「やれやれ、仕方が無いな」
それと同時に、場を支配していた「尋常ならざる気配」が消失する。
マトラは改めてササンカに話し掛けた。
「これで、どうかな?」
ササンカは緊張から解放されたが、未だ気を緩める事は出来ない。
警戒した儘で、マトラに質問を打付ける。
「あ、貴女は何者なのだ……?」
マトラは堂々と答えた。
「遙か昔、人間が『旧暦』と呼ぶ時代に、『悪魔』と呼ばれた存在」
「悪魔……」
唖然としているササンカをマトラは笑った。
「あらゆる魔法は悪魔によって齎された。
『隠密魔法の始まり』は、どの様に伝えられている?」
「……答える必要は無い」
ササンカが話を打ち切ると、マトラも頷く。
「あぁ、悪かった。
余談であったな。
さて、何の話をしていた所だったか……」
彼女はジャヴァニに視線を送った。