ここで勉強させて頂いている一人として、
ここが無くなるのは寂しいので燃料を投下します。
大昔、厨二病全開だった頃に書いていたサイキックホラー?の一部です。今、書いているものに取り入れたいので、酷評よろしくお願いします。
羽流(はねる)→色紙を使う符術師
景雲→祓屋
その1
それは静かな午後だった。
聞こえてくるのは風にそよぐ木々の葉の僅かな揺らぎのみ。
参道へと続く階段の中程に座り、誰を待つと言うわけでもなく、淡い薄緑色の着物姿の女は小さな鶴を折っていた。
その脇には、様々な色紙で折られた鶴が無造作に置かれてある。
どれ程の時をここで過ごしているのか。
木々の葉を揺らした風が、鶴たちを通り抜けた時、階段を上がる男が視界に入って来た。
自らをを見上げるその男の顔は、陽射しのためか目を細めているものの敵意のあるものではない。
男はそのうち階段をひとつ踏み外して、右側によろけた。
その姿に、女は笑みを浮かべた。よく分からない男だ。
「こんにちは。羽流さん」
男が女の名を呼んだ。
「景雲さん……でしたかしら?」
「はい。先日はお騒がせしまして、申し訳ありませんでした」
「あら、貴方が謝る事でもないでしょうに」
そう言うと、羽流はゆっくりと立ち上がった。
「嵯峨見は留守にしておりますが」
「そうでしょう。お忙しい人でしょうから。それより、今日は貴女自身にお尋ねしたい事がありまして」
「あら、何かしら?」
当然、嵯峨見や春香の件について聞いてくるものと身構えていただけに、少し拍子抜けしてしまった。
「色を織り交ぜた符術と言うのは珍しい。私が知っている限りでは、これまでに一人しか知らない」
「ただのお遊びみたいなものですよ」
そう言いながら、羽流は再び笑みを浮かべた。
「貴女は何故、ここを護っているんですか?護るべきものは、もうこの神社には無いんじゃありませんか?」
景雲は階段に置かれた幾つかの折鶴のうちのひとつを手に取り、羽流に背を向けて階段に座った。
「そうだとしても……結果的に護る事になるのよ。もう、お分かりなんじゃありません?」
「やはり、そうでしたか」
景雲は左の手の平に乗せた折鶴を空にかざした。穏やかに青く澄んだ空に、何かを見ているかの様に。
「貴方は何者なの?」
不意に羽流が問いかけた。
「私ですか?そうですねぇ……狐と狸の化かし合いに巻き込まれた猫みたいなもんですかねぇ……」
「あら、猫さんだったの?じゃあ化け猫さんね」
「厳しいですね。化け猫なんて」
「他人を狐呼ばわりするからですよ」
「いえいえ、どちらかと言うと羽流さんは狸の方だと思います」
「まぁ、狸の方だったの」
そう言うと、羽流は笑顔を見せた。