名は、若月佑美。古くから代々伝わる祓い屋の家系に生まれた女で、それだけにいくつもの修羅場を潜り抜けて来たらしく、その辺の男よりは度胸があった。
「君が危ないって言うぐらいだから、相当だな」
「綺麗な花には棘があるんだよ」
そう言った若月佑美は、壁の穴に残された薔薇へと視線を向けていた。
「そうだよな。だから君には棘が無いんだな」
「…………どう言う意味?」
その問いを避けるように、鳴滝はひとり歩き出していた。



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