X



トップページ創作発表
565コメント719KB
ロスト・スペラー 18
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
0001創る名無しに見る名無し垢版2018/02/08(木) 18:42:15.87ID:S22fm2qA
夢も希望もないファンタジー

過去スレ

https://mao.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1505903970/
http://mao.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1493114981/
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1480151547/
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1466594246/
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1455282046/
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1442487250/
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1430563030/
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1418203508/
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1404902987/
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1392030633/
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1377336123/
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1361442140/
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1347875540/
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1334387344/
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1318585674/
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1303809625/
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1290782611/
0002創る名無しに見る名無し垢版2018/02/08(木) 18:45:07.10ID:S22fm2qA
今から500年前まで、魔法とは一部の魔法使いだけの物であった。
その事を憂いた『偉大なる魔導師<グランド・マージ>』は、誰でも簡単に魔法が扱えるよう、
『共通魔法<コモン・スペル>』を創り出した。
それは魔法を科学する事。
魔法を種類・威力・用途毎に体系付けて細分化し、『呪文<スペル>』を唱える、
或いは描く事で使用可能にする、画期的な発明。
グランド・マージは一生を懸けて、世界中の魔法に呪文を与えるという膨大な作業を成し遂げた。
その偉業に感銘を受けた多くの魔導師が、共通魔法を世界中に広め、現在の魔法文明社会がある。

『失われた呪文<ロスト・スペル>』とは、魔法科学が発展して行く過程で失われてしまった呪文を言う。
世界を滅ぼす程の威力を持つ魔法、自然界の法則を乱す虞のある魔法……。
それ等は『禁呪<フォビドゥン・スペル>』として、過去の『魔法大戦<スクランブル・オーバー>』以降、封印された。
大戦の跡地には、禁呪クラスの『失われた呪文』が、数多の魔法使いと共に眠っている。
忌まわしき戦いの記憶を封じた西の果てを、人々は『禁断の地』と名付けた。


ロスト・スペラー(lost speller):@失われた呪文を知る者。A失われた呪文の研究者。
B(俗)現在では使われなくなった呪文を愛用する、懐古趣味の者。偏屈者。
0003創る名無しに見る名無し垢版2018/02/08(木) 18:46:26.56ID:S22fm2qA
魔法大戦とは新たな魔法秩序を巡って勃発した、旧暦の魔法使い達による大戦争である。
3年に亘る魔法大戦で、1つの小さな島を残して、全ての大陸が海に沈んでしまった。
魔法大戦の勝者、共通魔法使いの指導者である、偉大なる魔導師と8人の高弟は、
唯一残った小さな島の東岸に、沈んだ大陸に代わる、1つの大陸を浮上させた。
それが現在の『唯一大陸』――『私達の世界<ファイセアルス>』。
共通魔法使い達は、8人の高弟を中心に魔導師会を結成し、100年を掛けて、
唯一大陸に6つの『魔法都市<ゴイテオポリス>』を建設して世界を復興させた。
そして、共通魔法以外の魔法を『外道魔法<トート・マジック>』と呼称して抑制した。

今も唯一大陸には、6つの魔法都市と、それを中心とした6つの地方がある。
大陸北西部に在る第一魔法都市グラマーを中心とした、砂漠のグラマー地方。
大陸南西部に在る第二魔法都市ブリンガーを中心とした、豊饒のブリンガー地方。
大陸北部に在る第三魔法都市エグゼラを中心とした、極寒のエグゼラ地方。
大陸中央に在る第四魔法都市ティナーを中心とした、商都のティナー地方。
大陸北東部に在る第五魔法都市ボルガを中心とした、山岳のボルガ地方。
大陸南東部に在る第六魔法都市カターナを中心とした、常夏のカターナ地方。
共通魔法と魔導師会を中心とした、新たな魔法秩序の下で、人々は長らく平穏に暮らしている。
しかし、今――
0004創る名無しに見る名無し垢版2018/02/08(木) 18:46:57.19ID:S22fm2qA
……と、こんな感じで容量一杯まで、設定を作りながら話を作ったりする、設定スレの延長。
時には無かった事にしたい設定も出て来ますが、少しずつ矛盾を無くして行きたいと思います。
0006創る名無しに見る名無し垢版2018/02/09(金) 18:56:51.43ID:OdTAtG0g
コバルトゥスの冒険


第五魔法都市ボルガにて


精霊魔法使いの冒険者コバルトゥス・ギーダフィは、旧い魔法使いが遺したと言われる、
財宝の在り処を示した秘密の地図を、怪しい浮浪者から受け取った。
この浮浪者は、ある魔法使いから地図を託されたのだが、自分で財宝を探し当てたくとも、
その力が無かった。
そこで「話に乗ってくれそうな腕利きの人物」を探していたと言う。
煽て上げられて好い気になったコバルトゥスは、何事も行動に移さなければ始まらないと、
地図に記された財宝の在り処へと向かう事にした。
財宝の在り処の周辺図と思しき物が描き記された地図の端には、以下の一文が添えられている。

「マンリガタリから西に、山を越え、川を越え、谷を越え、森を越え、断崖の洞穴に入る」

マンリガタリとはボルガ地方の西部にあるマンリガタリ町の事だ。
その西には確かに山があるが、山の向こうに何があると言う話は聞かない。
最新の町の周辺図を見ても、そこは山林しか描かれていない。
それでもコバルトゥスは浮浪者が持っていた地図を信じた。
伸るか反るか、危険を恐れないのが冒険者。
冒険心を失って何もしない者には、その資格は無いのだ。
0007創る名無しに見る名無し垢版2018/02/09(金) 19:03:30.58ID:OdTAtG0g
ボルガ地方西部、山林に囲まれた秘境の洞窟にて


コバルトゥスは精霊の導きを頼りに道無き道を進み、山を越え、川を越え、谷を越え、森を越え、
遂に小さな洞窟を発見した。
とても徒歩では到達出来ない断崖の高い位置に、大人が入れる程の洞穴が口を開けている。
コバルトゥスは風の魔法で跳躍し、洞穴の前にある3平方身の広い足場に上がった。
そこでは意外な人物が、彼を待ち構えていた。

 「おっ、コバギじゃないか!
  こんな所に何の用なんだ?」

それは旅商の男ラビゾー。
中肉中背の中年男性で、コバルトゥスとは長い付き合いだ。
コバルトゥスは吃驚して尋ね返す。

 「先輩こそ!」

 「僕は人の付き添いで」

2人が話していると、洞穴から新たに1人が姿を現した。

 「どうしたんですか、ラビゾーさん?
  こんな所に誰か……」

それを見て、コバルトゥスは二度吃驚。

 「君は、カシエ!?」

 「バル!!」

第三の人物はカシエ・フラシャルデン。
一時コバルトゥスと旅をした事がある女性だ。
「バル」とは「コバルトゥス」の愛称の一つ。
約2年振りの偶然の再会に、カシエの方も驚いていた。
0008創る名無しに見る名無し垢版2018/02/09(金) 19:11:37.08ID:OdTAtG0g
 「どうして、こんな所に!?
  いや、それよりも……、えぇい、何から聞けば良いのか!」

コバルトゥスの記憶では、カシエ・フラシャルデンは世間知らずで内気な女性だった。
一緒に旅をしたと言うのも、コバルトゥスが強引に彼女を口説いて連れ回した。
それが、「こんな場所」で何をしているのか?
混乱する彼に、カシエは笑顔で答える。

 「私、冒険者になったの」

 「何だってぇっ!?
  何で又!?」

コバルトゥスは仰天し、目を剥いて大きな声を上げた。
カシエは冒険者らしい砂色の「狩猟家」の服装に反して、凡そ「冒険者」とは言い難い生白い肌に、
鮮やかな朱色の長い髪を纏め上げている。
このアンバランスさが、如何にも駆け出しと言う風。

 「貴方と冒険して分かったの。
  私の人生に足りなかった物が何なのか!」

 「それが『冒険』だって言うのか?」

 「ええ、その通り!!
  今、私は生きている!」

気弱だった女の子が、数年で逞しくなった物だと、コバルトゥスは感心した。
彼は改めてラビゾーに向き直る。

 「それで、先輩は?
  何で、こんな所に?」

 「言ったじゃないか、付き添いだって」

 「そうじゃなくて、この洞窟が何なのか知ってるんスか?」

 「いや、知らない。
  財宝の洞窟らしいが、僕は雇われたんでなぁ」

 「――ってェ事は、カシエ!
  君が先輩を、ここに連れて来たのか!」

コバルトゥスがカシエを顧みると、彼女は素直に平然と頷いた。

 「そうよ」

以前の彼女からは想像出来ない行動力に、コバルトゥスは舌を巻く。
0009創る名無しに見る名無し垢版2018/02/10(土) 17:33:39.91ID:XkodYfGP
カシエは一々驚くコバルトゥスに、事情を話した。

 「ボルガ市で変な小父さんに地図を買わないかって言われてね」

コバルトゥスはラビゾーを一顧する。
ラビゾーは不快感を顔に表して言った。

 「僕じゃないぞ」

そんな2人の遣り取りを見たカシエは、苦笑して続ける。

 「財宝の隠し場所が記されてるって言うから、安かったし買っちゃった」

 「俺と同じって訳か」

コバルトゥスの発言を聞いて、カシエは尋ねた。

 「貴方も財宝を探しに来たの?」

 「ああ。
  それで、どうする?」

 「どうするって?」

彼の唐突な問いに、カシエは理解が追い付かず、尋ね返した。
コバルトゥスは小さく笑う。

 「同じ目的を前にして、冒険者が2人」

彼はラビゾーに目を遣る。
ラビゾーは眉を顰めて一言。

 「僕は違うぞ」

コバルトゥスは真顔でカシエに向き直った。
0010創る名無しに見る名無し垢版2018/02/10(土) 17:35:17.34ID:XkodYfGP
冒険者同士は仲間であり、商売敵でもある。
同じ目的を前にすれば、協力するか、敵対するか選ばなくてはならない。
しかし、カシエが理解していない様子だったので、コバルトゥスは先輩振って教授した。

 「冒険者同士は仲間、そうでなけりゃ敵だ。
  俺と君は同じ財宝を狙ってるんだぜ?」

 「じゃあ、競争する?」

カシエが然して驚きもせず、普通に尋ねて来たので、コバルトゥスは逆に驚かされる。

 「競争……。
  いや、競争しても良いけどさ、君は冒険者と言っても駆け出しだろう?
  俺と競争して勝つ自信あるの?」

彼にも先輩冒険者としての矜持がある。
駆け出しの雛(ひよ)っ子に負ける気は更々無かった。

 「それは分からないけど」

 「そうだろう?」

勝負は止めておけと、コバルトゥスは暗に忠告する。
0011創る名無しに見る名無し垢版2018/02/10(土) 17:36:58.97ID:XkodYfGP
だが、カシエは聞かなかった。

 「でも、分け前が減るのは嫌かな」

 「それは嫌だろうけどさぁ……」

意外に強欲なんだなと、コバルトゥスは呆れる。
素人が欲張ると碌な事にならないのだ。
カシエは思案する素振りを見せた後、こう提案した。

 「7:3で、どう?」

 「……あのさ、念の為に聞くけど」

 「私が7」

 「正気か?」

幾ら何でも欲の皮が張り過ぎている、身の程知らずだと、コバルトゥスは憮然として溜め息を吐く。
それにも拘らず、カシエは真顔で強気に反論する。

 「先に探索を始めたのは私。
  バルは後発の分、私より不利な筈」

コバルトゥスと別れてからの約2年、彼女に何があったのか?
世間の荒波に揉まれて強くなったのか、今の態度が本性なのか……。
そこまで言われては、コバルトゥスも大人しく従えない。

 「君の考えは、よぉく解った。
  良いだろう!
  どちらが先に財宝を見付けるか、勝負だ!」

こうしてコバルトゥスはカシエと勝負する事になった。
0012創る名無しに見る名無し垢版2018/02/11(日) 18:00:14.20ID:YCUbLc5a
コバルトゥスを導いて洞窟内を探索し、カシエより先に財宝を見付けましょう。

コバルトゥス
探索1回目
調子:普通
耐久力:11
魔力:16
0013創る名無しに見る名無し垢版2018/02/11(日) 18:01:41.55ID:YCUbLc5a
コバルトゥスは勇んで洞窟に踏み込んだ。

 「行ってらっしゃーい」

先に洞窟から出たばかりのカシエは、呑気に手を振って彼を見送る。
それが「余裕」に感じられてならず、コバルトゥスは敢えて無視して歩を進めた。
洞窟の壁面が平らな所を見ると、内部には明らかに人の手が入っている。
それに幅も高さも共に1身半程度で、広さには余裕がある。
少なくとも、「天然の洞窟その儘」では無い。
洞窟に入って数身歩いた所で、下へ続く階段が見える。
階下は真っ暗で、外の明かりも入って来ない様だ。
コバルトゥスは魔法の灯火で周囲を照らし、階段を下りた。
暗闇が余り好きでは無い彼は、恐る恐る洞窟を行く。
湿った土と苔の臭いが漂う。
先ず、彼は魔法を使って、洞窟の全容を知ろうとした。

 (……精霊が感じられない。
  淀んでいる。
  嫌な空気だ)

しかし、精霊の気配がしなかった。
どうやら魔法的な仕掛けが、洞窟全体に施されている様だ。
カシエの余裕は、これが原因かも知れないと、コバルトゥスは考える。
ここでは彼の自慢の精霊魔法も、ある程度は制限される。


耐久力:10
魔力:16

【行動表判定】
0014創る名無しに見る名無し垢版2018/02/11(日) 18:05:13.99ID:YCUbLc5a
【通常】

流石に財宝を隠した洞窟だけあって、一筋縄では行かない厄介な場所だと認めたコバルトゥスは、
慎重に洞窟を進む。
階段を下りると真っ直ぐの通路が続いていた。
それなりに長いらしく、明かりが突き当たりまで届かない。

【洞察力判定】
0015創る名無しに見る名無し垢版2018/02/11(日) 18:13:30.96ID:YCUbLc5a
【失敗】

コバルトゥスは先の見えない洞窟の暗がりにばかり気を取られ、足元の警戒が疎かになっていた。
踏み込んだ足の下にある筈の、地面の感覚が無い。
これは落とし穴系の罠だ。
凡そ彼らしくない見落としである。
魔法が思う様に扱えないと言う心配から、感覚が鈍ったのか?

【機敏さ判定】
0016創る名無しに見る名無し垢版2018/02/11(日) 18:28:37.76ID:YCUbLc5a
【失敗】

洞窟に入ってから、どうも調子が狂っている。
何とか罠を避けたかったが、反応が遅れてしまった。
一瞬の遅れが命取りに繋がるのだ。
コバルトゥスは危機を脱しようと、懸命に足掻いた。

【魔力を消費して再判定】
0017創る名無しに見る名無し垢版2018/02/11(日) 19:10:13.70ID:YCUbLc5a
【成功】

コバルトゥスは隠し持っていた精霊石の力を引き出した。
突風が吹き、落とし穴に倒れ掛かる彼の体を押し返す。

 「あ、危ねぇ!」

踏み出した足を引き戻すと同時に、思わず独り言が漏れる。
落とし穴の中を確認すると、深さこそ半身以下で浅かった物の、底には短くも鋭い棘が幾本も、
上に向けて設置されている……。
中に落ちていれば、致命傷とまでは言わずとも、負傷は避けられなかったであろう。
コバルトゥスは冷や汗を拭いつつ、安堵の息を吐いた。
彼は気を強く持ち、落とし穴を避けて壁際を歩きながら、通路の先に進む。


耐久力:9
魔力:15
0018創る名無しに見る名無し垢版2018/02/11(日) 19:21:44.19ID:YCUbLc5a
数身進むと、通路の突き当たりが見えて来た。
更に進むと、右側に通路が続いている事が判る。
右折している様だ。
後ろを振り返ると、幽かに階段が見えるも、地上から離れたと感じる。
コバルトゥスは軽く首を横に振って、悪い想像を振り払った。
通路の突き当たりに、特に仕掛けは無い。
素直に右折するより他に無さそうだ。


耐久力:8
魔力:15
0019創る名無しに見る名無し垢版2018/02/12(月) 18:23:36.44ID:KTdc6H44
洞窟内は静まり返っている。
魔法の灯りを頼りにしている所為で、暗闇に目が慣れる事も無い。
聞こえるのは、自分の足音と呼吸音、そして服が擦れる音のみ。
それに不気味な程、何の気配もしない。
少し歩いた所で、コバルトゥスは又も突き当たりに出会(でくわ)した。
先程と同様に、右側に通路が続いている。
ここにも仕掛けらしい物は何も無い。
右折するより他に無さそうだ。


耐久力:7
魔力:15

【行動表参照】
0020創る名無しに見る名無し垢版2018/02/12(月) 18:25:05.59ID:KTdc6H44
【不利判定】

角を曲がって暫く歩いたコバルトゥスは、分岐路に差し掛かった。
彼の目の前には真っ直ぐ続く道と、左に折れる道がある。

【洞察力判定】
0021創る名無しに見る名無し垢版2018/02/12(月) 19:08:55.71ID:KTdc6H44
【成功】

どちらの道を進もうか、コバルトゥスは迷って足を止めた。

 (さて、どうするかな……)

そこで何気無く辺りの床や天井、壁を見ていると、右側の壁に不自然な穴が開いているのを発見。

 (これは……?)

コバルトゥスは穴の正面に立たない様に気を付けて、穴に近付く。
直径は1節程度。
試しに、短剣を穴の前に翳してみた。
直後、短剣に何かが当たり、その衝撃で短剣が手から離れ、転がってしまう。
カッと硬い音がして、何かが対面の壁に当たった。
灯りを向けると、小さな冷たい金属の輝きが反射する。
金属の針が壁に刺さっているのだ。

 (矢か!)

大きさからして、仮に罠に気付かず刺さっていた所で、致命傷にはならないだろうが、
毒が塗ってある可能性もある。

 (益々油断ならない所だな)

落とし穴に嵌まり掛けて、慎重になっていなければ、これに引っ掛かっていたかも知れないと、
コバルトゥスは警戒心を強めた。
0022創る名無しに見る名無し垢版2018/02/12(月) 19:16:52.02ID:KTdc6H44
同時に彼はカシエの心配をする。
この罠は何かが前が横切ると、即座に発射される仕組みになっている。
暗闇の中で、彼女は小さな射出口を発見する事が出来たのだろうか?
カシエは先に探索していたので、恐らく罠の事は知っているとは思うのだが……。

 (先には、もっと危険な罠が仕掛けてあるかも知れない。
  何としても彼女より先に行かないと)

コバルトゥスはカシエに対する競争意識より、先輩冒険者として彼女を守るべきだと言う思いが、
強くなっていた。


耐久力:6
魔力:15
0025創る名無しに見る名無し垢版2018/02/13(火) 19:05:23.53ID:kEUNRWfq
矢の罠を避けつつ、短剣を回収したコバルトゥスは、改めて2つの道を見比べる。
そして、余り時間を掛けずに真っ直ぐ進む道を選択した。
どちらの道が正しいのか判らないのだから、迷う事は無い。
そう割り切ったのだ。
少し進むと、又突き当たり。
今度は左側に通路が続いている。
右側は扁平な岩の壁で、特に見るべき物は無い。
コバルトゥスは左折して進んだ。


耐久力:5
魔力:15
0026創る名無しに見る名無し垢版2018/02/13(火) 19:06:53.22ID:kEUNRWfq
そこから真っ直ぐ行くと、更に下へと続く階段がある。
先の分岐路で左折した場合、何があったのかとコバルトゥスは気になった。
しかし、今から戻るのも面倒だと思い、取り敢えず階段を下りて、進めるだけ進もうと決める。
相変わらず、ここは生き物の気配がしない。
魔法的な仕掛けの所為で感覚が鈍っているのか、それとも本当に何も居ないのか……。
判るのは、陰気な土と苔の匂いのみ。


耐久力:4
魔力:15
0027創る名無しに見る名無し垢版2018/02/13(火) 19:08:00.87ID:kEUNRWfq
階段を下りた先には、2叉に分かれた道がある。
一応、ここが地下2階と言う事になるだろうか?
雰囲気は上の階と、そう変わらない。
行き成り罠があると言う事も無い。
分岐路は右と左。
左の道からは、微かに風が感じられる。
コバルトゥスの鋭敏な感覚を以ってしても、本当に風が吹いているのか、気の所為なのか疑う位、
微弱にではあるが……。
右の道からは、特に何も感じられない。
どちらも魔法の灯りが弱まる自身の周囲数身より先は暗闇で、何があるか見通せない。


耐久力:3
魔力:15
0030創る名無しに見る名無し垢版2018/02/14(水) 18:50:14.60ID:vrME2dTl
コバルトゥスは右の道を進む事にした。
少し歩くと、ここでも突き当たりに出会す。
道は左側に続いている。
これまで彼は何度も曲がり道を見て来た。
暗い洞窟内では、正しい方角も判らない。
普通の冒険者なら色々と道具を揃えるのだが、コバルトゥスは余計な物を持ち歩かない。
魔法で大抵の事は何とかなるので、重荷を背負うのは馬鹿らしいと考えているのだ。
この洞窟では、その魔法が余り利かないので、少し心配ではある。
道順さえ憶えていれば、地上に帰れる筈なので、心配は要らないと思うのだが……。

 (何があるか判らないからな……)

コバルトゥスは小さく息を吐き、心を強く持って左折した通路を行く。


耐久力:2
魔力:15
0031創る名無しに見る名無し垢版2018/02/14(水) 18:50:58.52ID:vrME2dTl
曲がり角の先は真っ直ぐな通路だった。
少しの間、罠を見ていないので、コバルトゥスは余計な事を考える。

 (どうせ、この先に罠があるんだろう……。
  楽観しては行けない。
  しかし、お宝にも巡り会えていないな。
  どうした事か……)

今までの分かれ道の先に、お宝があったかも知れないと考えると、コバルトゥスは気も漫ろだった。
だが、必ず財宝があったとは限らない。
単なる外れの道だった可能性もある。
寧ろ、そちらの可能性の方が高い。
カシエが先に探索しているのだから。
真に価値のある財宝は、幾度の困難を潜り抜けた向こう、洞窟の最深部に眠っている物なのだと、
コバルトゥスは自分に言い聞かす。


耐久力:1
魔力:15

【行動表参照】
0032創る名無しに見る名無し垢版2018/02/14(水) 19:51:06.94ID:vrME2dTl
【失敗】

暫く真っ直ぐな道を歩いていると、又々突き当たり。
今度は右側に道が続いている。
そろそろ罠があるだろうと、コバルトゥスは壁や床に不自然な所が無いか、熟(じっく)り観察した。
一見した所、罠らしき物は見当たらない。
奇妙な穴が開いていたり、或いは不自然な凸凹があったり、色の異なる場所があったり、
そう言う事は全く無い。

 (罠は無いのか?)

この洞窟では魔法資質が十全に働かないが、異様な魔力が感じられると言う事も無いし、
必ず罠があると決まっている訳でも無いのだから、通っても大丈夫だとコバルトゥスは判断した。
それが誤りだった。
0033創る名無しに見る名無し垢版2018/02/14(水) 20:13:37.28ID:vrME2dTl
角を曲がろうとした所で、コバルトゥスは魔力の流れを感じる。
その源は彼の持っている精霊石だ。
精霊石から魔力が漏出している。

 「何だ、こりゃぁ!?」

コバルトゥスは思わず声を上げた。
精霊石の魔力が床に吸い込まれる様に失われて行く。
彼は直ぐに魔力を吸う床から離れたが、遅きに失した。
それは丸で、水を注いだグラスを倒してしまったかの如く。
精霊石の魔力は、あっと言う間に空になってしまった。

 「はぁ……」

コバルトゥスは深い溜め息を吐いて、茫然とした。
そろそろ罠があると警戒していたのに、間抜けにも引っ掛かってしまった自分の愚かさが恨めしい。
どうすれば罠が見破れたのかと、後悔する。
目に見えて怪しい所は無かった。

 (――精霊か!)

コバルトゥスは閃く。
そう言えば、この場には精霊以前に魔力が全く感じられないと。
それが違和感の正体。
だからこそ、無意識に「何かある」と警戒していたのだ。
「魔力の流れが無い事」を、彼は「危険が無い事」と捉えた。
しかし、それは魔力が淀んでいた為では無く、魔力が全く無い為だった。
今少し彼が注意深ければ、判った事。
0034創る名無しに見る名無し垢版2018/02/14(水) 20:21:01.94ID:vrME2dTl
しかし、幾ら後悔しても遅い。
それにコバルトゥスは疲労を感じ始めていた。

 (頃合かな)

引き揚げるには良いタイミングだと、彼は前向きに考えた。
元々疲れて来たら帰ろうと思っていたのだ。
危険な罠がある以上、無理して進まない方が良い。
洞窟が一体どれだけ深いのかも判っていないし、こんな所で命を落としては詰まらない。
少し落胆しながらも、コバルトゥスは来た道を引き返す。


耐久力:0
魔力:0

【耐久力と魔力が尽きたので帰還】
0035創る名無しに見る名無し垢版2018/02/15(木) 18:22:35.74ID:66u4vM5i
幸い、帰り道で迷う事は無かった。
コバルトゥスは記憶力には自信がある。
罠の位置が変わったり、新しい罠が追加されていたりもしない。
コバルトゥスが洞窟から出ると、カシエが迎えた。

 「お帰りなさい、バル。
  どうだった?」

彼女の問いに、コバルトゥスは肩を竦めて見せる。
何も宝を手に入れられなかったと言う意味では、収穫無しである。
カシエは余裕の笑みを浮かべて、コバルトゥスと擦れ違い、洞窟に入って行く。

 「フフッ、私が勝っちゃうかもね?」

コバルトゥスは眉を顰めて振り返り、彼女を呼び止めた。

 「カシエ!」

 「何?」

 「……気を付けて」

足を止めて振り返ったカシエに、コバルトゥスは注意する様にと忠告する。
カシエは小さく笑って頷いた。

 「分かった」

罠のある危険な洞窟から、果たしてカシエは戻って来れるのか……。
今のコバルトゥスには、無事を祈る事しか出来ない。
0036創る名無しに見る名無し垢版2018/02/15(木) 18:26:31.37ID:66u4vM5i
コバルトゥスは洞窟の入り口から少し離れた所に居るラビゾーの傍に座って体力の回復を待った。
序でに、精霊石を取り出して、精霊力も回復させておく。
今回は珍しく、ラビゾーが自分からコバルトゥスに話し掛けた。

 「意外と早かったな」

そんなに直ぐに洞窟から出た覚えが無いコバルトゥスは、怪訝な顔をして尋ねる。

 「否々(いやいや)、結構長く潜ってた積もりなんスけどねェ……。
  どん位、時間経ってるんスか?」

ラビゾーは懐から時計を取り出して確認した。

 「んー、1角は経ってないだろうな。
  半角……も経ってないな、2針と少しか」

 「えぇっ、2針!?
  唯(たった)そんだけ!?」

驚くコバルトゥスをラビゾーは笑う。

 「どんだけ長く潜ってた積もりなんだよ」

彼の時計が正しい証拠に、太陽の傾きも余り変わっていない。

 (時空が歪んでる……?
  馬鹿らしい。
  そこまで大掛かりな物だったら、もっと精霊が騒いでる。
  俺の感覚が狂ってただけだろう)

コバルトゥスは事実を受け止め、強引に自分を納得させた。
0037創る名無しに見る名無し垢版2018/02/15(木) 18:34:43.30ID:66u4vM5i
コバルトゥスは暇潰しに、ラビゾーと話を続ける。

 「先輩、カシエと会ったのは、どこで?」

 「ボルガ市だよ。
  僕が旅商だと知って、付いて来て欲しいって」

ラビゾーの答にコバルトゥスは呆れ顔で言う。

 「そんで付いてったんスか?」

 「急ぐ用事があった訳でも無いし、報酬は貰えるし、悪い話じゃ無かったんでな」

 「で、何してんスか?」

 「何って、商売だよ。
  冒険に必要そうな物を用意して、売ってるんだ」

 「例えば?」

コバルトゥスはラビゾーの商売人らしい所を、見た事が無い。
仮にも自分より年上の男性に対して、本当に商売が出来るのかと疑っている。
ラビゾーは面倒そうな顔をして、大きなバックパックを開き、中の物を取り出して見せた。

 「携行食、飲み水、薬草、傷薬、方位磁針、紙、縄、提燈(ランタン)と油、『燐寸<トーチ・スティック>』、
  布、ロッド、他にもあるが、こんな感じの物だな」

商人を捕まえて道具を用意させる等、丸で昔の本格的な冒険者の様。
カシエは道楽では無く、本気で冒険者になったのだと、コバルトゥスは感心した。
0038創る名無しに見る名無し垢版2018/02/16(金) 18:47:52.63ID:BeIP2iSU
 「へー、中々本格的ッスねぇ……。
  先輩、俺にも呉れませんか?」

感心序でに、コバルトゥスはラビゾーに頼んでみる。
ラビゾーは快く頷いた。

 「良いよ。
  何が欲しい?」

 「んじゃ、先ず食い物を」

腹が減っては戦は出来ぬと、コバルトゥスは携行食を要求する。

 「1つ300MGだ」

携行食は手の平に乗る程度の箱に入った、棒状の『乾餅<ビスケット>』に似た『軽食<スナク>』。
1箱6本入りで、1食2本の1日分である。

 「えっ、金取るんスか?」

予想外だと言う顔をする彼に、ラビゾーは呆れ果てた。

 「当たり前だ。
  何で只で呉れてやらなきゃ行けない?」

 「えー……、でも、何時もは只で食い物分けてくれるじゃないッスか……」

 「これは『商品』だ。
  僕の私物じゃない」

 「吝々(けちけち)しなくても良いじゃないッスか」

 「吝嗇(けち)以前に、お前、今はカシエさんと勝負してる最中だろう?
  彼女は丁(ちゃん)と代金を払っているぞ。
  扱いは『公平<フェア>』じゃないとな」

ラビゾーに正論を言われて、コバルトゥスは反論出来ず、不満気に口を閉ざした。
0039創る名無しに見る名無し垢版2018/02/16(金) 18:49:17.81ID:BeIP2iSU
コバルトゥスは少しの間、黙っていたが、やがて思い付いて言った。

 「あっ!
  じゃあ、先輩、付けって事で」

 「誰が信用するか!
  お前、今まで一度も僕が貸した金を返した事が無いだろう!」

良い考えだと思っていたのに、即ラビゾーに否定されて、コバルトゥスは面食らう。

 「えっ、借金なんかしましたっけ?」

 「何度もしているぞ。
  小額だから直ぐに返すと言いながらな!」

自分に都合の悪い事は直ぐ忘れられる、実に都合の好い記憶力を持っているコバルトゥスは、
借金の事を悉(すっか)り忘れていた。
悄気るコバルトゥスを慰める様に、ラビゾーは言う。

 「紙と筆なら貸せるぞ」

 「えっ、要らないッスよ」

 「洞窟を探索するなら、地形とか記憶する必要があるだろう?」

 「俺、記憶力は良い方なんで」

 「じゃあ、借金の事も憶えてるよな?」

 「いや、それは全然……」

「こいつ何なんだ」とラビゾーは憤然とした表情で口を閉ざした。
0040創る名無しに見る名無し垢版2018/02/16(金) 18:50:46.16ID:BeIP2iSU
コバルトゥスは切り替えて、違う話を始めた。

 「話は変わりますけど、先輩、カシエの探索って、どの辺まで進んでます?」

ラビゾーは素直に答える。

 「幾らか財宝らしい物を回収していた。
  未だ洞窟全体を探索し尽くした訳じゃないみたいだけど」

 「地下何階まで行ってるんスか?」

 「確か、3階まで進んだと言ってたかな。
  僕は洞窟に入ってないから、どんな所かは分からんのだが」

そんなに差は開いていないと、コバルトゥスは安堵した。
探索が順調に進めば、追い付けるだろう。

 「あの洞窟、結構危険な罠があるんスけど、カシエは大丈夫なんスかね?」

 「罠があるとは言っていたけど、そんなに危険なのか?」

ラビゾーの表情が少し曇る。
彼もカシエが危ない目に遭う事を、好ましく思っていない。

 「即死はしなくても、重傷を負う位はあり得ますよ」

 「……コバギ、お前は大丈夫だったのか?」

唐突に自分の心配をされ、コバルトゥスは慌てる。

 「あ、あぁ、その……俺は平気ッスよ!
  これでも熟練の冒険者なんスから!」

落とし穴を見落としたり、魔力を失ったりと、危ない場面があった事は、見栄の為に言わなかった。
0041創る名無しに見る名無し垢版2018/02/16(金) 18:58:44.19ID:BeIP2iSU
間違えました。
>>39>>40の間には、以下の文章が入ります


沈黙が気不味くなって、コバルトゥスは自分から口を利く。

 「そう言や、先輩。
  あの『女の子<ロリータ>』は?」

彼は以前会った時にラビゾーが連れていた、女の子に就いて尋ねた。

 「今は家で留守番だ」

 「本気で拾った子を育てるんスか?」

 「ああ」

 「独りで?」

 「家族が居る」

 「やっぱり、『あれ』ッスか?」

 「何だよ、『あれ』って?」

 「理想の女に育てて、大きくなったら嫁にするって言う」

コバルトゥスはラビゾーが結婚している事を知らなかった。
独身男性が幼い女の子を育てる事を、下心抜きには考えられない。

 「哀れな奴だな」

ラビゾーに哀れまれ、コバルトゥスは動揺する。

 「えっ、何で」

 「お前は女が絡むと、それ抜きでは考えられないのか?
  相手は幼い子供なのに」

 「悪い事だとは思わないッスよ?
  別に先輩を非難したい訳じゃないッス。
  実際、悪くないっしょ?」

ラビゾーは静かに首を横に振って、口を閉ざした。
この話題は良くなかった様だ。
0042創る名無しに見る名無し垢版2018/02/17(土) 18:26:30.02ID:KiIzklU1
読む順番は>>39>>41>>40となって、その続きです。


ラビゾーは真剣に考え込む。

 「罠と言っても、彼女、そんな深刻な風じゃなかったんだが……。
  怪我をしても軽い物で……」

コバルトゥスが大袈裟なのか、カシエが楽観的過ぎるのか分からないのだ。
嘘では無いと、コバルトゥスは強弁する。

 「駆け出しの手には余ると思いますよ。
  今までは運良く行ってたかも知れませんけど、大事になってからじゃ遅いッス」

ラビゾーはコバルトゥスを見詰めて言った。

 「……詰まり、これ以上の探索は諦めろと?」

 「そこまでは言いませんけど。
  俺と一緒なら安全かと」

 「カシエさんが何と言うかだな」

問題は、それだ。
幾ら危険を訴えても、カシエが聞き入れるかは分からない。
コバルトゥスはラビゾーに依願する。

 「先輩からも、何とか言って下さいよ」

 「競争の件は、どうするんだ?」

 「ンな事、言ってる場合じゃないっしょ!」

 「あ、あぁ」

コバルトゥスが強い口調で押し切ると、ラビゾーは消極的に頷いた。
2対1ならカシエも聞き入れざるを得まいと、コバルトゥスは説得に自信を持つ。
0043創る名無しに見る名無し垢版2018/02/17(土) 18:29:34.59ID:KiIzklU1
それから数点経ったが、カシエは未だ帰らない。
コバルトゥスはラビゾーに言う。

 「カシエ、帰り遅いッスね……」

ラビゾーは時計を確認した。

 「いや、未だ2針も経ってないが?」

 「洞窟の中では、時間の進みが早く感じるんスよ。
  カシエにとっては、もう2角は経ってる気分だと思います」

心配性なコバルトゥスに、ラビゾーは客観的な情報を示す。

 「カシエさんは、そんな風には言ってなかったけどな……。
  それに今まで彼女は3針前後で戻って来た。
  4針が近付いても戻らなかったら、考えよう」

コバルトゥスは自分でも心配し過ぎなのか、正しい予感なのか判らなくなって来る。
ラビゾーの言い分は随分と悠長に聞こえるが、焦りから強引に突入して二次遭難する事も避けたい。
否、二次なら未だしも、自分だけ遭難する可能性もある。

 「心配な気持ちは分かるけど、今は待とう」

コバルトゥスの内心の焦りを見透かした様に、ラビゾーは落ち着いた声で言う。

 「茶でも飲まないか?」

そう言って、彼は大型の魔法瓶から紙コップに熱い麦茶を注ぎ、コバルトゥスに差し出した。
コバルトゥスは疑いの眼差しを向けて、受け取りを躊躇う。

 「金を取るんじゃ……?」
0044創る名無しに見る名無し垢版2018/02/17(土) 18:32:42.71ID:KiIzklU1
ラビゾーは憮然として告げた。

 「取る訳無いだろうが!
  要らないなら良いぞ」

 「あぁっ、頂ます、下さい、貰います!」

コバルトゥスは現金な態度で、茶の入った紙コップを受け取る。
熱い茶を一気に飲み干した彼は、大きな息を吐き、再び難しい顔をする。
ラビゾーは慰めを言う。

 「地下深く進むに連れて、地上に戻るのも時間が掛かる」

 「解ってます、その位」

コバルトゥスは迷いから心の制御が難しくなっていた。
どうしても、口調が苛立った物になってしまう。

 「……どうしても心配なら、今から行くか?」

ラビゾーの問い掛けに、コバルトゥスは沈黙して長考を始めた。
話は至って単純だ。
カシエを助けに行くか、行かないか、この2択しか無い。
ここで愚図愚図言っている位なら、早く助けに行った方が良いと言う事も理解している。
問題は、ここが普通の洞窟では無い所だ。
天然の洞窟であれば、どんなに深く、複雑な構造をしていようとも、攻略に苦労しない。
しかし、この洞窟は魔法的な仕掛けが全体に施してある。
鋭敏なコバルトゥスの魔法資質を以ってしても、その全容は疎か、1階層の構造も把握出来ない位。
0045創る名無しに見る名無し垢版2018/02/17(土) 18:45:44.97ID:KiIzklU1
カシエを助けに行くか、行かないか選択して下さい。
言い方を変えれば、お節介を焼きに行くか、カシエの実力を信用するかです。
0047創る名無しに見る名無し垢版2018/02/18(日) 17:33:40.45ID:E2sMUqa+
助けに行くか、行かざるべきか……。
コバルトゥスは葛藤の末に、時間を区切る事にした。

 (先輩の言う通り、3針までは待とう。
  カシエも冒険者なんだ。
  そう下手はしない……と思う。
  だが、3針を過ぎても戻らなかったら。
  その時は、迷わず助けに行く)

そう決心するも、心は相変わらず落ち着かない。
彼はラビゾーに時間を訊ねる。

 「先輩、カシエが入ってから何針経ちました?」

 「今、聞いたばかりじゃないか……。
  2針を少し過ぎた位だな」

ラビゾーは呆れ気味に答える。
コバルトゥスは決意表明した。

 「3針過ぎたら、教えて下さい。
  俺はカシエを助けに行きます」

 「少し早いと思うがなぁ……。
  手遅れになるよりは増しだけど……」

暈(ぼ)やきながら頷くラビゾー。
重苦しい雰囲気の中、2人は無言で時が過ぎるのを待った。
0048創る名無しに見る名無し垢版2018/02/18(日) 17:35:29.49ID:E2sMUqa+
3針が経つ前に、コバルトゥスは出来るだけ体力の回復を試みる。
精霊の気配を全身で感じ、その力が体の隅々まで行き渡るイメージを繰り返し思い浮かべる。

 (火よ、水よ、風よ、土よ、空よ、太陽よ……)

息を吸う度に、冷たい空気が肺から全身に回る。
心臓が脈打つ度に、熱い血が体中を巡る。
両足は植物の様に、大地から精気を吸い上げる。
陽光の温かさを、肌で受け止める。
そのイメージを保ちながら、コバルトゥスは精霊石を手にした。
そして手中の精霊石を体の一部の様に感じ、脈動を伝える。
回復に努めるコバルトゥスの横で、ラビゾーはバックパックを整理を始める。

 「コバギ、カシエさんの救助に僕も付いて行った方が良いだろうか?
  それとも素人は足手纏いになるかな?」

急な問い掛けに、コバルトゥスは思案した。

 「ムム、どうッスかねェ……。
  先輩は無理しない方が良いんじゃないッスか」

 「……解った、大人しく待つよ」

ラビゾーは残念そうに言って、バッグを漁る手を止める。
0049創る名無しに見る名無し垢版2018/02/18(日) 17:37:29.96ID:E2sMUqa+
数極後に、ラビゾーは再びコバルトゥスに話し掛けて来た。

 「もし、お前も戻って来なかったら?」

その可能性も無い訳では無い。
コバルトゥスは答に迷う。

 「その時は……。
  先輩に助けて貰うしか無いッスかね……」

 「2人の手に負えない状況を、僕が何とかしなくちゃ行けなくなる訳だが……。
  町に戻って救助を呼ぼうか?
  最悪、魔導師会を頼る事になると思うが」

 「命には代えられないっしょ」

コバルトゥスの冷静な正論に、ラビゾーは頷いた。

 「そうだな。
  コバギ、お前がカシエさんを助けに行って、1角経っても戻らなかったら、その時は」

 「はい、お願いします」

口では頼んだ物の、そうならない様にしなければとコバルトゥスは用心した。
精霊魔法使いである彼は、魔導師会絡みの面倒は避けたい。
しかし、自分だけなら未だしも、カシエの命が懸かっているので、嫌々言ってる場合では無い。
0053創る名無しに見る名無し垢版2018/02/18(日) 18:11:14.20ID:E2sMUqa+
そうこう言っている間に、カシエが洞窟から出て来た。
先に彼女に気付いたコバルトゥスは、安堵して呼び掛ける。

 「カシエ、無事だったか!」

カシエは疲れた笑みを浮かべて言った。

 「無事は無事だけど」

曖昧な答を返す彼女を見て、コバルトゥスは俄かに怪訝な顔になる。

 「危ない目に遭わなかった?」

見た所、カシエは傷一つ負っていないが、それだけで危険が無かったと判断する事は出来ない。
嫌に心配して来るコバルトゥスに、カシエは苦笑した。

 「全然。
  それより仕掛けに梃子摺って」

 「仕掛け?」

 「簡単には先に進めない様にしてあって、面倒臭かった。
  それに『化け物<モンスター>』も居たし」

カシエの情報に、コバルトゥスは目を剥いて驚く。

 「モ、モンスター!?」

 「化け物って言って良いかは分からないけど。
  弱かったし。
  それより、ワーロックさん!」

詳細を尋ねようとするコバルトゥスを余所に、カシエは話を打ち切って、ラビゾーの元へ駆け寄った。
0054創る名無しに見る名無し垢版2018/02/19(月) 19:07:58.00ID:LqmsZcKQ
カシエは嬉しそうに自分のバックパックから、先の探索で発見した物を取り出し、ラビゾーに見せた。

 「鑑定、お願いします」

石の器が1つと、金属塊が2つ。
ラビゾーは先ず、石の器を見る。
少し深い皿の様な形で、取っ手は付いていない。
手作りなのか、外側は凸凹の多い稚拙な造りで、粗々(ざらざら)している。
対して内側は磨いてあり滑らかだ。
重さは石製品相応。

 「これは……分からないな。
  ボルガ地方の有名な古陶磁とは違う。
  古い時代の物だろうけれど、一般的な食器だと思う。
  もしかしたら、物凄い値打ち物かも知れないが、僕には判らない。
  買い取るとしても、300MGって所だなぁ……」

ラビゾーは次の鑑定に移る。
対象は銀色の球形の金属。
彼は魔法も使って、正確に調べる。

 「この金属は……銀にしては軽いし、綺麗過ぎるな。
  霊銀の合金?
  磁性無し。
  何かの部品って訳でも無いし、飾りかな?
  中身は確り詰まってると。
  用途が解らない。
  ……500MGで」

最後の鑑定品は、先の物より小さな銀色の金属。

 「あぁ、これは銀合金だな。
  これも宝飾品だろうか……?
  純銀じゃないし、天然の銀でもないけど、これなら結構高値で売れると思う。
  8000MG位かな」

ラビゾーに財宝を鑑定して貰ったカシエは、満足気に頷いた。

 「全部で8800MGですね」
0055創る名無しに見る名無し垢版2018/02/19(月) 19:11:24.91ID:LqmsZcKQ
ラビゾーと楽しそうに話すカシエの姿が、コバルトゥスの心に暗い感情を鬱積させて行く。
手振らで戻ったコバルトゥスと違い、カシエは確り財宝を発見していた。
それに彼が感じていた危険も、どこ吹く風と言った様子。
調子の良い駆け出しに嫉妬するのは、狭量に過ぎると判っている彼だが……。
恨めし気に見詰めるコバルトゥスの視線に気付いたラビゾーは、カシエに小声で言った。

 「コバギの奴、大分心配してたんだ。
  カシエさんは大丈夫かって。
  僕は未だ早いって言うのに、助けに行こう、助けに行こうって」

カシエは振り返り、嫌らしい笑みを浮かべる。

 「へぇー、そうなんですかぁ」

コバルトゥスは羞恥で顔中が熱くなるのを感じた。

 「……『女性には優しく』が、俺のモットーだからな」

狼狽を悟られまいと、彼は焦りを隠して堂々と振舞う。
カシエ自身は何とも思っていないのに、他人が針小棒大に騒ぎ立てるのは、見っ度も無い。
コバルトゥスは居た堪れなくなり、洞窟に入った。
0056創る名無しに見る名無し垢版2018/02/19(月) 19:11:57.71ID:LqmsZcKQ
探索を再開する場所を決めて下さい。
地下1階の選択していない分岐路の先か、地下2階の選択していない分岐路の先か、
地下2階の進み掛けの道の先か、3つです。
0059創る名無しに見る名無し垢版2018/02/20(火) 18:12:07.00ID:hN1Jwh7F
洞窟に入ったコバルトゥスは、胸に靄を抱えていた。

 (先輩は何で、俺が心配してたってカシエに言ったんだろう……。
  あんな口の軽い人だとは思わなかった)

ラビゾーに悪気は無かったのだろうと解っていても、カシエの優越の笑みを思い浮かべると、
コバルトゥスは苛々して来る。

 (はぁ、余計な事を考えるんじゃない。
  今は探索に集中しないと……)

頭の中では冷静にならなければと思う彼だが、気が急いて集中し切れないのが現実だ。

 (道形に進んで、最初の分かれ道を真っ直ぐ、次の分かれ道を右に。
  罠の位置も憶えてる。
  大丈夫、大丈夫)

コバルトゥスは記憶通りに罠を回避して、何事も無く地下2階へと進む。

 (とにかくカシエより先に行かないと。
  女に優しい事と、甘い事は違う。
  宝を先取りされる訳には行かない。
  俺は冒険者だ)

だが、客観的に評価して、彼の精神状態は余り良くない。
雑念を振り払い切れていない。
それが魔法の明かりにも表れている。
コバルトゥスの行く先を照らす灯火は、不安定に強まったり弱まったり。
地下2階の罠があった場所まで来たコバルトゥスは、一旦足を止めた。

 (この曲がり角の床に罠がある事は判ってる。
  同じ罠に引っ掛かる様な馬鹿じゃない)

彼は前に罠が作動した時、その位置を確り記憶していた。
難無く罠を避けて、未だ見ぬ道を進む。

【行動表参照】
0060創る名無しに見る名無し垢版2018/02/20(火) 18:28:59.38ID:hN1Jwh7F
【失敗】

罠があった曲がり角を通り過ぎると、再び同じ様な曲がり角に出会す。
道は右側に続いている。
これまでに通って来た道は全て、壁も床も天井も殆ど同じ扁平な土と岩で出来ている。
特に目印となる様な物も無い。
こんな陰気な景色が延々と続くと思うと、気が滅入って来る。

 「はぁ……」

思わず、溜め息を吐いたコバルトゥスは、足元に小さな穴が開いてる事に気付いた。
先の魔力を奪う罠を抜けて、彼は少し気を抜いてしまっていた。
又しても罠を見落としていたのだ。
コバルトゥスは身の危険を感じ、精霊石を手にした。

【機敏さ判定】
0061創る名無しに見る名無し垢版2018/02/20(火) 19:21:52.16ID:hN1Jwh7F
【成功】

床の穴からは多数の槍が一斉に飛び出す。
コバルトゥスは精霊の力を借りて、高く跳躍した。
そんなに天井が高くないので、頭を打ちそうになり、慌てて首を引っ込め、両腕で衝撃を和らげる。
幸い、槍の長さは然程では無く、穴から1歩程で止まる。
コバルトゥスは槍が飛び出す罠から、少し離れた場所に着地して、安堵の息を吐いた。

 「あっ、危ねぇ……。
  『串刺し<シュタッヘル>』になる所だった……」

今まで「勘」を頼りに冒険して来たコバルトゥスは、未経験の危機を味わっている。
魔法に頼り過ぎて来た、「付け」なのだろうか?
本当に、こんな所をカシエは無事に通り抜けたのか……。
彼女の余裕振りを考えると、同じ道を通ったとは思えなかった。
振り返れば、槍は既に引っ込んでおり、何事も無かったかの様。
コバルトゥスは恐怖心に身震いするが、幾ら何でも引き返すには早過ぎる。
先に進もうとコバルトゥスは決心した。


耐久力:10
魔力:15
0062創る名無しに見る名無し垢版2018/02/21(水) 18:16:08.89ID:FszgQM4/
『槍<スパイク>』の罠を抜けると、真っ直ぐの道が続く。
1回目の探索に続き、罠の歓迎を受けたコバルトゥスの足取りは、重くなっていた。

 (遅弛してたら、カシエを追い越せない。
  それは解ってるんだが……)

慎重になり過ぎるのは良くないが、焦って又罠に掛かるのも良くない。
何より、思う様に進めない事で、苛々している事が良くない。
今のコバルトゥスには天の巡りまでも含めて、全てが自分の敵に回っている心持ちだった。
カシエは当然の事ながら、精霊を妨げる洞窟も、吝嗇なラビゾーも。
焦燥と苛立ちばかりが募って行く。

 (これは良くない。
  良くないぜ……)

悪い予感はしているのだが、今は前に進む事しか出来ない。


耐久力:9
魔力:15
0063創る名無しに見る名無し垢版2018/02/21(水) 18:17:54.25ID:FszgQM4/
通路を真っ直ぐ進んだ先には、更に地下へと続く階段があった。
これが「真の財宝」に辿り着く「正しい道」なのかは判らない。
しかし、この階層を抜ける事で、彼は気持ちを切り替えられそうだった。
コバルトゥスは実際に歩いた距離よりも長く、地下2階に滞在していた気分だった。
一度大きく深呼吸をしたコバルトゥスは、慎重に階段を下りる。


耐久力:8
魔力:15
0064創る名無しに見る名無し垢版2018/02/21(水) 18:18:50.10ID:FszgQM4/
コバルトゥスは地下3階に出た。
ここも今までと雰囲気は殆ど変わらない。
扁平な土と岩の壁面に、湿った土と苔の匂い。
通路は目の前に真っ直ぐ続いている。
罠の類は無さそうだ。


耐久力:7
魔力:15
0065創る名無しに見る名無し垢版2018/02/21(水) 18:20:16.80ID:FszgQM4/
少し進むと、分岐に差し掛かる。
片方は真っ直ぐ。
もう片方は右に曲がる。
どちらの道を進むべきか、コバルトゥスは一旦足を止めた。
他に道は無いし、罠らしい物も見当たらない。
真っ直ぐ進む道からは、何の気配も読み取れないが、右の方には何か「居る」。
明確な強い気配では無いが、確かに存在を感じるのだ。


耐久力:6
魔力:15
0067創る名無しに見る名無し垢版2018/02/22(木) 19:06:11.96ID:6wQ3tsyn
書き込みが無かったので、ランダム判定します。
時間の小数点以下が奇数なら直進、偶数なら右折。
0068創る名無しに見る名無し垢版2018/02/22(木) 19:11:10.26ID:6wQ3tsyn
コバルトゥスは右の道の先にある物を、確かめようと決めた。
恐怖を感じない訳では無いが、然して勇気を要する事でも無い。
これは冒険、危険を避けては進めない。
仮に凶悪な獣が棲み付いていたとしても、彼には必殺の魔法剣がある。
しかし、油断は禁物。
コバルトゥスは気配を殺して、静かに「何物か」に接近する。
先ずは正体を明らかにしなければ、対応も何も無い。

【行動表参照】
0069創る名無しに見る名無し垢版2018/02/22(木) 19:35:30.91ID:6wQ3tsyn
【通常判定】

コバルトゥスは風の精霊を頼り、何物かの大凡の姿形だけでも判らないか、試してみた。

 (……体温が無い?
  大きな塊?
  動物の形とは思えない。
  それに息遣いも無い。
  これは……蹲って眠ってる蛙か蛇か?)

だが、正体は判然としない。
少なくとも恒温動物で無い事は明確だ。
コバルトゥスは魔法の明かりを前方に向け、今度は目視で正体を探ろうとする。
高さ1歩前後、幅1身弱の蠢く塊がある。
体表は明かりを反射して、照ら照らと輝く。

 (何だ?
  蛙でも蛇でも無い?)

謎の蠢く塊は明かりで照らされても、コバルトゥスに気付く様子が無い。
コバルトゥスは焦(じ)り焦(じ)りと、蠢く塊に近寄った。

 (……判らん。
  何だ、こりゃ?
  蛞蝓か?)

対象まで約2身に近付いても、正体が「判らない」。
半透明で輝く体を持つ、これは巨大なアメーバ状の生物。

【機敏さ判定】
0070創る名無しに見る名無し垢版2018/02/22(木) 19:45:34.32ID:6wQ3tsyn
【敵の先攻】

コバルトゥスは今まで、この様な生き物を見た事が無かった。
猛獣や妖獣の類とは、明らかに違う。
敵と認識して良いのかも判らない。
反応が無いので、コバルトゥスが更に接近すると、アメーバ状の生物は行き成り体を変形させ、
液体を飛ばして来た。

 「わ、糞(ば)っちい!」

慌ててコバルトゥスは後退る。

【戦闘能力判定】
0071創る名無しに見る名無し垢版2018/02/22(木) 19:52:59.95ID:6wQ3tsyn
【回避成功】

水の様な液体はコバルトゥスの体には届かず、土と岩の床を濡らした。
何だか分からないが、これを敵対的行動と受け取ったコバルトゥスは、反撃を試みる。
彼は短剣を持っているが、真面に斬り付けて効果があるかは怪しい。
滑々(ぬめぬめ)した体に触れるのも嫌なので、魔法剣で一刀両断する事にした。

【戦闘能力判定】
0072創る名無しに見る名無し垢版2018/02/22(木) 19:56:07.03ID:6wQ3tsyn
【失敗】

魔法剣はアメーバ状の生物の体を真っ二つにする。
しかし、活動が止まる様子は無い。
体が2つに分かれても、直ぐに再生する。
アメーバ状の生物は、再び液体をコバルトゥスに向かって吐き出した。

【戦闘能力判定】
0073創る名無しに見る名無し垢版2018/02/22(木) 20:03:34.46ID:6wQ3tsyn
【回避失敗】

より狙いが正確になった一撃を、コバルトゥスは受けてしまう。
彼は水鉄砲の様な攻撃を腕で防ぐ。

 「くっ……」

液体は袖を浸透して、肌を濡らす。
最初は何とも無かったのだが、徐々に腕が辣(ひり)付き始める。

 (動物の体を溶かす液体か!?)

これ以上やられる訳には行かないと、コバルトゥスは即座に反撃する。

【戦闘能力判定】
0074創る名無しに見る名無し垢版2018/02/22(木) 20:22:49.21ID:6wQ3tsyn
【成功】

闇雲に攻撃しても効果が無い事を理解していた彼は、弱点を狙う事にした。
半透明の体の中で1つだけ揺れ動く宝石の様な物が、心臓部では無いかと予想する。

 (これで止まれっ!)

短剣を振り抜くと、核の一部が欠けた。
それと同時に、アメーバ状の生物は動きを止める。
半透明の体は粘性を失い、水の様に溶けて流れる。
「異物」の気配は完全に消滅した。

 「勝った……」

コバルトゥスは小さく息を吐くと、腕の治療を始めた。
長袖を捲ると、皮膚は赤く爛れており、空気に触れて酷く痛む。
彼は精霊石を持って、呪文を唱える。

 「我が身を成す物、あるべき姿を取り戻せ」

見る見る皮膚が再生し、何事も無かったかの様に元に戻った。

【戦利品判定】
0075創る名無しに見る名無し垢版2018/02/23(金) 18:28:54.97ID:fn/tBuff
負傷を治したコバルトゥスは、床一面に広がる液体を真面真面(まじまじ)と見詰める。
カシエが言っていた化け物とは、これの事だろうかと彼は思った。

 (でも、カシエは『弱かった』って言ってたよなぁ……)

もしかしたら、カシエはコバルトゥスの想像以上に、腕の立つ冒険者になったのかも知れない。
思い返しても、彼女が傷を負った様子は無かった。

 (カシエが凄いのか?
  それとも俺が……、俺が大した事無いんだろうか?)

現在、冒険者を名乗る者は殆ど居ない。
これまで同業者と鉢合わせた事は、数える程も無い。
謙虚にならなければ行けないのかと、コバルトゥスは自信を失い掛けていた。
重苦しい気持ちで足を進めようとした所、視界に輝く物が映る。

 (あの変な生き物の核だな……)

拾い上げて見ると、薄緑掛かった半透明の小さな石塊(いしくれ)だった。
大きさは指の先程度。

 (水晶の原石か?)

美しいと言えば美しいが、如何程の価値があるかは判らない。
後でラビゾーに鑑定して貰おうと、コバルトゥスは石塊をコートの内に収めた。


耐久力:2.5
魔力:14
0076創る名無しに見る名無し垢版2018/02/23(金) 18:32:10.25ID:fn/tBuff
如何程の価値があるかは不明だが、一応お宝らしい物を入手出来たコバルトゥスは、少し安心した。
カシエの事もあり、2回連続で手振らで戻るのは辛過ぎる。
アメーバ状の生物が居た先に進むと突き当たりが見え、更に近付くと、その左右に道があると判る。
そして、突き当たりの壁面には、明らかに不自然な、扉型の凹みがある。
だが、押しても叩いても反応は無い。
精霊の気配を探ると、扉の向こうには地下へ続く空間がある。
壊して進もうとコバルトゥスは考えるが、扉は分厚い。
下手をすると、地下への空間が埋まってしまいそうだ。
ここでは彼の精霊魔法は、緻密な働きが出来ない為に、そうなる可能性は決して低くない。

 (どこかに、これを動かす『機巧<カラクリ>』があるのか?
  ……カシエは仕掛けに苦労した様な事を言ってたな)

恐らくは、この階層に扉を開ける仕掛けがある。
それは右の道か、左の道か、それとも前に通らなかった道の先か?


耐久力:1.5
魔力:14
0079創る名無しに見る名無し垢版2018/02/24(土) 16:11:17.44ID:Qn06J8lN
コバルトゥスは一つ前の分岐に戻って、通らなかった方の道を進んでみる事にした。
アメーバ状の生物を倒して水浸しになった場所を通過して、左右に道が分かれる丁字路に出る。

 (俺は左側の道から、右折して来た。
  こっちには上に続く階段があるだけだから、進むのは右……)

この先に何が待ち受けているのか?
罠だけでなく、「敵」の存在にも気を付けなければならない。
今の所は、何の気配もしないが……。

【行動表参照】
0080創る名無しに見る名無し垢版2018/02/24(土) 16:19:45.59ID:Qn06J8lN
【通常判定】

丁字路を右折した先は、行き止まりだった。
右にも左にも道は続いていない。

 (外れか?
  いや、何かある……)

よく観察すると、右側の壁に1手四方の四角い石板が取り付けられている。
高さはコバルトゥスの腰の辺り。

 (これが扉を開く仕掛け?
  それとも罠?)

触って良い物かと、コバルトゥスは悩んだ。
取り敢えず、周囲を調べてみるが、罠らしい物は無い。
触った所で、罠が発動する可能性は低いが……。

【洞察力判定】
0081創る名無しに見る名無し垢版2018/02/24(土) 16:28:33.19ID:Qn06J8lN
【成功】

コバルトゥスは思い切って、石板を押してみた。
しかし、何も反応は無い。

 (これだと思うんだが……)

二度、三度と押してみても、少しも反応は無かった。

 (何だ、これ?
  釦と見せ掛けた飾りか?
  そんな訳は……)

手の平で押すだけでは弱いのかと、拳で力任せに叩いてみても、やはり反応は無い。

 (押しても駄目なら――)

もしかして押し釦では無いのかと、コバルトゥスは気付いた。
石板は壁から少し出っ張っている。
隙間に指の先を掛ければ、引き出せそうだ。

【力判定】
0082創る名無しに見る名無し垢版2018/02/24(土) 16:38:22.96ID:Qn06J8lN
【成功】

コバルトゥスは両脚に力を入れて踏ん張り、石板を引いてみた。

 「フンッ!!」

少しずつだが、石板は手前に引き出される。

 「グオォォ……!」

数節動いた所で、石板は何かに引っ掛かった様に動かなくなった。
それと同時に、遠方で地響きの様な音がする。
コバルトゥスは力を抜いて、大きく息を吐いた。

 (これで扉が開いた筈。
  女の腕力じゃ、これを動かすのは難しかったんだろうなぁ)

カシエが仕掛けに苦労した理由を、彼は察した。
ここには他に見るべき物は無さそうだ。
本当に扉が開いたのか、コバルトゥスは確認しに向かう。


耐久力;0.5
魔力;14
0083創る名無しに見る名無し垢版2018/02/24(土) 16:56:20.16ID:Qn06J8lN
先の分岐路に戻り、左折して真っ直ぐの通路を抜けると、突き当たりに穴が開いている。
穴の中には、更に地下に続く階段が見える。

 (一応、下の様子を見てから、外に戻ろう)

コバルトゥスは階段を下り、地下4階に進んだ。
階段を一段下りる毎に、僅かではあるが、圧迫される感覚がある。
今の所は直接的な影響は無いが、気になる現象だとコバルトゥスは思った。
階段が終わると、その先には3つに分かれた道がある。
右と左と正面。

 (この先は気になるが、今回は切り上げるとしよう)

疲労を感じたコバルトゥスは、ここで探索を止めて戻る事にした。

 (今の所、余計な寄り道はしていない……と思う。
  そう遠くない内に、カシエに追い付けるんじゃないか?)

勝手な想像ではあるが、何と無く、そんな気がした。


耐久力:0
魔力:14

【耐久力が尽きたので帰還】
0084創る名無しに見る名無し垢版2018/02/25(日) 18:10:21.57ID:U7sJ7y83
コバルトゥスが洞窟から出ると、携行食を咥えたカシエが出迎える。

 「バル、大丈夫?
  疲れた顔してるけど」

心配して来る彼女に、コバルトゥスは心外だと平静に振る舞う。

 「そうかな?
  そんな疲れてないんだが」

アメーバ状の生物に少し苦戦した事を頭の中から消し去って、彼は強がった。

 「余り無理しない様にね」

怪訝な顔で、そう告げたカシエは、コバルトゥスと擦れ違い、真っ直ぐ洞窟に向かう。。
どうしてカシエに心配されるのかと、コバルトゥスは納得が行かない気持ちだった。
逆に、洞窟に向かう彼女に忠告しようと思ったが――、

 「君こそ――」

 「何?」

 「い、いや、何でも無い……」

思うだけで止(とど)まる。
自分の為体を顧みれば、先輩振って助言する事は躊躇われたのだ。
先輩と言うからには、何かしら先んじた部分が無くてはならないと、コバルトゥスは考えていた。
尊敬出来る部分が無い者に、敬意を払う事は出来ない。
それがコバルトゥスの思想。
今の自分はカシエに偉そうな事を言える立場では無く、故に先輩風を吹かせても嫌われるだけと、
理解しているのだ。
0085創る名無しに見る名無し垢版2018/02/25(日) 18:14:36.89ID:U7sJ7y83
洞窟に入るカシエの背を見送ったコバルトゥスは、ラビゾーに近付いた。
ラビゾーは彼に声を掛ける。

 「早かったな、コバギ。
  今度は1針と少しだ。
  梃子摺っているのか?」

 「そんなに早かったんスか?
  やっぱり、この洞窟は普通じゃないッスよ」

コバルトゥスは少なくとも1角は探索していた積もりだった。
ラビゾーは彼の言葉を否定しない。

 「こんな所に財宝の洞窟があるってのも、よく考えてみれば変だよな?
  態々地図を人に渡す『案内人』が居るのも」

 「……罠なんスかね?」

コバルトゥスが真剣な表情で尋ねると、ラビゾーは両腕を組んで低く唸る。

 「人を陥れる罠……の可能性もあるけど、そうじゃない可能性もあると思う」

 「そうじゃない可能性って何スか?」

曖昧な物言いを怪しんだコバルトゥスが問うと、ラビゾーは困った顔で言う。

 「魔法使いには変わり者が多いからな……。
  この洞窟は先ず間違い無く、魔法使いが作った物だろう。
  こんな僻地に人を呼んで何が目的なのかと言うと――」

 「罠じゃないんスか?」

 「他人を暇潰しに付き合わせる事を罠と言うなら、罠なんだろうな」

ラビゾーが何を言いたいのか分からず、コバルトゥスは困惑した。

 「えっ、罠なんスか?
  罠じゃないんスか?」

 「『謎々<リドル>』は解いて貰う為にある。
  クイズでもパズルでも同じ。
  挑む者が無ければ、詰まらない。
  そう言う事だ」

利いた風な事を言うラビゾーに対して、何が言いたいのやらとコバルトゥスは呆れた眼差しを向ける。
0086創る名無しに見る名無し垢版2018/02/25(日) 18:16:21.93ID:U7sJ7y83
 「そんな事より!」

その内に、詰まらない話よりも重要な事を思い出して、コバルトゥスは高い声を上げた。

 「先輩、鑑定して貰いたい物があるんスけど!」

彼は浮き浮きしながら、洞窟内で拾った宝石らしい物をラビゾーに見せた。

 「これ、幾ら位になりますかねぇ?」

 「手に取って見ても良いか?」

ラビゾーが訊ねると、コバルトゥスは難色を示す。

 「取っちゃったりしませんよね?」

 「んな事する訳無いだろう」

基本的に、コバルトゥスは他人を信用しない。
ラビゾーとは長い付き合いで、その為人を知っているので、冗談半分ではあるのだが、
極自然に疑いの言葉が口を衝いて出て来る。
当人は、それを悪癖とは思っていないので、改善する見込みは無い。
コバルトゥスは小さな水晶の原石と思しき物を、ラビゾーに渡す。

 「はい、よく見て下さい」

ラビゾーは携帯用の小型顕微鏡で、水晶を観察した。

 「……これは水晶だな。
  でも、天然の物じゃないみたいだ。
  人工の水晶だと思う」

 「人工の!」

共通魔法には分子の構成を変化させる物がある。
魔法で作られた人工の水晶には、特徴的な魔法陣の文様が結晶構造に残るのだ。
0087創る名無しに見る名無し垢版2018/02/26(月) 19:43:22.47ID:LZB/twUF
コバルトゥスの精霊魔法でも水晶を作り出せるが、それは土中からガラス質の物を選り集めて、
透明度を下げる不純物を取り除きながら、再結晶化させる物である。
この方法では不純物を完全には取り除けないので、色味に土地の特徴が残る。
分子一つ一つの配列を調整する様な精密な物では無いが、これは天然の物に酷似する。
そもそも彼は水晶を人工と天然で区別する感覚が無いので、見分けるも何も無いのだが……。
ラビゾーは顕微鏡での観察を続けながら言う。

 「共通魔法で作られた物じゃないぞ……。
  外道魔法絡みと思われて、売ろうとしても、買い手は付かないかもな。
  水晶には違い無いけど、人工物は安く買い叩かれるのが普通だ。
  大きさも小さくて、透明度も高くないし、一部欠けてるし、お世辞にも出来が良いとは言えない」

コバルトゥスは不安になって問う。

 「……それで、幾ら位になりそうなんスか?」

 「そうだなぁ、200って所か……」

それは余りにも安いと、コバルトゥスは憤慨した。

 「そんな!
  苦労して手に入れたんスよ!」

 「労力をその儘価値に変換する事は出来ない。
  成功に繋がらない努力は無意味だって、お前何時も言ってたじゃないか」

冷淡な反応のラビゾーに対して、何とか付加価値を高められないかと、コバルトゥスは知恵を絞る。

 「実は、これ……『化け物<モンスター>』を倒して手に入れたんス。
  半透明の粘着いた水……洟水とか卵白の塊みたいな奴で。
  そいつの核だったんスよ」
0088創る名無しに見る名無し垢版2018/02/26(月) 19:48:11.26ID:LZB/twUF
それを聞いたラビゾーは顔を顰めた。

 「嫌な譬え方をするなよ……。
  ゼリー状とかアメーバ状とか、他に言い様があろうに」

 「ええと、詰まり俺が言いたいのは……何か『貴重<レア>』な物じゃないかって」

 「幾ら貴重でも『洟水の塊』て……」

 「いや、そこは重要じゃないんスよ。
  洟水ってのは飽くまで譬えで。
  それに卵白とも言ったのに、何で洟水ばっかり取り上げるんスか?
  俺が伝えたかったのは、この核が化け物を動かしてたって事実です」

必死に訴えるコバルトゥスだが、ラビゾーは疑う。

 「本当に事実なのか?」

 「多分……。
  『これ』を攻撃したら、化け物の体が溶けて水みたいになって、これだけが残ったんで」

ラビゾーは顕微鏡を覗きながら唸った。

 「フーム、フム、フム……。
  魔法生物の『核<コア>』なのかな?
  魔法的な機構が仕込まれているなら、好事家に高く売れ……ないな。
  魔導師会に没収されるのが落ちだ。
  他に魔法を研究している機関は無いし」

宝石としての価値は低く、魔法道具としても一般人には扱えないとなると、愈々売り場が無い。
コバルトゥスは数極思案して、こう提案する。

 「魔導師会に売り付けるのは、どうッスか?」
0089創る名無しに見る名無し垢版2018/02/26(月) 19:52:17.69ID:LZB/twUF
だが、これにもラビゾーは良い反応を見せなかった。

 「ある程度の値段で買い取ってくれるかも知れないが、入手元に関して聞かれるぞ。
  どうせ、そんなに高くは売れまい。
  高々数万MGと引き換えに、魔導師会に目を付けられちゃ、割に合わない。
  普通の水晶として売るしかないが、そうすると価値が無い」

 「だ、駄目ッスか?」

 「あぁ、駄目だな。
  どこに持って行っても、200MGが精々と言うか、下手をすると値が付かないかも。
  水晶の主成分の『石素<クストン>』と『気素<スピラゲン>』は、有り触れた物だしな。
  そこら辺の素人を騙して売るとか、自分で加工して綺麗に磨くとかしないと。
  ……それにしても、化け物の核だって言うから怖い。
  何かの拍子に活動を再開しないとも限らない訳だろう?」

ラビゾーの言う通り、未知の魔法が仕込まれているなら、化け物が復活する可能性もある。
その懸念を払拭する為には、再構成する他に無いのだが、そうすると益々価値が無い。
暗い顔で俯いて黙り込み、本気で落胆するコバルトゥスに、ラビゾーは同情的な声を掛ける。

 「200MGと言うのは、市場価格の話だ。
  普通に店で売ろうとすれば、その程度の価格にしかならない。
  但し、僕が個人的に買い取るなら話は別だ」

コバルトゥスは希望を持って目を輝かせる。

 「そうだなぁ……。
  500MGで買い取ろう」

そして、ラビゾーの一言で再び落胆する。

 「吝嗇(ケチ)ぃッスよ」

 「2.5倍だぞ。
  500MGあれば、僕の手元にある品の幾つかを買う事が出来る」
0091創る名無しに見る名無し垢版2018/02/26(月) 19:59:09.29ID:LZB/twUF
コバルトゥスは深い溜め息を吐いて、ラビゾーに尋ねた。

 「何が買えるんスか?」

 「携行食が300MG、傷を治す軟膏が400、後は方位磁針が300、燐寸が1箱100、
  魔力式の懐中電灯が200、短剣が400、魔力探査機が300、伸縮式ロッドが500、
  安い革の『篭手<アーム・ガード>』が片方400、作業用防護手袋が1組400……。
  買える物は、こんな所だな。
  あ、安物の時計もあるぞ。
  300MGだ」

どれを買おうか、コバルトゥスは悩んだ。
彼は先ず不要そうな物から選別する。

 「短剣は要らないッス。
  篭手や手袋も安っぽくて、何か好かないッスねぇ。
  懐中電灯も結局魔法を使うんなら、自前の魔法で事足りますし。
  これ、所謂『魔力石<エナジー・ストーン>』は付いてないんスよね?」

 「ああ、魔力石が付いてたら、もっと値段が高い。
  飽くまで共通魔法の発動を補助する物だ」

精霊魔法使いであるコバルトゥスは、余り共通魔法を好ましい物と思っていない。
共通魔法使いは精霊を殺すと理解している。

 「この魔力探査機ってのは?
  只の棒切れってか、針金に見えるんスけど」

 「名前の通りだ。
  比較的安価で魔力を通し易い銅合金で出来ている。
  これを手に持っていると、魔力に反応して動くと言われている。
  どうも使う人の魔法資質が高くないと効果が無いらしく、魔法資質の高い人は魔法を使って、
  自力で探知するから不要なんだが、一応補助器具の役割は果たすとか……。
  僕は使わないから判らないが」

さて、何を買おうか、売るだけで買わずに取っておくのか、それとも水晶を売らずに持っておくか、
コバルトゥスは考える。
0092創る名無しに見る名無し垢版2018/02/26(月) 20:02:29.01ID:LZB/twUF
コバルトゥスが買う物を決めて下さい。
中には無意味な物もあります。
何も買わなくても良いです。
0094創る名無しに見る名無し垢版2018/02/27(火) 19:43:58.36ID:SJtG1CeP
 「……時計と燐寸を下さい」

コバルトゥスは暫し迷ったが、その2つを購入する事にした。
時計があれば、洞窟の中でも時間の経過が明確に判る。
狂わされているのが、自分の感覚なのか、それとも時空その物なのかも……。
知った所で何になる訳でも無いかも知れないが、少なくとも1つの謎は解ける。

 「分かった」

ラビゾーは時計と燐寸の箱をコバルトゥスに渡した後、耐火布で作られた巾着型の小銭入れから、
100MG硬貨を差し出した。

 「どうも」

コバルトゥスは小さく頷き、時計と燐寸をコートのポケットへ、硬貨は懐の革の財布に収める。
一泊置いて、彼はラビゾーが水晶をどうするのか気になって尋ねた。

 「所で先輩、その水晶どうするんスか?」

 「知り合いの魔法使いに見て貰おうと思う。
  何か使い道があるかも知れない」

そう言ったラビゾーは、水晶を小銭入れとは別の革の小袋に入れた。
小袋の表面には蔓草に似た奇怪な文様があり、魔力を封じる呪文の文様ではないかと、
コバルトゥスは推察する。
恐らくは、効果が不明な未知の、乃至、幾らか危険性のある魔法道具を保管する為の物。
0095創る名無しに見る名無し垢版2018/02/27(火) 19:48:31.40ID:SJtG1CeP
それからコバルトゥスは両目を閉じて、呼吸を静め、体力の回復に努める。
一口に回復魔法と言っても、体力の回復と、負傷の回復は別物だ。
普段は疲れない様に、体力を回復させながら行動するのだが、洞窟の中では精霊を捉え難い。
だから、こうして洞窟の外――精霊の存在を十分に感じられる場所で、休息する必要がある。
瞑想するコバルトゥスに、ラビゾーは話し掛ける。

 「コバギ、喉が渇いたり、腹が減ったりしないか?」

コバルトゥスは目を瞑った儘で答える。

 「喉の渇きは平気ッス。
  俺、水筒持ってますし、水の精霊に呼び掛ければ、何時でも補充出来ます」

 「じゃあ、心配無いな」

 「いや、腹は減るんスけどね」

如何に魔法でも空腹だけは凌ぎ難いと、彼は白状した。
それは暗に食い物を寄越せと要求しているのだが、ラビゾーは冷たい。

 「携行食は沢山あるから、幾らでも買って良いぞ」

 「……やっぱり買わなきゃ行けないんスか?」

 「当たり前だろう」

他愛も無い会話で時が過ぎる。
0096創る名無しに見る名無し垢版2018/02/27(火) 19:53:59.71ID:SJtG1CeP
ラビゾーは時計を確認した。

 「そろそろ、カシエさんが入ってから1針だ」

未だ瞑想を続けていたコバルトゥスは、少し反応が遅れる。

 「ん、カシエが?
  あぁ、そうッスね」

彼は余りカシエを心配しなくなっていた。
一体どうした事かとラビゾーは怪しむ。

 「心配じゃないのか?」

 「いや、全然心配じゃないかって言うと、そうでも無いんスけど……。
  俺が一々気を揉んでも仕様が無いんじゃないかって。
  今は他人の事より、自分の事ッスよ。
  未だ、お宝も手に入れてないんスから」

コバルトゥスの言い分を聞いて、ラビゾーは頷いた。

 「そうだな。
  勝負の事もあるしな」

今の彼には他人の事を考えている余裕は無い。
だが、自分の事で頭が一杯と言う訳でも無い。
正しく「カシエを信頼している」のだ。
彼女を駆け出しと侮って無用な気を回す事を、コバルトゥスは止めたのである。
0098創る名無しに見る名無し垢版2018/02/28(水) 18:20:25.12ID:o/QhCdqB
1針半が経過して、カシエは地上に戻って来た。
その表情が、どこか悩まし気だったので、コバルトゥスは気になって声を掛ける。

 「お帰り、カシエ。
  どうしたんだい?
  顔色が優れないけど」

彼女は真顔でコバルトゥスに忠告する。

 「気を付けて、バル。
  5階層目からは重い空気が場を支配してる。
  特に、貴方の魔法資質だと……」

これでは丸でカシエが「先輩」だと、コバルトゥスは苦笑いした。

 「あぁ、有り難う。
  気を付けるよ」

カシエはコバルトゥスの応答に小さく頷いたのみで、彼の前を通り過ぎてラビゾーの横に移動し、
崩れ落ちる様に腰を下ろした。
そして、大きな溜め息を吐く。
探索で余程疲れたのだろうと窺える。
0099創る名無しに見る名無し垢版2018/02/28(水) 18:28:08.55ID:o/QhCdqB
カシエは気怠そうにベルト・ポーチから小さな宝石を取り出して、ラビゾーに見せる。

 「鑑定、お願いします」

 「ああ」

それを受け取ったラビゾーは、顕微鏡で宝石を観察した。

 「これは綺麗な紅水晶だ。
  フムフム、結晶の中にコバギが持って帰った水晶と似た文様が、透けて見える……。
  もしかして、これは化け物を倒して手に入れた物?」

彼の問いに、カシエは項垂れる様に頷く。

 「蝙蝠みたいなのが、落として」

 「宝石を核にして、色んな魔法生命体を造り出しているのか」

詰まる所、洞窟内の生物は魔法使いが生み出した「宝の番人」と言う訳だ。
コバルトゥスは2人の会話に興味を持って割り込む。

 「先輩、それ見せて貰えませんか?」

ラビゾーは僅かに躊躇いを見せ、余り気乗りしない様子で宝石を渡した。
コバルトゥスは眉を顰めて言う。

 「そんな心配しなくても、取ったりしませんよ」

 「どうかだなぁ……」

 「意地悪言わないで下さい。
  前の事は謝りますから」

互いに冗談めかして笑い合う彼等の姿を、カシエは羨まし気に見ていた。
0100創る名無しに見る名無し垢版2018/02/28(水) 18:37:37.94ID:o/QhCdqB
コバルトゥスは紅水晶を天に翳し、透かして見る。

 「……何が呪文なのか皆式判らないッスねぇ」

 「知識が無いと判別は難しいからな」

暫しコバルトゥスは紅水晶を観察していたが、やがて飽きてラビゾーに返す。
ラビゾーはカシエの方を向いて、彼女に言った。

 「大体3000MGって所かな。
  どうします、カシエさん?」

 「ええ、売ります。
  その分で補充をお願いします」

 「分かりました」

自分の水晶は買い叩いたのに、カシエの水晶は高く買うのかと、コバルトゥスは不満を持った。
水晶の質が違うのは事実なので、それを口に出したりはしないが……。

 (先輩を驚かせる程の物を見付けてやる。
  それが『冒険者』としての実力の証明にもなる)

独り心内で決意して、コバルトゥスは洞窟に向かった。
その背に向かって、ラビゾーが声を掛ける。

 「コバギ、もう大丈夫なのか?」

 「ええ、余り消耗しなかったんで。
  今度は、もっと良い物を持って帰りますよ」

そう宣言して、コバルトゥスは洞窟に入った。
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

ニューススポーツなんでも実況